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2012年 04月 07日
感想_別離
感想_別離_b0130850_12606.gif嘘では何も守れない。『別離』4月7日公開。テヘランで暮らすシミルは、11歳の娘の将来を考え、イラン出国を考えていた。夫ナデルも一度は同意していたが、アルツハイマー病の父を一人残すことができなくなり出国に反対。ふたりは別居するように。ナデルは仕方なく父の面倒を見る使用人ラジエーを雇うが、ある日帰宅すると、父はベッドから落ちたまま放置されていた。ナデルはラジエーを厳しく詰問し、追い払うが…。
映画『別離』公式サイト

今年のアカデミー賞外国語映画賞ほか、数々の映画賞を受賞した作品。いや、それも納得の出来だったな〜。とある家族の問題、イランが抱えている問題、宗教的な問題、いろいろなものが折り重なって次から次へとトラブルがわき起こり、それをサスペンスフルに見せながらも観客に考えさせる作りが見事だ! 緊張感が途切れないままにドラマが折り重なって、重層的でありながらもスピーディな印象を残す。

物語の始まりである、シミルとナデルの問題だけでも十分映画1本分のテーマになるだろう。イランを取り巻く環境を考え、娘の将来のために国を出ることを考えるということ。多分、こういう家族は少なくないんじゃないだろうか。そこにのしかかる、ナデルと親の介護問題。これももちろんテーマになりえるもの。しかも使用人ラジエーは宗教上の理由から彼の体に触れることができない、なんてエピソードも。そしてラジエーを雇うにあたっての賃金の問題。彼女は実は妊娠していて、その夫との問題。などなど、さまざまな一筋縄じゃいかない問題が積み重なっている。

しかも、登場人物の誰もに言い分があって、それがいちがいに正しい、正しくないとは言えない境界線にたっているものだから、簡単に誰かに肩入れしたり、誰かを悪者にもできないというのが、緊張感を高める。いったい誰を責めればいいのか、なにがそもそもの原因だったのか。そんなことを考えていたらあっという間に2時間経過。答えは、出せない。まあしかしみんな、これでもかってくらいまくしたてるのね。五月蝿いわ!w

ひとつ罪があるとするならば、嘘をついてしまったことか。それは誰かを守るためで、ごく小さなものだったけれど、その嘘がいろんなものを捻ってしまったという皮肉。教訓というのとは違うと思うけど、強く余韻を残す力作でした。

by april_cinema | 2012-04-07 00:00 | All-Star


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