2010年 05月 22日
タフで脆い、女たちのDNA。『パーマネント野ばら』5月22日公開。一人娘を連れ実家の美容室「パーマネント野ばら」に出戻ったなおこ。店には再婚相手に逃げられた母と、男との痴話話をするパンチパーマのおばちゃんたち。地元の友達には浮気性の夫ともめるみっちゃんと、ギャンブル漬けで行方不明になった男を待つともちゃん。みんな、淋しさとやりきれなさを抱えながら、四国の田舎町で、それでも恋をして生きていた。 『パーマネント野ばら』公式サイト|菅野美穂主演、吉田大八監督。西原理恵子の原作を映画化。 あーあーあー、きちゃいました傑作! 原作は西原先生。明け透けな言い回しをする下世話な女たちと、その中にぽつんと浮く主人公。自分たち女を貶めるかのようなキャラにしてて、その表面はなかなか共感しづらいけれど、中にある憎めなさ、人間くささには深く感情移入させてくれるよな〜。でも、ここまではほとんど『女の子ものがたり』と同じ世界観。子供時代の家族のもつれと、少女時代の思い出。今回はそれに母から娘、そしてそのまた娘へと受け継がれていく女の性みたいなものもプラスされてる。 で、ここに『いけちゃんとぼく』エッセンスまでプラスされてからが半端じゃない! ギャグを交えながら、楽しさと淋しさで包まれていた映画に猛烈な切なさと愛おしさが乗っかって来て、そこまでに描かれたすべてにまったく別の側面が与えられるという離れ業! いや、すごいよ、吉田大八監督!! 『腑抜け』も『クヒオ』も大好きだったけれど、この人の背景を語る映像センスは素晴らしいですね。撮影監督にもこれは注目すべきでしょう。 つまり、女とはいくつになっても恋をして生きるもの。なおこ以外はほぼだめんずに惚れて、それによって自分が苦労している。端から見れば、そんな男やめときなよ。そんなんなら一人でのほうが楽じゃん。とも思うかもしれない。でも、そういうことじゃないんだろう。根源的にいうと女だけではこの世界は完結しなくって、男を求めるのはもはや神の意志なのかもしれない。そこまで話を大きくする必要はないけど、人間として異性に惹かれ続けるのって、すごく自然なことだよね、って思ったわ。だから、ここに出てくる女たちの生々しくて泥臭い姿も、その奥底にある純粋さに築いたとき、すんごくいいものに思えるという。 田舎の情景と、人物の描写がとんでもなく優れていて、アップの抜きどころや小物の使い方が抜群すぎ。電車。蝉の声。夕暮れの湾。少女時代のフラッシュバック。電柱チェーンソー花火。映像で語るとはまさにこのことでしょう。意味性が強過ぎるわけでもない絶妙なさじ加減に惚れ惚れします。その中で菅野美穂はいくつも素晴らしい表情を見せてくれました。彼女の、独特の顔立ち×不思議と地に足がつかない儚さが最高に活かされた演出とキャスティングでした。というかキャスティング全般が完璧。宇崎サン、夏木さん、本田さんのベテラン陣はパーフェクトだし、小池栄子と池脇千鶴も非の打ち所のない馴染ませ方。江口洋介の格好よさも効いたな〜。 ちょっと観た後は言葉が出ないほどにグっときちゃいました。お話そのもののギミックに頼ることなく(学校の階段で振り向いた女生徒のシーンで気付くべきだったな)、きちんと映画として監督の世界観として成立した、西原原作映画の最高傑作だと賞賛したい!
by april_cinema
| 2010-05-22 00:00
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