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2014年 07月 05日
感想_2001年宇宙の旅
b0130850_1121179.gifこんなにイマジナリーだったのか! 『2001年宇宙の旅』iTunes鑑賞。月に人類が暮らす時代、しかしそこで謎のモノリスが発見される。それは400万年前からそこに埋まっていたことが判明、その超高度な文明が生んだモノリスは、木星に向けて協力な磁力を発信していた。18ヶ月後、ボウマンとプールは最新型コンピュータのHAL9000とともに木星へと向かうが、HALは通信機能の故障を告げ…。

今更すぎますが、ついに観ることができました。色んな意味で予想を覆す、凄い作品だったなー! 冒頭、まさか猿人から始まるとは思わなかったよ。このシークエンスだけで、人類の進化、弱肉強食の世界、争いの歴史など、一気に見せ切っててすごいわ。そしてここに凝縮されたテーマがそのまま宇宙スケールにあてはまるという転換力! あの骨が宇宙船に変わるとは…!!!

この冒頭があるから、宇宙シーンに関してもそのテーマ性が透けてくる。月のチャプターはSF映画の面目躍如。当時にしてこれをどうやって撮ったんだろう?って感じだし、ディテールも作り込まれてるなぁ。もちろん今の技術力からしたら雲泥の差だけど、そういうのを抜きにしてすごい美意識と先見性。音声認識とか、船内デザインとか。

で、問題の木星ミッション編。感情を持つコンピュータには『Her』を思ったし、船長とHALの正面構図は『グランドブダペストホテル』を思いましたわ。で、一気に哲学性というか神話性を帯びて行く。コンピュータに殺される人間。そのコンピュータを制御する人間。ミスをするのはどちらなのか。猿人同志の肉弾戦は、今や宇宙での頭脳戦に。その先に待っていたのは…もう意味不明のイメージ世界だった! 『ツリー・オブ・ライフ』みたいなトリップ映像にびっくりしたぜよ。最後のほうはもう何のことだかさっぱりわかりませんでしたわ。ネット観たら小説版とあわせた解説が載っててようやくわかりましたが。

これが、1968年に公開されたということにただただ驚かされたなー。映画史に残るのも、多くの人が影響を受けたというのもよくわかる一本。『ゼロ・グラビティ』にも全然ひけを取ってないところがスゴイっす。それにしてももう少し冒険譚だと思ってたけど、全然メッセージ性の強い作品でしたね。これぞレジェンド。素晴らしいのひとこと。
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by april_cinema | 2014-07-05 00:00 | Legend
2009年 02月 07日
感想_ベンジャミン・バトン 数奇な人生
b0130850_2041332.jpgそれは村上春樹を読むような、つまりはある種の奇跡のような時間。『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』2月7日公開。戦争が終わった1918年の、生まれるには最高の日、ベンジャミン・バトンは誕生した。しかし彼の姿はまるで80歳のようにシワだらけ。そう、彼にはいわゆる"普通"ではない特徴、すなわち80歳の特性を持って生まれ、年を経るごとに若返っていく運命を背負っていた。母は出産直後に亡くなり、彼の姿を受け入れられなかった父親に捨てられ、老人介護施設で拾われたベンジャミン。彼の瞳に語りかけてきた人生という名の物語とは。
『ベンジャミン・バトン』オフィシャルサイト - 数奇な人生のもとに生まれた男の一生
超長くなっちまって1分じゃ収まらないかもだけど、ぜひにご一読をば。

え、2時間47分? まったく感じなかったよ! とにかく深く深く物語の中へ吸い込まれ続けたわ。フィッツジェラルドが原作だからってわけじゃないだろうけど、それは村上春樹世界をほうふつさせる、愛と人生の寓話。傑作って安易に言うのがはばかられる深遠さ。濃密なのに浮遊感があって、なんなんだろう、すべてを俯瞰するかのように取り込まれてしまって、だけど確かな熱があって。そして心にぴったりと寄り添うような、親密で豊かでパーソナルなこの感覚。それを味わっただけで、人生がとてつもなく尊く思えるわ。いやー素晴らしい体験だ! そして映画の先にあるのは、自分自身という存在の確かな手触り。う〜ん、これ以上言葉にするのが野暮だぜ! けど語るぜ!!

