2011年 02月 19日
死生観を試されるよう。『ヒア アフター』2月19日公開。フランス人ジャーナリストのマリーは、恋人とバカンス中に巨大津波に襲われるが、一命を取り留める。しかし生死の境を彷徨った時に浮かんだイメージが忘れられず、臨死体験にとらわれる。サンフランシスコに住むジョージは、かつて霊能者として名を馳せていた。彼は触れた人の身近な死者と対話することができたが、今はその能力を「呪い」と言い、人と触れることを避けるようになっていた。ロンドンの双子マーカスとジェイソン。仲良く暮らしていたが、ジェイソンが事故で亡くなってしまう。マーカスはいつも一緒だったジェイソンの不在から立ち直れない。それぞれに死と向かい合う3人。いつしか運命によって導かれていく。 ヒア アフター イーストウッド最新作。先生も、いよいよ死を意識し始めたのでしょうか。今作は死と向き合うことで今を生きる命について考える物語。主要人物3人はそれぞれの地でまったく違った形で死と触れ合っている。マリーは死後の世界らしきものを垣間みる。ジョージは死者に触れることができる。ジェイソンは死を恐れ前に進めなくなる。誰もが多かれ少なかれ意識する死と言うもの。「hereafter」すなわち、死後にあるものとはいったい…。 3人それぞれのエピソードがわりとボリューム割いて順々に描かれていて、3人が絡むのは本当に最終盤のみ。なので、そこから安易に結論めいたものは実はあまり提示されない。だから、個別のエピソードから何を感じるかは観客に大いに委ねられてる。すなわち、それぞれ固有の死生観の中でなにを思うかってところかな。ジョージが恐れを抱くものはなんとなくわかる気がする。存在しない死者にからめとられては、今を生きることができなくなってしまうものだろう。また、死者を送れなくなってしまうのは生者にとっていいこととは思えないし。マーカスが体験したこともまさに同じだよね。不在の者への過剰な想いはやっぱり今をダメにしちゃうおそれがある。人は後ろばかりを見て生きるわけにはいかない。マリーの体験はどうとらえたらいいんだろう。生と死は隣り合わせ。だからこそ今を生きる意味を探せってことなのか。 3人のキャラクターというかエピソードは、個々では今までにもあったモチーフな気がして、それを融合してなにが生まれるのかってところに注目したんだけど、その合わせ技のオチが出てこなかったからなんとなく消化不良なんだよな。死後の世界があるとしても、そこに触れられないオレはあまりそこに想いを馳せることもないし、死はもちろんものすごく怖いんだけど、結局のところ生きるしかないし、とかもやもやと堂々巡り。でも、3人はそれぞれと出会えたことによって、一歩を踏み出そうとする。これこそが、命ある者同士が触れ合う奇跡ってことだろうか。 近年のイーストウッド作品があまりに神がかってたから、それに比べるとややインパクトは弱め。感じるところはあるけれど、期待値に比べると物足りなさが残りました。うーん、もやもや。もっかい観ようかな…。 <2011/03/16追記> あらら、ツナミのシーンがあるということで上映中止に。仕方のないことだけれど、残念だな。 ほかに『唐山大地震』『ザ・ライト』『サンクタム』『カウントダウンZERO』も公開延期が決定したそう。 影響は多方面にわたっています。
by april_cinema
| 2011-02-19 00:00
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