2010年 03月 20日
重過ぎるパンチだ…。『息もできない』3月20日公開。女を殴る男をいきなり殴りだすチンピラのサンフン。借金の取り立てを生業にし、母と妹を殺した父への憎しみを抱くこの男が、女子高生ヨニと出会う。ヨニもまた家族に問題を抱えていた。何を話すわけでもなく数奇な縁に導かれたふたりに、少しずつ変化が訪れるが。 息もできない マジで息できねーっす、観てる側こそ。強烈なのをボディにくらって息絶え絶えなくらいの鬼気迫る魂の一作。バイオレンスもかなりの本気モードだけど、監督(かつ主演)が描きたかったという韓国の歴史的暗部と家族の歪みが最初から濃密に覆いかぶさってくる。しかもストーリーが進めば進むほどその濃度も質量も増してくんだから。目は離せないけど、できれば逃げ出したいくらいの重さだったわ。 自らの境遇から、あらゆるものへと怒りを向けざるを得ないサンフン。しかし甥っ子と姉には善意と愛情を見せ、決して暴力だけの男ではないことがよくわかる。ヤクザ映画みたい"根はいいワル"っていうレベルじゃないということが、数々のエピソードからわかる。父を許せないのに、一方でその憎しみと相反する行動もとってしまう無意識の矛盾。理性ではどうしようもないからこそ苦悩し、そして同じ想いを抱えるヨニとだけ共鳴するその様がよく理解できる。ふたりの一瞬の邂逅が切ないぜよ。ヨニもまた形は違えど同種の境遇であり、クライマックスへの展開はいたたまれなすぎるよ。ラストもまた簡単には救いを与えてくれないしね。 役者たちがめちゃくちゃ気合い入ってて、美形も有名俳優もいないし、粗い画像からは予算のなさも感じられる(実際に監督が家を売り払うほどの金策をして完成にこぎつけたらしい)。けどそんなのお構いなしなパッションがほとばしっていて、半端な気持ちじゃ向き合えないわ。テーマ的にも。 娯楽としては絶対に見られない脅威の韓国映画。『チェイサー』といい『母なる照明』といい、韓流が消えたと思ったら超ヘヴィー級の韓国映画しか来なくなったのはなんなんだ!?
by april_cinema
| 2010-03-20 00:00
| All-Star
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