2009年 03月 31日
あまりにもショッキングな結末。。『砂と霧の家』DVD鑑賞。夫に去られ放心状態のキャシーの元に、郡の役人が現れた。なんと、わずかな税金の滞納を理由に、父の遺産である自宅を差し押さえるという。抵抗することも出来ず追い出されるキャシー。郡の手違いであったことがわかり、なんとか家を取り戻そうと弁護士を頼るが、すでに家はイランからの亡命移民であるベラーニ一家の手に渡っていた。ベラーニもまた、自分の人生を取り戻すためにこの家を必要としていた。霧の街サンフランシスコに建つ、海辺の美しい景色を持つ家をめぐる物語。 『ダイアナの選択』があまりに鮮烈だったので、監督の履歴をたどって今作を鑑賞。オープニングからいい感じの立ち上がりで、好きな匂いが漂います。がしかし、まさかまさかこんな展開を見せるなんて。終盤はショックに胸が塞がる想いがしました。考えられるもっとも最悪のケースだったように思えるわ。でも、だからこそ強く印象に残るのは、ダイアナと同じかも。プロットを良く活かしていて、ストーリーテリングの上手な監督だなー。 さてさてその中身だけど、痛烈で皮肉なメタファーをたっぷりと含んでるね。片や家族を失った霧の街の女。片や砂の国を追われてきた男。どちらにも譲れない正義があり、その拠り所として家を求める。霧も砂も形をなさず、だからこそ家という形を求め、相容れない2つが衝突した結果がこんなことだなんてね。加えて、また一人家を捨てて山小屋で暮らそうとするどうしようもないバカ警官まで巻き込んで、とんでもないことに。さらには移民に対する差別的な問題も含まれて、果たしてこれをアメリカのマジョリティは一体どんな気持ちで見たんでしょうか。 ベン・キングズレーはまるっきりイラン人になりきっていて、お固い元軍人を見事に演じてます。名優と呼ぶのに相応しい演技。対するジェニファー・コネリーも憂いたっぷり、色香もたっぷり、寄る辺のない脆さを見せてくれてとってもいいわー。一点だけ難をあげるとすれば、ベラーニ大佐がクライマックスで神に祈るシーン、あそこはやっぱ母国語じゃないとおかしいよね。神に話しかけているのに英語ってことはやっぱないよね。まあ、映画の本質には関係ないんだけれど。 この悲劇は一体どこから生まれたのか。この物語が示す教訓てなんなのか。正直なところ衝撃が大き過ぎてまだ掴めてません。自分なりの答えが出せるまでもう少し考えてみたいと思います。いやはや強烈な作品でした。
by april_cinema
| 2009-03-31 00:00
| All-Star
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