2012年 09月 08日
魔術師、健在。『夢売るふたり』9月8日公開。小料理屋を営む貫也と里子のおしどり夫婦は、火事ですべてを失ってしまう。やる気をなくした貫也は、かつての常連と浮気をし、いきがかりで金を受け取る。それを知った里子は激怒しとんでもない計画を思いつく。それは、貫也を使って世の中の淋しい女性たちを相手に結婚詐欺を働くというものだった。 映画『夢売るふたり』公式サイト うぬ~、面白い。面白いけれど、手放しで拍手!という感じではなく、じわじわ、じわじわ。後から後からいろいろ思い巡らせて行くといろんな可能性が浮上してきて、その余韻がぐんぐん膨張していって、え、あれってもしかして? とか、こういう意味があったのかも?? とか、そんな感じ。舞台挨拶で阿部さんが、観た人によって答えが違うだろうし、ぜひ観た人同士で3~4日語り合ってほしいって言ってたけど、確かにそんな感じ。 いつもながら抑え目のタッチの演出で、ストーリー自体はファンタジーだと思うけど、でも中身がぎっしり詰まってる。松たか子演じる里子は、ナニカ隠していたんじゃないだろうか。体は本当に変調をきたしていたんじゃないだろうか。それを押して夫のためにつくしたんじゃないだろうか。途中は、悪女なのかなんなのかと思っていたけれど、最後にはそんな気がした。あの結末でそれでも市場で働く姿は、夫の夢=店を持つをかなえるための献身にも見えたのだけど、それは性善説すぎるのかな。てかほんと、どこまでが本心でどこからが嘘なのか。そもそも気持ちって嘘とホントのふたつにわけられるのか。そんなこと考え出すと、どういう見方も可能になってしまって、それを作る監督がやっぱりすごい。 そして、夫婦という不思議なふたりを、実に見事に描いていたと思う。オープニング、小料理屋での見事なアイコンタクト。目配せだけでわかりあうふたり。ああこのコンビネーションが、結婚詐欺でもうまく結びついているんだな、と。机で寝ていた里子をベッドまで連れて行くのもそうだし、節々で、阿吽の呼吸を披露するあたりがにくいところ。根っこの信頼関係を描きつつも、だけどそれが純粋な愛情だけで成立しているとは思えないのも、いとをかし。これこそがリアルな夫婦関係なのかもしれない。相変わらず、白黒をはっきりつけない人間の描き方はグレーの魔術師、西川美和の真骨頂。 女性のキャラクターがステレオタイプだったり、マイノリティだったりというところが、ファンタジーっぽさを煽ってるんだけど、感情には寄り添える気がしました。わりとその場のノリでブレていく貫也はやっぱり男の性を表していると思ったし、一方でしたたかにだけど弱さを見せる里子とそのその他の女性たちは、やっぱり女とはこういうものかと思わせてくれました。 一般受けする感じではないと思うけど、映画好きにはたまらない後からじわじわ。語る要素は満載。さあ、あんたは白黒どうジャッジすんの!?
by april_cinema
| 2012-09-08 00:00
| All-Star
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