人気ブログランキング | 話題のタグを見る
2012年 07月 09日
感想_約束の旅路
感想_約束の旅路_b0130850_2156940.gif重厚な良作。『約束の旅路』DVD鑑賞。エチオピアからスーダンの難民キャンプへと向かった母と息子。そこでは、ユダヤ人をイスラエルと送還する「モーセ作戦」が行われており、母は息子を救うため、息子をユダヤ人と偽って送り出す。偽りの名前シェロモを名乗り、偽りのプロフィールでただ一人異国へと渡った少年は苦悩を抱え、残してきた母を思いながら成長していく。
約束の旅路 デラックス版

実話に基づいた物語。このモーセ作戦というものがあったのは初めて知ったな。やはり複雑な中東世界。イスラムや石油だけでなく、ユダヤ人も絡んでくるとなるとさらに一筋縄じゃいかんすな。シェロモは、簡単にはイスラエルになじめない。新しい環境でも、里子に出された後も、心を開かない。それは残してきた母を思うからと、みずからのルーツを偽ることへの違和感からだろう。自分だけが生き延びようとしていることへの罪悪感も背負ったに違いない。

映画は善悪の視点は持ち込まず、あくまでシェロモの成長に軸を持ってきて、少年から青年になり、やがて秘密を打ち明け、人生の意味を見いだし、恋も経験していく様がとても好感が持てる。最後には祖国の窮状を憂いて医師を目指すという流れも自然に受け入れられるわ。最後の最後のごほうびには、胸が熱くなりましたな。アイデンティティとは、はたして先天的なものなのか。後の環境で変わっていくものなのか。それこそ人生の数だけあるものなのだろう。

里親一家や、ラビたち、そして奥さんとなるサラまで、周辺キャラクターたちとのかかわりもよかったし、地味でシリアスながらも、過度に重過ぎることのない質量が心地いい映画でした。

by april_cinema | 2012-07-09 00:00 | All-Star


<< 感想_リンカーン弁護士      感想_バレンタインデー >>