監督はデイビッド・フィンチャー。老人が若返る、という筋の話はいくつか読んだことがある(東野圭吾の短編にもあったっけ。探せばたくさんありそう)けど、こうして映像を通して、一人の人生を見つめることで、文字から得られる以上のさまざまなものを見ることができる。こんだけの長尺で、けど人ひとりの人生を語るには短過ぎる時間で、巧みにまとめきった手腕は素晴らしい。描かれてる核になるのは、人生の出会いと別れっつー普遍中の普遍。一生を線だとするならば(デイジーが「バレーは線が命」と口にするのはこのメタファーね。バレエはラインが崩れたらダメ。人生はラインが崩れてもそれもまた人生)、普通とは逆行する人生で他人と点でしか交わることのできないベンジャミン。それは、順行的に生きるオレらも似たり寄ったりかもだけど、それでも出会いの中のいくつかは、線になってく。ベンジャミンは、その点ばかりの不可思議な命を生きる。

逆回しの時計がまた意味深なメタファーなわけで。失われた時が戻らないことを明示し、誰もがそれを取り戻そうと望む中、ある意味でその望みを叶えるベンジャミン。でもそれは決して幸福なことではなく、かといって悲しいだけの運命じゃなく。たとえ逆回しでも未来になにが待ち受けるのかは誰にもわからない。どんな形であれ等しく過ぎていく時間を、じゃあどう刻むのか、それこそが生きる意味そのものなんだよね。だから、物語は決して悲劇的にならない。ベンジャミンは彼の周囲を過ぎ行く点たちを受容する。早くから受容しているせいなのか、彼は涙を見せない。と同時に悟る。人生に遅すぎることはない、と。それは自分が若返るから出てくる言葉ではなく、彼が出会ったいくつもの点のおかげ。それこそが人生最大の財産であり、点たちをいかに紡いで線にするのかは、自分自身が決定すべきなんだということを教えてくれる。

もちろんすべてのことはあらかじめ決定されているかもしれない。時になぜだか悲劇に向かうこともあるのかもしれない。そんな喪失は無限に繰り返される。村上春樹よろしく、多くのものごとが自分の中に入り、やがて何もなかったかのように通過していってしまう。それはあらゆる人生の大原則だとしながら、しかしそんな点ばかりが続く世界だとしも、ベンジャミンは知り、彼が愛したデイジーも知り、そして観客も知る。損なわれないもの、永遠なるものは、人生の中に確かにあるんだということを。

20〜80歳くらいをそれぞれ演じたブラッド・ピットとケイト・ブランシェットはあんまりにも美しく(特殊メイクと映像処理技術、スンゲー。そして若い頃が熱烈にステキ★)、それゆえ話も美化されて見える気もしなくないけど、やっぱりこの2人はスゴーイよ! 静に徹したブラピの瞳。刹那を想わずにいられないケイトの美。2人を見てるだけでも特盛りおなか一杯なのに、よりによってこんな豊かな物語を演じさせたら非の打ち所あるわけないじゃん! 彼らが真に交わるわずかな瞬間ったら匂い立つような色っぽさ! ラブストーリーだけで括れる話じゃないけど、極上のラブストーリーとしても見られちゃうのは2人のおかげね。

b0130850_20421215.jpgb0130850_2042247.jpgb0130850_20423224.jpgとまあ散々もちあげましたが、とにもかくにも春樹的ファンタジーなことは確か。ハルキストは必見!な分、万人受けするかは微妙なのか? で、俄然気になるのが原作。短編集『Tales of the Jazz Age』の中の1編『The Curious Case of Benjamin Button』(映画の原題もこのまま)てことで、訳本はつい先日リリース。原文のってるリンクもめっけ。
The Curious Case of Benjamin Button

なるほど、原作は本当に奇妙な人生をさらっと駆け足でなぞって余韻を残すタイプ。やや悲劇的。映画版はこれを原案程度にしたほとんどオリジナルのストーリーでした。なおのこと、素晴らしい映画だ。きっと、村上春樹の長編のように、折に触れ何度も見返し、そのたびにまた違う宝物を得られるんじゃないか、そこまで期待させてくれる、これぞ珠玉、いや至宝と言っていいくらい。マイ・オールタイム・ベストにも、棺おけにも入れたい1本です!

