2008年 11月 11日
十分に惹き込まれたなり。『ゴーン・ベイビー・ゴーン』DVD鑑賞。私立探偵のパトリックとそのパートナー、アンジーのもとに舞い込んだ依頼は、行方不明の4歳の少女アマンダを捜すというもの。母親のヘリーンはドラッグ浸りで、そのルートから捜査を始めた2人。警官のレミー、ニックの協力を得ながら、チーズという男が捜査線上に浮かび上がってくる。ヘリーンはチーズの金を横取りしていた。共犯者は殺され、取引に応じるチーズ。しかしそれは真相のごく一部だった。 ゴーン・ベイビー・ゴーン 『ミスティック・リバー』と同じ原作者だそうで、負けず劣らずのヘビーな社会派。子供の虐待、誘拐など穏やかじゃないネタがモチーフになっています。物語はやはりサスペンスを軸に進み、アマンダはどこにいるのかから始まって、あれよあれよという間にその裏にあるいろんな人間の思惑が絡み始めます。この急ピッチな展開は、ん? ちょっと待って?? って思うような雑な感じもしなくはないけど、2時間でまとめるために切り捨てざるを得なかったところかな。やっぱりコアは終盤のシークエンスにあるわけだから。 冒頭のモノローグにあるとおり、人間を形成する大部分は、環境によるものでしょう。アマンダは、ロクデナシマザーの元に生まれ、不注意から怪我を負わされたりしている。このままでは確かに明るい未来が望めないのかもしれない。そしてアマンダの子にもその負の連鎖は受け継がれていくのかもしれない。それを断ち切るために法を犯したとしたら、それは果たして罪なのか否か、てのが最初のクエスチョン。同時に、レミー、ライオネル、ドイルといった面々も、それまでの人生経験すなわち彼らを取り巻いていた環境がその価値観を作り上げているってとこが巧く折り重なってくるのは、きっと原作の持ち味だろうね。 セカンドクエスチョンは、では、他人の行動を自分の価値観だけで計れないとしたら一体何を信じるべきなのか。パトリックの決断が正しいかどうかなんてことは誰にも証明できず、それこそ共感できるかどうか以外には何も断じることができない。アマンダがどっちの生活を望んでいたかも本人にしかわからないし、時間が経たないと答えは出ない。でもって、サードクエスチョンは人間は果たして変われるのかどうか。少なくともヘリーンは、言葉とは裏腹にまったく変わる様子はなし。ではドイルやレミーは何かのきっかけで変わったのか。そしてパトリックは次に同じ分岐点に立たされた時に果たして…。 でも、最終的にこの映画の本質ってのは、それらクエスチョンを問うことじゃなくて、こんなことを考えさせなくていいように、我が子から目を離さないこと、心の底から愛情を注ぐこと、ヘリーンのようにはならないこと、ドイルのような人を生み出さないこと、そう思わせることにあるように思う。考えるべきは、正義とはなにか以上に、愛しい誰かを守るためにすべきことをしよう、なんじゃないかな。 現代的で重厚なテーマを扱いながら2時間しっかり惹き込まれました。初監督のベン・アフレック、甘さはまだあるのかもしれないけど、ちゃんとまとめてたと思います(って監督の力量とか測れるほど映画のことわかってませんが…)。
by april_cinema
| 2008-11-11 00:00
| All-Star
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