2011年 08月 06日
魂のメッセージ。『一枚のハガキ』8月6日公開。戦争末期、徴収された100人の兵士は、上官のくじ引きにより次の任地が決定された。フィリピンへと向かうことになった森川は、生きて帰れないことを覚悟し、妻からのハガキを松山に託す。松山は宝塚の兵士用宿舎の清掃を任じられていた。戦争が終わり、100人のうち生き残ったのは6人。そのうちの一人となった松山は故郷に帰るも、家族はみな去っていた。ふとハガキのことを思い出し、森川の妻・友子を訪ねるが、夫を亡くした友子もまた、哀しみの中で人生を送っていた。 新藤兼人監督作品『一枚のハガキ』公式サイト|トップ 齢99という新藤兼人監督が最後の作品として撮った映画。魂の込められた1本でした。実際に徴兵され、そしてくじ引きによって運命を分たれ、100人の中の6人になったというのは監督の実体験だそう。それを聞くだけで、この映画がただの作品ではないように思ってしまう。誤解を恐れずに言えば、面白い作品とは違うと思うし、すごくよくできた作品というわけでもないと思う。だけど、明らかに監督の志やメッセージ、魂の声というのが聞こえて来るんだわ。スタッフやキャストにもその思いが浸透していて、だから、伝わるんですよ。すごく深いところまで。本質的にはこれこそが映画なのかもしれません。 究極的には反戦なんです。その目線は、いち市民のもの。お上の命により戦地に赴き、そして犠牲となる。運命が捩じ曲げられるのは亡くなった兵士だけではなく、その後方にいる妻であり、親であり、子たちなのである。暴力的に大切な人を奪われて、それはいろんな形で波及し、家族を壊していってしまう。友子、松山の2つの家族を見るだけでもそれがよくわかる。 しかし、ただ悲惨なだけでは終わらないのが良かったと思う。運命が破壊されて、それでも残された人々は立ち上がる。前を向いて行く。それしかないんだけど、それは純粋に希望と呼ぶにはあまりにも儚いんだけれど、でも残された人たちの使命はこういうことなんだと思う。つまりは、新藤監督が生涯かけて映画というものに向き合ってきたという事実こそがまさに松山と友子とダブってくるってことなんだろう。 熟練キャストたちもきっとその魂を預けて参加したんだろう本作。1本の映画という枠を越えたメッセージが、刺さります。
by april_cinema
| 2011-08-06 00:00
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