US版ポスターかっこいいな。。これの日本語パターン、どっかで観た気がしたんだけど見つからないっす…。

<2009/02/15追記>
満を持しての劇場再鑑賞! 筋がわかっていても、やっぱりあっという間の2時間47分!! あぁ、どのシーンも素晴らしく示唆に富んでいて、人生の豊かさとか、指針みたいなもんを与えてくれるよ。クィニーの人柄と「人生はわからない」という真理。ピグミー族が語る孤独と意志。雷に撃たれた男が示す命のありがたさ。アーティスト兼船長の自分を信じる力。エリザベスが証明した出会いの尊さ。ティジーが、トーマス・バトンが、その他多くの人による死の哀しみ。そしてデイジーが教える愛と永遠。ベンジャミンが体現した生きる歓び。どこ切っても自分の人生にプラスになるばかり! 観なきゃ大損!!

ガトー氏の切なる願いが生んだベンジャミンという一人の男の奇跡。逆回しでもそうじゃなくても、誰にでも与えられる人生という名の限られた期間。それらはやがていつか、ハリケーンか他のなにかによって確実に押し流されてしまう。けれど、永遠なものはある。それはきっと、愛し、愛され、連綿と受け継がれてゆく記憶。キャロラインからベンジャミンへ、そしてデイジーからキャロラインへ。物理的には形を変え、消え果ててしまうものだとしても、無に成ることなく残っていくもの。だって、この映画はオレにとってのひとつのeverlastingに違いないもん。

淡々とした回想物語ながら、抑揚の利いた展開がしっとりとしみ込み、美しい映像と効果的な音楽、そして琴線に触れるフレーズが心に響き渡る。シナリオの力とディレクションの巧みさ、キャストの名演にVFX、すべてが融合されてのこの奇跡なんでしょう。すでに3回目が観たいし、一刻も早くDVDほしい。あと、USサイトのムービーがまたイカすんだわ!
The Curious Case of Benjamin Button

<2009/08/23追記>
早稲田松竹にて3回目の鑑賞。またもあっという間。何度観ても染みる人生を彩る言葉たち。今更気付いたけど、この物語はアメリカ現代史にちゃんとはめ込まれてるんだね。2度の戦争、世界恐慌、スペースシャトル打ち上げに、ビートルズのテレビ出演、そしてカトリーナ。より細かいベンジャミンとデイジーの転機ってのが見えて、楽しかったな。群像劇と言ってもよさそうなほどすべての登場人物たちが名言を残してくれました。次はDVD購入ですな(まだ買ってないっス)。

<2009/12/29追記>
ようやくDVDゲット(廉価版てのが哀し。でも人生に遅過ぎることはない!)して4度目鑑賞。ハチドリが示したのは、人生の可能性の無限性なのかな。その存在が奇跡であり、その軌跡が無限を示すという。う〜ん素敵。何度観ても3時間近くが長く感じないのが凄いよな。

感想_ベンジャミン・バトン 数奇な人生(文庫)
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by april_cinema | 2009-02-07 00:00 | Legend
2008年 12月 27日
感想_ダークナイト
b0130850_2341031.jpg打ちのめされるほどの真理。『ダークナイト』ようやくDVD鑑賞。ゴッサムシティには、相変わらず悪がはびこっていた。マフィアに加え、バットマンのフェイクまで登場し、そして表れたジョーカーと名乗る男。道化のようなメイクを施した男は狂気にまかせて爆破予告、殺人予告を繰り返し、町に表れた新任検事ハービーの正義をも揺るがす。そしてバットマンもまた、理解できないジョーカーの行動の前に選択を迫られていた。2008年ナンバー1映画の呼び声も高いバットマンシリーズ最新作!!
ダークナイト

