2008年 01月 04日
「何をやったらいいんだ?」「瞬き20万回です」「20万で足りるのか?」(※)。『潜水服は蝶の夢を見る』2月9日公開。『ELLE』編集長だったジャン=ドミニク・ボビーは、突然の脳梗塞で倒れる。めざめた彼は体を動かすことも声を出すこともできなくなっていた。唯一機能しているのは左目のみ。絶望の淵に立たされながらも、ある瞬間、地獄から解き放たれたジャン=ドー。左目の瞬きで1文字ずつコミュニケーションする方法によって、彼は自伝小説を書き始める。 映画『潜水服は蝶の夢を見る』 うお〜、なんだこの生々しく肉迫的、そして美しい画は! 圧倒的なまでの映像感覚にもってかれる!! 序盤は、ジャン=ドーの視点となって、極端に狭い視野と、その限られた左目の瞬きを再現。そして中盤、ジャン=ドーが一筋の希望を見出してからは一気に画角が広がって、彼の肉体を離れて自由な映像を映し出す。彼の精神状態と完璧にリンクした画は芸術的ですばらしいよ! なにより心を捉えたのは、ジャン=ドーが自分を取り戻し覚醒したとでもいうべきその瞬間。氷山が氷解して崩れ落ちるようなイメージカットは、野性や本能のようなものと、崇高なる魂、さらには自由なパッションまでをも瞬間的に表現。彼の心の変化をみごとに描写した、鳥肌もんの必見シーン!! 明らかに、その境遇はヘビーでありながらも、ジャン=ドーの強い意志が貫かれてるから、悲観的な見え方はちっともしない。彼自身、病に倒れる前など聖人君子では決してない。でも、左目しか動かせないという過酷な状況に置いて彼が感じた、「記憶」と「想像」は自由である、という結論(前述の氷解シーン)。これだけを拠り所に自伝を通して自身の過去へと飛び立つ彼の精神が、どれほど強く逞しく美しく尊いものか。それを想像するだけで、なんだかとてつもなく強い勇気をもらえるよ。 20万回の瞬きも相当タフだけど、それを根気よく記録していったサポートのタフさにも頭が下がる。周囲の反応は、ときにユーモアさえ織り交ぜられて嫌みのない感動を呼ぶし。"「潜水服」を着せられていても「蝶」のように飛び立てる"というその生き様は、観るタイミングによっては人生観にも影響を与え得るであろう、珠玉の1本でした。うーん、力強い。 途中、左目のみで鑑賞してみたけど、すぐに挫折。ジャン=ドーの苦悩の何億(もっとか)分かの1だけ味わってみました。 ※ネタ元『SLAMDUNK』です。一応注釈。
by april_cinema
| 2008-01-04 00:00
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