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2012年 02月 11日
感想_ポエトリー アグネスの詩
感想_ポエトリー アグネスの詩_b0130850_22135346.gif感じる心を持ちえているか。『ポエトリー アグネスの詩』2月11日公開。認知症の症状が出始めたミジャは、孫息子ジョンウクと二人暮らし。ミジャは偶然見かけた詩の教室に通うようになり、詩を書くためにさまざまなものを見つめていた。そんなとき舞い込んだのは、ジョンウクが自殺した少女に集団で性的暴行を加えていたという最悪の報せだった。
映画 | ポエトリー アグネスの詩 | オフィシャルサイト

世界のものの見方へのテーゼ、とでもいうんでしょうか。極端に言って、詩なんてものは現代社会のどこを見てももう見つからない。けれど、たとえば詩作に向き合うようなものの見方をできているのかオレたちは、ということなんだろうな。詩を作ることは、世の中の美しさを見つけることだと詩の先生は言う。それは遠くではなく自分の近くにあるものだとも言う。それを、今、この世の中でどれだけの人ができているだろうか。周りに在るものに対して、その美しさを慮る心を持ち合わせていただろうか。そんな問いかけを感じる映画だ。

しかし現実はとにかく厳しい。ミジャの暮らしは裕福ではないのに、追い打ちをかけるように事件が起きる。ミジャの体にしても思わしくはない。現実と詩作。対極にあるような事象の中でミジャは漂う。どこに向かっているのかも、どこに向かえばいいのかもわからないまま流されていく。彼女が孫息子に何を思い、仕事先の半身マヒの老人に何を思い、詩の教室で何を思い、命を絶った少女に何を思ったのか。そういった内面は一切語られない。だからこそ想像が及ぶ。それこそがこの映画の最大の醍醐味かもしれない。

そうなんだよな。世界は汚いもので溢れかえっているんだよ。犯罪もそうだし、それをもみ消そうとする大人もそうだし、病気と老いは避け難いし。でもだからってそれに染まってしまってもいかんし、逃避してもいかん。唯一刑事だけがその境地に立っているように感じたな。犯罪の最前線にいながらも、詩の朗読会にやってくる。卑猥な話もするけれど、純粋さと正義感をなくしていない。矛盾するような要素さえも抱え込んで、そして美しいなにかを見出していく。それが自分の生きる価値観となっていく。

長尺に相応しい中身の詰まった、秀作でした。オレも詩のひとつでも書けるようにならないとな。

by april_cinema | 2012-02-11 00:00 | All-Star


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