なにから書いていいかわかんないほどに打ちのめされました。とにかく弛緩することなく鷲掴まれ続ける150分。そこにあるのは圧倒的なまでの真理、真実。すなわち人間の中に必ず眠っている悪意、狂気、そしてそれに対する正義と良心。ほぼすべての人間の中には絶対に弱さと、悪とは呼べない程度の悪意が潜んでいて、それはきっかけさえあればいつでも噴出する。そしてそのインパクトの大きさによっては、人はイカれもするし、憎しみに絡みとられれば狂気の虜とさえもなってしまう。ハービーのように、高潔な精神と正義感を持った人間でさえも。バットマンはたまたまいいほうに向いたけれど同じ変化を辿っていて、ジョーカーにしてもアウトプットが違っただけで、同種のプロセスを経たに違いないってのからして、すでにいたたまれない。その予兆だけでも十分語れるよ。

昨今の日本の凶悪犯罪にも通じる、理解をはるかに超越したジョーカーの純然たる悪意。そこには常人に共感できるようなロジックなんて存在しないから、それを止められるはずもない。原因や理由と呼べるものがなけりゃ、改善や対応の余地が見当たらないのは自明の理。そんだけじゃなく、強すぎるものはそれに対抗する別の強さを生み、ツバ吐くものがあれば吐き返すものがあり、という社会の暗黙のスパイラルとルールも、一切の妥協や楽観なく、正義にも悪にも偏ることなく描かれる。=完全なるフェア。ハービーのいう「運」と同じくらいにフェアな視点。倫理や道徳だけでは割り切れないこれらに対して、はたしてどう対処していけばいいのか。人々の善意っつーわずかな希望は示されるけど、そこに美談とか過剰な期待はない。クリストファー・ノーランのビジョンは徹底してブレずに真実だけを突きつけてくる。もはや、アメコミやアクションエンターテインメントという言葉からイメージさせられる気軽さは皆無。

バットマンやハービーはもちろん、ジョーカーやゴードン、市長やレイチェルに至るまで登場人物すべての感情がリアルだけに、こうだ!という答えは出せそうにない。そもそも問いかける作品でも答えを出す作品でもないような気がして、つまりは自分の中の善と悪を認め、それと向き合わせるためのモノなのかもしれない。社会に必要なのは完全無欠のヒーローではなく、一人ひとりの人間が善悪の意味を知り、その先にあるものを想像すること。ジョーカーの言う「先が読める」ってのはもしかしたらこのメタファーなのかも。ハービーが堕ちた「フェアな運」は、善悪のバランスのことを痛烈に指している。社会や群衆ってのはどうしてもバランスをとる方向に動くし、情報過多で誰もが発信手段を持つ今、1人のカリスマやヒーローが君臨できる時代は過ぎ去った。善が突出していたハービーも、それを揺り戻されざるをえない価値観の存在に耐えきれなかったわけで。多分、今の世の中、完全なる正義や完全なる悪ってのは存在できなくて、バットマンのように例え個の中で完成されたものがあったとしても、個と個がかかわり合って生きるこの社会において、それが完結することはないんだね。そう考えるとホープレスなようにも感じられちゃうけど、これを認めないことにはもう次のステージに進めないのが現在進行形の世の中の形。そこを考えないと、現代の悪への対抗策も考えようがないってわけか。もうゴッサムシティの中だけの問題なんかじゃない。

『バットマン ビギンズ』のリアリティ路線を踏襲しつつ、完全なる社会派へと転化させたノーラン監督の手腕は驚異的というに相応しい。そして、噂に違わぬヒース・レジャーの怪演に、あまりにも早い死が心底惜しまれます。一部で言われてるように、本当にジョーカーを演じたことで精神的な重圧を感じていたとしたらあまりにも皮肉な話。好きな俳優だけにもっともっとたくさん観たかった。はたしてこの先シリーズは続いていくのか。強烈にテーマが濃密でしっかりしてるから娯楽性が少なくすら感じられるけど(実際には相当派手なスペクタクルなのに)、もはやこれ以上はできないのでは、と思えるほどの傑作でした。にしてもツライよ、ツラすぎるよ、ダークナイト!

