2010年 05月 22日
パワフルでおもしろい! 『鉄男 THE BULLET MAN』5月22日公開。妻ゆり子、息子のトムと平和に暮らしていたアンソニー。しかしトムが謎の暴走車によって轢き殺され、幸福は終わりを告げる。刺客に襲われ、自らの体の微妙な変化の兆候を感じ取るアンソニー。体から、蒸気、オイル、そして鋼鉄片が表出しはじめていた。アンソニーの出生の秘密、そしてその運命は…!? 映画『鉄男 THE BULLET MAN』オフィシャルサイト 塚本晋也監督の20年前の傑作『鉄男』(未見)が新たな形で現代に降臨! 続編でもリメイクでもなく、オリジナル企画としての本作、塚本監督らしいダークでエッジィなビジュアルと、その中で繰り広げられる体感的アクション、そしてしっかりと込められたメタファーとテーマ性。70分があっという間で濃密なインパクトを残してくれるぜ。とにかく力強い。このエナジーが塚本流ですね。 ストーリーはとてもシンプル。ある極秘プロジェクトの被害者として誕生したアンソニー。設定には特別な目新しさはない。だから特に手間はかけずに、ストーリーはもったいつけずにどんどんと展開してく。アクションシーンも、画面揺らしまくり編集しまくりの、何が起きているのかよくわからない系だけど、それも特別斬新なわけではないから、引っ張りすぎることがないのがいいですねー。鉄化していくビジュアルのせいもあって、視界不明瞭っぷりは格別のものがあるぜ。 で、シンプルなだけに最終的なメッセージがとてもシャープで強い! 怒りを引き金にアイアン化していくアンソニーだけれど、そのトランスフォームの現象が果たして本当に改造手術のせいなのか。「怒り」という根源的なところに、人間の変質というロジックが潜んでいるのではないか、そんなテーゼを強烈に突きつけてきます。答えは可視化されないけれど、怒りを愛情が越えたラストで、塚本監督なりのひとつの解釈は完結したように見える。これには魅せられたな〜。うまいっす。争いというものは、テクノロジーや兵器を越えて、人間自身の感情や理性に委ねられているのではないか、そうストレートに思わせてくれるもの。 かなり男性的な描写であることは間違いなく、人を選ぶきらいはあるだろうけれども、無駄のないシャープさには惚れますね。さすが塚本監督、と言っていい作品だと思います。おもしろかったです。
by april_cinema
| 2010-05-22 00:00
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