2011年 03月 05日
静かに語る。『再生の朝に -ある裁判官の選択-』3月5日公開。一人娘をひき逃げ事件で亡くした裁判官のティエン。事件以来夫婦の仲はこじれ、ティエンも無気力に陥るおり、彼が担当したのはある窃盗犯の判決。クルマ2台を盗んだそれは、当時の法律では死刑に値するものであったが、まもなくの刑法改正後ではそれは死刑ではなくなる。はたしてどう判決を下すのか。そこに、死刑囚の臓器を望む男があらわれることで、さらに事態は複雑になっていく。 「再生の朝に -ある裁判官の選択-」オフィシャルサイト 非常に物静かな映画だったなー。だけどその静けさがたくみに語りかけていて、最大級に地味ではあるもののしっかりした芯は感じる。死刑判決と臓器移植、そして裁判官の再生。2つのトピックと1つのテーマが交差するけど、混乱するような複雑さはなく、コンパクトにまとめられていた。そしてこれはストーリーを語る映画ではなく、問題提起がメインになってたわ。 だってクルマ2台盗んで死刑っていくらなんでも厳しすぎるだろうよ! てのは、中国のお国柄が背景にあるそうで、犯罪が増えたときに見せしめとしての厳罰を用意した名残だそうだ。改正されたとはいえ今も死刑は多いと聞くし(実数は公表されてない)。死刑囚の臓器密売というのも社会問題になっているそうで、この映画では死刑囚が残すことになる家族のために、死刑と自らの臓器を売ることを受け入れるという展開がもたらされてる。もしも、裁判官の娘が一命を取り留めながらもある臓器が必要になり、その臓器を死刑囚が持っていたとしたら、裁判官の判決に影響がないといえるだろうか?という疑問も含まれてるように思うわ。ただ、それを糾弾するようなつくりにはしてないから、受け手がどう思うか次第だけども。死刑囚の感情を描かなかったことも、問題を複雑にしすぎない狙いだと思う。 安易に結論付けず、過剰な装飾やドラマも作らず、でも100分もの間この静かな世界に観客を立ち止まらせる手腕は見事だなぁ。あまりにも渋すぎるしテーマもなじみないけど良作だと思います。
by april_cinema
| 2011-03-05 00:00
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