<12/26追記>
なななーんと、来年1/24~劇場再公開決定ですってー。それまで待てば良かった? いや、2008年中に観たかったから悔いはなし。ヒース追悼の気持ちも込めて、絶対劇場で観てこよっと。

b0130850_182460.jpgb0130850_183282.jpgb0130850_184033.jpg<1/25追記>
てことで、ヒースのオスカーノミネート祝いを兼ねて、劇場再公開鑑賞@丸の内ピカデリー。改めて戦慄の150分だったなー。人間が集中できる時間を越えて一瞬も気を抜かせないクリストファー・ノーラン、やっぱあんたは凄い。完全なる偉業だ、コレは。

表(正義)しかなかったはずのハービーのコインに悪が焼き付き、スマイルorクライではない善悪のトゥーフェイスが刻まれ(カメラワーク巧すぎ)、バットマンは闇の中に追いやられてしまうのはやっぱりツラくて、日曜の朝っぱらから重い気持ちになるわー。小さいお子さんを連れてくる親の気持ちが全然わかんねーぜ!

正義こそが正しいという真実だけでは納得できない世間に対して、完全なるヒーローは幻想を満たしてあげなくてはならない。ブルースすらも幻想を拠り所にしていて、夢を与えるというのはつまりそういうこと(ああ、こんなところで綿矢りさを思い出すなんて!)。それでもこの映画を観ることで、自身の中の弱さを認め、たとえ幻想に過ぎないとしても人間の本質的な良心や善意、正義というものをもう一度考えるきっかけになるとすれば、この映画の、そしてバットマンは役割を果たしたことになるんじゃないかな。

スカっと感動するものじゃないから、人に薦めにくいけれど、とにもかくにも至高の1本。劇場のスクリーンで観ることが叶って本当によかったぜ!
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by april_cinema | 2008-12-27 00:00 | Legend
2008年 10月 19日
感想_花とアリス
b0130850_0403564.jpgだめだ、好き過ぎる! 『花とアリス』DVD再鑑賞。高校入学した花とアリス。花は一目惚れした宮本先輩のいる落研に入部。ある日、宮本先輩が頭を打ったとき、花は宮本を記憶喪失に仕立て上げ、自分が彼女だったことにしてしまう。話を合わせるためにアリスも巻き込まれ…。
花とアリス ::アミューズソフト::

ショートフィルムを追いかけ、満を持して劇場で観て以来久しぶりに観たくなって。初見のときもすごく好きだったけど、輪をかけて見とれきってしまった135分、一瞬も目を離せなかったナー。もちろん大好きなシーンは覚えていたけど、忘れていた&見逃していたようなシーンを合わせて再構築してったら、前以上に好きになってしまった!

ひとつひとつが本当に丁寧でリアル。ストーリーが少女マンガちっくであり得ないという評も見えるけど、リアリティってあり得るかどうかじゃないと思うので、この映画はオレにはとってもリアルなんだわ。花とアリスのキャラクターや感情の揺れはもちろんのこと、ディテールがとにもかくにも素敵すぎるよ。花屋敷も、ガラクタだらけの有栖川家も、表情も、2人称の使い方も、カミングアウトも、風子ちゃんも。まあセンチメンタル好きじゃないとウケないのはわかるけど。

花の恋をベースにしているけれど、そこに映し出されるのはズバリ不安定な思春期全部の煌めき。序盤は晴れ、中盤は雨ばかり、そして後半には雨は上がる。これもきっと計算だよね。画の切り方が最高で、意味のないものにも意味がもたらされたその緩急は絶妙。短いシーンを積み重ねることで、さらさらとめくれていく何気ない瞬間と日常を、まるでアルバムを開いたときのように見せる手腕は見事のひと言。アリスとお父さんの中に生まれていたそれぞれの小さな変化は、花とアリスにはこの後にも物語が続いていくことを示唆する。花と宮本先輩が離れる日も来るかもしれない(きっと来るだろう)。アリスは仕事で嫌な目に会うかもしれない。花が引っ越すことになるかもしれない。アリスの母は再婚相手を連れてくるかもしれない。そういうのは2人がこの先、望む望まないにかかわらず体験していくもの。

