2015年 08月 28日
感想_わたしに会うまでの1600キロ
b0130850_1372458.gif歩く、って超〜大事。『わたしに会うまでの1600キロ』8月28日公開。アメリカの3大トレイルのひとつ、パシフィックトレイルをたった一人で歩くシェリル。孤独で過酷な道のりで彼女は、歩き始めたことを少し後悔しつつ、これまでの半生を振り返っていた。最愛の母との別れ。哀しみから抜け出せずダメにした結婚。いいことなどなかった人生で、それでも歩き続けるうちにシェリルは、人生に答えを見出しはじめる。
『わたしに会うまでの1600キロ』公式サイト

主演のリース・ウィザースプーンがアカデミーを賑わしたことでも話題だった本作ですが、なんせ監督が『ダラス・バイヤーズ・クラブ』の彼ってことで期待せずにいられるわけない!(その前の『カフェ・ド・フロール』も良作!) で、期待通りのいい作品だったな。わりと予告で予想できる範囲の話ではある。妙齢の女性が、歩く旅を通して自分を省みて、その中で何かを得ていくっていうね。でも、その描き方とか押し付けがましくなさがよかったかな。

実は、道中でこれ見よがしなドラマが起きるわけじゃないのがよかった。ロードムービーなので、もちろん途中途中で出会いはある。ヒッチハイクさせてくれる人、謎のホームレス取材ライター、怖そうな農夫、トレイル仲間、中継点で待つ人、同じ女性でトレイルにチャレンジしている人、地元在住の親子などなど。でもその出会いはあくまで普通の出会い。過去を思い出すきっかけにはなるけど、決して彼らが直接シェリルに影響を与えるわけじゃない。あくまでもシェリルは、自分の中で過去と向き合い、自分の中で哀しみや孤独を受け入れ、そして自分の中で前を向いていくのだ。この落とし前のつけ方はとてもよかった。名作の『星の旅人たち』を思い出したな。あれも、いろいろあるロードムービーだけど、旅そのものがすべての答えっていう描き方だったっけ。

トレイルを歩く現在と、さまざまな過去を交錯させる演出のバランスも見事ね。定石かもしれないけど、すごく丹念に説明と情緒を織り交ぜてあって、退屈せずに感情移入できました。「歩く」って人にとってものすごく大事な行為なんじゃないかなって思う今日この頃です。何かのために歩くのではなく、ただただ歩くということ。出会うものを受け入れ、通り過ぎていくこと。走るとも、車に乗るとも違う、生きるスピードが歩く、なんじゃないかと思います。メタファーではなく、身体的動作としての歩くこと。それを思わせてくれましたし、実際に自分も、知らないところを歩くとき、そういう感覚を持ったりします。目に入る全部が新鮮で刺激的で、でも自分の思考に降りていくだけの余白がたっぷりとあって。リースもそんな物語の中のキャラにハマってたね。昔の方が美人だった気がするけど、それはそれ。大人の女性の魅力を振りまいておりました。

でまあ、言っちゃなんですが原題『wild』がこういう邦題になっちゃいますかねぇ。実は内容とぴったり合ってるんだけどね、もう少しなんか、作家性を大事にしてほしいような。でも、wildのニュアンスが日本だと、スギちゃん方面になっちゃうから難しいよね。かくいう自分も代案が思いつかない…。

何はともあれ見事な一作。オススメです。
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by april_cinema | 2015-08-28 00:00 | All-Star


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