2009年 10月 31日
考える映画だ。『わたし出すわ』10月31日公開。東京から函館へと帰郷してきた摩耶は、5人の高校時代の同級生たちと再会する。昔話に花を咲かせながら彼らの今望んでいるものを聞くと、それを実行するための資金を出すと提案する摩耶。しかも100万単位で。彼女はそんな大金をどうやって手に入れたのか。そしてなぜそれを友人たちに与えるのか。 映画「わたし出すわ」 タイトルのインパクトからコメディを想像するかもしれないけど(オレはしたよ)、全然違った〜。起伏はすごい少なくて、ストーリーはあるけれど淡々と進む物語。でもすっごくいろんなことを考える余地がある、面白くて噛み応えのある作品だったわ。モチーフはそのものずばりお金。お金で果たして何が動くのか。夢か。希望か。嫉妬か。時に幸せを運び、同時に不幸も呼んでくる。金の切れ目は縁の切れ目なんて言葉もあるけれど、いったいお金は人と人の何を繋いでいるのか。お金を軸にしていろんな思考がぐるぐる巡ってきます。摩耶の突拍子もない行為で運命はいくつかねじれてしまう。お金なんてなければよかったと思う結果もあれば、このお金があって本当によかったと思える結果もある。お金があってもなくてもどうにもならないことだって、たくさんある。ざっくり言えばお金はあくまでツールであってゴールじゃないってことか。じゃあ今オレたちはお金とどう向き合ってるのか。そんな価値観の距離感を測る映画かもね。 でも主題はそこだけじゃないような気がオレはするの。合間に差し込まれる、友人たちがかつて摩耶に向けてかけた言葉。口数の少ない美人の摩耶に対してかけたそれぞれの言葉は、十数年たった今も残っているという事実。意識のない母に語りかけ続ける娘。お金はお金であると便利だけれど、人間をつなぐものは決してそれだけではないということ。この感じがあることで、ただの野暮な話にならなかった気がします。 キャラクターの描き方もキャスティングも絶妙。小雪はキャリア最高のハマり役で、もの静かで地味な美人という外見の中に、不思議な余韻と内面を感じさせてくれました。クレバーだけどスマートにだけは生きられない。虚しさと泥臭さをいい感じで同居させててすっごく魅力的でした。同級生たちも実年齢はけっこう差があるのに、いい具合に同級生っぽかったしね。山中さんがちゃんとランナーの走りしてるのも嬉しいし、イロモノキャラじゃない小池栄子がすっごく良かった! 地味な展開だけに、なにも考えなければ「でなんなの?」で終わってしまうかもしれない。でもそれは想像して議論する余地が十二分に残されているってこと。娯楽性は相当低いけれど、いろんな意味で面白い映画でした。
by april_cinema
| 2009-10-31 00:00
| All-Star
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