だけれど、この先に何が起き、そしてそれも忘れ去っていくとしても、今この瞬間は確かにそこに在ったんだということ。海でトランプが風に吹かれたことも、雨の中黒ずくめで踊ってたことも、高座に立っても客が1人しかいなかったことも、いつかはそれこそ、机の引き出しの奥にしまわれて、ふとしたときにしか思い出さなくなるかもしれない。いや、きっとそうなっていく。だけどそれは悲しむべきことではないし、投げ捨ててしまうものでもない。その瞬間たちが積み重なって未来となり、未来があるからこそ過去がやさしい思い出に変わる。つまり変化は恐れるものではない、ということ。

そんな、なにげなく通り過ぎてしまうほとんどこそ、実はかけがえのない日々であり、青春。やがてそういう時代が過ぎ去ったとしても、ときどき取り出して慈しむことで、もしかしたら無くしたハートのエースと思わぬところで出会えるのかもしれない。思春期という脆くて扱いにくいものがこんなに美しいこと自体が、まさにその証明ってわけさね。そもそもハートのエースを無くさなかったら、もう一度出会うこともできないわけ。そう、すべての瞬間に愛しさの種は潜んでいるのです。

大好きな映画だったけど、改めて見てみるとやっぱりこの世界観はどうしようもなく好き。公開から4年以上たっても古くささはちっともないから、きっとまたいつか見返しちゃうんでしょう。今更言うまでもないことだけれど、蒼井優の煌めきは国宝級。これを観ると今はやっぱり痩せ過ぎかもー。
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by april_cinema | 2008-10-19 00:00 | Legend
2007年 11月 15日
感想_再会の街で
b0130850_7482471.jpg心から涙。絶対に観なきゃダメだ! 『再会の街で』12月22日公開。歯科医アランは学生時代のルームメイトだったチャーリーと再会する。しかし彼は働きもせずゲームや家のリフォームに明け暮れ、ヘッドフォンを外すこともない。心を閉ざし変わり果てたその姿は、あの悲劇によって妻と3人の娘を一瞬で失ってからだった。
再会の街で - オフィシャルサイト

なんて温かく、そして力強い傑作! 喪失の物語であり、愛する人を失くした悲しみがあふれながらも、その奥に深い深い人間愛が流れていて、完璧に泣かされたよ。決しておセンチに走っているわけではなく、徹底してリアルに、丁寧に丹念に描写。舞台は「9.11後」という括られ方だけど、なにもそれに限ったことではない。話自体は1人の男とその友人の周辺というすごくパーソナルなものながらそれは、大切な人を持つ地球上のすべての人にあてはまる物語。

原題は『Reign Over Me』。その名の通り、映画の大半は支配されている。逃げ場のない圧倒的な絶望と哀しみに。だけどその裏には実は"Love"が隠されている。このタイトル、『Love,Reign O'er Me』っていうThe whoの楽曲からきてるんだそうで(劇中にも使用)、映画も最終的にはスクリーンいっぱい悲しみを超えた"愛"で覆いつくされるんだわ。チャーリーの中であふれ続ける愛情、そんな彼を見守るアランの友情、そして彼らの周辺の人物もまた、それぞれのかけがえのない人への愛を持っている。

ラスト近く、「孫が見たら喜んだでしょうに」「たかがキッチンさ」という義父母の会話。これこそがチャーリーが暗闇と孤独の中で無限に繰り返していた自問自答。"「分かち合え」なかった"、という直前のフレーズがここに集約されてて、このワンシーンだけでもチャーリーが抱え続けた終わりなき哀しみがあふれだすよう。このラストが象徴するように、映画の最初から最後まで描かれるすべてが一点を向いているブレのなさは圧巻。それによってシーンの裏にあるだろう情景を思い起こさせ、並々ならぬ感動を与えるのです。アダム・サンドラー、ドン・チードルともそれに2000%応える演技でチャーリー以外の、アランやアンジェラ、ドナの物語もすばらしく有機的に機能しておりました。

音楽、映像、演技、物語、どれもが最高レベル。決して重いばかりではなく、間延びもせずに深く深く掘り下げられた、タイトルまで含めた重層的な作りは脱帽というほかなし。家族と友情を支える深い深い深い普遍の愛の物語。見逃し厳禁、全力で必見の1本!! ああ、もう一回観たい!

