2009年 08月 08日
目を背けるしかできない結末。『縞模様のパジャマの少年』8月8日公開。ナチス政権下のドイツ。ブルーノは、軍人の父の転勤により住み慣れた家を離れる。新しい家の裏口の先には、謎の煙があがり有刺鉄線で囲われた"農場"があった。そこに座り込んでいたのは昼間からストライプのパジャマを着ている少年シュムエル。ブルーノは、彼と友達になろうと話しかけ、ぎこちなくも2人には交流が生まれる。 縞模様のパジャマの少年 ベストセラー小説の映画化作品。2月の台湾旅行時に航空機内で鑑賞。ビジュアルを見るからに百歩譲ってもハッピーエンドはないだろうなぁと、フタを開けてみたら…。まさかこんな結末が待っていたとは、言葉も出ません。悲劇自体は覚悟してたけどここまで苦しすぎるオチだったとは。ラスト間近の明らかに不穏な空気を止めることもできないまま目を背けるしかできなかったよ。これが歴史の重さか。実話ってことではないんだろうけど、こういう悲劇はホロコーストにおいては数限りなくあったってことだよね。返す返すも悲惨すぎる出来事。としか今のオレには言えず。 ブルーノ、シュムエルともに愛くるしいルックスがまた泣ける。けど、2人の交流は思いのほかあっさりと描かれているのはかなりの難点。本作は95分の尺だけど、ここはもっと時間をかけて描いてもよかったんじゃないかな、あと15分は。変にお涙ちょうだいになるのを避けたかったのかもしれないけど、なんつっても何も知らない純粋な子供でさえ容赦なく時代に巻き込まれざるを得なかった、ってのがこの映画の核心なはず。ここの描写が弱いせいで、物語に入り込むことを妨げてるように思えるし、あまりに淡々と流れてしまったように見えたのはもったいなかった。 それに比べると、もう1本の柱であろうブルーノ一家の描写は、十分に恐ろしかったなー。軍人としての勤めを果たすためそして父の汚名から逃れるため、良心に引っかかりを覚えながらも盲目的に任務をまっとうする父親。夫を信じ寄り添っていたが、真実を知り混乱せずにいられない母親。分別もつかないまま歪んだ事実を刷り込まれ妄信してゆく姉。そしてなにもわからず、知らされず、その純粋さゆえに皮肉なんて言葉では終わらせられないほどに残酷な運命を背負わされるブルーノ。彼らはドイツ人でありながら、間違いなく被害者だった。この映画のポイントはこの視点なんだろね。 狂った歯車は最後まで戻らないまま、奇跡を望むべくもないままのエンディング。あまりに救いがなさすぎるけれど、それこそが戦争が遺したものと等しい虚無感なのかもしれない。
by april_cinema
| 2009-08-08 00:00
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