2012年 03月 24日
シェルターは何から守ってくれるの? 『テイク・シェルター』3月24日公開。妻サマンサと、耳の不自由な娘と暮らすカーティスは、悪夢に悩まされていた。彼は徐々に、悪夢の中の大災害が現実に起きるのではないかという疑念に囚われ始める。妄想を募らせるまま自宅前の地下にシェルターを作り始めるカーティス。その暴走は妻も、隣人も理解できないが、カーティスはシェルターに執着し続けて…。 映画『テイク・シェルター』 公式サイト サイコスリラーだったわ。原因不明の悪夢にうなされ、いつしか現実との境界が見えなくなっていく男の話。「ものすごい嵐がくるんだ!」って言われたって当然、周りはついていけない。周囲の人間はいぶかしみ、精神病院を紹介され、妻だけは眉をひそめながらも彼を見守る。この奥さんの存在は救いですよね、実際に。 正体のわからない不安に対峙したときに一体どう行動するのか、という根源的な問いがテーマにあったように思う。いつ何が起こるかわからない、というのは真理だと思うけれど、じゃあその不安に対して何ができるというのか。シェルターを持つというのは根本的な解決にはならないが、カーティスはその存在によって安堵を得ようとする。これはあらゆる不安と防御へのメタファー。シェルターなんてのは一時しのぎでしかない。仮にシェルターのおかげで嵐をやり過ごせたとして、じゃあそのシェルターの中で一生過ごすのか、という問いかけ。なので、一度はこもったシェルターを自分の手でもう一度開いた勇気に胸をなでおろしました。不安に打ち克つものは、扉を開く勇気なのだろう、やっぱり。 シンプルゆえにともすれば退屈しそうな話だけど、映像と音楽のかぶせ方がうまくって、現実と悪夢の境目を巧妙につないでるので緊張感が保たれる。シェルターは、本当に家族とカーティスを守ってくれるものなのか、それとも彼がただ逃げ込むための場所にすぎないのか。後者だったじゃん、と安心させると見せかけて、最後のオチでやっぱシェルターは必要じゃん!という矛盾をはらむ落とし方がやれやれな感じだけれども、病的な役がマイケル・シャノンは似合う。そして薄幸な感じがジェシカ・チャスティンは似合う。共感しづらいけど地味によく練られて、キャスティングの妙が光る1本でした。
by april_cinema
| 2012-03-24 00:00
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