<12/17追記>
本作のテーマのひとつ、傷が癒されることはなくとも、共有することでわずかな救いになりうる、ってことは
『あなたになら言える秘密のこと』でも感じたことでしたわ。今思い出しても泣けるぜ。

<2016/01/09追記>
DVDで再鑑賞。見返してみたら、ちょっと説明も多いし、若干不自然な展開もあるなーと感じ、初見時は褒めちぎりすぎてたな、と思いつつ。でもやはり最終的にはチャーリーを絡め取っていた悲しみの大きさと、その裏の消せない愛情が沁みました。彼が女性を避け不自然なほどホットだのオッパイだの言っていたのは妻の幻を見ていたから。セラピストたちを毛嫌いしたのは思い出すことが怖いのではなく、消化して忘れてしまうことを恐れたのではないだろうか。あと『ワンダと巨像』にもメタファーあるよね。プレイしたことなくウィキを見ただけだけど、広大な世界に主人公とボスキャラだけ、というのはまさにメガシティNYCにたった一人取り残されたチャーリーの孤独そのもの。と、2回目だから見えてきたことというか、たくさん映画見たから僕の見方が多少細くなったなという感じが。改めてアダム・サンドラーは別人だったね。

最後の最後、ドナとなんかいい感じ風の未来を感じさせるのは、彼の新しい道という救いとはいえ、さすがに早すぎるような気がしたなー。
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by april_cinema | 2007-11-15 00:00 | Legend
2007年 03月 24日
感想_バベル
b0130850_7465787.jpg凛子フィーバーひと段落で、なんだか忘れられそうだけどTHEパーフェクトだよ『バベル』4月28日公開。モロッコで起きた発砲事件。撃たれたのは夫婦で訪れていた観光客のアメリカ人女性。彼女たちが残して来た子供たちを預かるメキシコ人女性は、息子の結婚式に出るため預かった子供たちを連れてメキシコへ。モロッコで発砲されたその銃は、ある日本人が持っていたものだった。モロッコ、アメリカ、メキシコ、そして日本。1発の銃弾が世界中の壁に、バベルの塔に、風穴を開ける。脳みそブチ抜かれる大傑作!
バベル

「ミスコミュニケーション」が主題として横たわり、その象徴としての「バベルの塔」。このメッセージが間接的ながら劇的に、鮮烈に、全編を通して響き渡る。観てからふた月くらい経っているけどいまだに消えない衝撃。ダメージといってもいい。オレが感じたのは、世界には誰の耳にも届かない"HELP!"があふれ返っている、ということ。スクリーンに映し出された"HELP"の数は限られているけど、その向こうに無限の"HELP"が透けて見える。

コミュニケーション、つまり人間同士のリンク、を阻害する壁。言語、人種、偏見、劣等感、不信、孤独。哀しいほどすれ違い、思いは届かないまま空を切る。しんどいといえばしんどい。けれど、決して現実を悲観して終わらない。この映画は、人と人は繋がることができるはずだ、という強い確信をもって描かれてるから、希望をもって席を立てるのだ。そう、ミスコミュニケーションが発生するのは、人々が繋がろうとしているからこそ。それを逆説的に描いている映画なんです。

凛子バブルはともかく、役者のみならず映画的な要素を褒めだしたらキリがないくらい、どことっても見事。隙、皆無。エンターテインメントではないけれど、今年最高の1本つっても過言じゃないな。ぜひ『バベル』からのメッセージをお観逃しなく、そしてすぐ隣をさまよう「HELP」をお聴き逃しなく。

<09/11/22追記>
もう一度観たいとずっと思っていたのがようやく叶ったDVD鑑賞。140分がやはりあっという間の衝撃。劇中のひとことがこの映画を、いや全世界のすべてを端的に表している。「悪いことをしたのではないの。ただ愚かなことをしただけ」。兄弟の小さな意地と、取るに足らない欲が事件の始まり。誰のせいでもない不幸な事故を受け止められなかった夫婦。先天的な障害を抱える娘とその両親。仕方なく越えた国境、そして不法就労。どれも世界中にあふれているできごとで、それ自体を回避することはもはや不可能だと思う。どのエピソードにも必ず家族が描かれている。家族だけれどもそこには溝がある。この映画から学ばなくてはならない。私たち愚かな人間は、だけれども生きていく上で他者と向き合い、話し合い、理解し合って行かなくてはならない。共通言語がなくても、言葉すら持たないとしても、だ。

