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2008年 05月 31日
感想_アウェイ・フロム・ハー 君を想う
感想_アウェイ・フロム・ハー 君を想う_b0130850_239216.jpg最後に愛は勝つ。勝ったんだよね…? 『アウェイ・フロム・ハー 君を想う』5月公開。妻フィオーナがアルツハイマーに冒されつつあるグラント。フィオーナは介護施設に入所し、1ヶ月間の面会禁止期間を経る。ひと月ぶりに会ったフィオーナはグラントを認識せず、さらに所内で同じく患者であるオーブリーという男性と惹かれあっていた…。サラ・ポーリー初監督作品。
映画『アウェイ・フロム・ハー 君を想う』

アルツハイマー病が題材と聞いてたから、なんとなくの輪郭を想像していたけどその中身はまたずいぶんイメージと違ったな。大きなベースとして、妻が病に冒された男の愛と葛藤というのはもちろんあるんだけど、その描き方がより人生観や結婚観にすら迫っていて、どんどんどんどん心に圧力が…! 同情するに十分なグラントの境遇。誰もがグラントを責めやしないであろう状況において、どう行動するのか。いや〜夫婦愛という人生のハイライトのひとつの深淵を観た気がするよ。

アカデミー主演女優賞を本命視されてたジュリー・クリスティ、確かに絶品! アルツハイマーに冒される妻、というだけならここまで評価されることはないかもしれないけれど、さらにその上に疑心暗鬼を招くような表現。記憶がおぼろになり、しかして崩れることのない上品な振る舞い。参った。翻弄された。でも、オトコから観ると負けず劣らず良かったと思うのはゴードン・ビンセント。

決して誉められたものでもない自分の人生をまるごと振り返り、そしてそこから逃げずに愛する人と正対すること。もはや自分をわからないかもしれなくても、愛する人の望みを叶えてやること。やりきれない現実を前に、"逃げて"も誰も責めない状況を背に、それでも"君を想う"姿は、静かだけど大きな感動を呼んだよ。

いやー、サラ・ポーリー、ただもんじゃない29歳。本人もかなり哲学的な思考の持ち主なんでしょう。「不運だったな」「それが人生よ」。印象に残ったセリフです。

by april_cinema | 2008-05-31 00:00 | MVP


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