チエコの存在が究極のメタファーで。聾唖という直接的な意味でもそうだけど、きちんと正対することがまず求められるというところにイニャリトゥのメッセージがある。これこそがコミュニケーションの基本。すなわち、「まず向き合う」ってことが言いたかったんだろう。人っこひとりいない砂漠の村でも。ネオンにあふれたビルの中でも。目に見えない国境線の上でも。

物語の始まりはモロッコの銃弾だけど、そもそものきっかけはチエコ母の死があるわけで、だけどそれについては明かされない(手紙の内容もね)。これは、すべてが繋がっている世界だからこそ、なにが始まりだなんて言えないということを示唆してるんだよね。もちろん終わりもないということで。とことんヘビーだけれど、その重さの分だけ意味のある作品。やっぱり疑いようのない傑作だわ。
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by april_cinema | 2007-03-24 00:00 | Legend
2007年 02月 08日
感想_ボビー
b0130850_171568.jpg運命を変えた一日は、ボクの運命をも変えました。
『ボビー』2月24日公開。1968年6月5日、「ボビー」の愛称で親しまれた大統領候補ロバート・F・ケネディが暗殺された。悲劇の地となったアンバサダーホテルにいた人々はその日、何をし、何を見たのか。人種も立場も違う22人の一大群像劇。
BOBBY 『ボビー』公式サイト

名優たちが集ったホテル内群像劇。生活レベルではほとんど関連性のない22人だけれど、ここで起こるドラマはすべてがある一点を指し示している。その一点とはボビーであり、戦慄のクライマックス。ボクはもうこのラストに深く、深く参ってしまいましたのです。誰もがボビーに未来と希望を託してたんだね。それに値する人物だということが、最終盤の数分だけでよくわかる。

世界にはいろんな事情があるから、物事の一面だけを見て何かを言うことはできない。その立場にならないと一概に善悪は下せない。今までそんなふうに考えてた。でもそうじゃなかった。どんなに複雑な世の中だろうと、本質はいつだってシンプル。誰も傷つけてはならないし、誰かを傷つけることに加担してはならないし、誰かを傷つけることを容認してはならない。ただそれだけ。

ボクが、ボビーついて無知だったから(JFKについてすら無知。。)、初めて触れた彼のメッセージに深く深く撃ち抜かれた。このメッセージを伝えてくれた今作とその手法を讃えたいし、全人類が聴くべき社会の原点が詰まってると思う。映画としてどうではなく、ボビーの存在こそがすべて。どんな真実のドキュメンタリーより、『硫黄島』より、まずはボビーのソウルをすべての人に受け取って欲しいです。なのに、、、都内はシネコン4館しか開かないってどーゆーことよ!怒

まだまだ言い足りないけど、自分史上、最も特別な映画の1つとなりました。

<08/05/04追記>
劇場公開時にもう一度観ることが叶わずようやくのDVD再鑑賞。言い足りなかったことを言ってやるぜ。

改めて偉大な作品であり、偉大な人物。あらゆるエピソードが現代社会へのメタファーであり、そこから読み取れるメッセージは政治的、社会的といった大それたものだけではなく、なによりもパーソナルな人と人の融和。人は過ちを犯すものだけれど、その過ちを悔い、改め、謝罪できるということ。互いを尊重できるということ。心と心はお互いが向き合えば必ず通じ合わせることができるということ。誰もが孤独で、誰もが"キング"で、誰もがハイになりたくて、誰もが誇りを持って、誰もが希望を抱いているということ。どれだけの時が流れても人間が人間であるという根源は変わらない。そんなメッセージに寄り添う音楽がまたなんともいえずスバラシイ!

希望が消えた日なのに、なぜかやわらかな希望を抱かせてくれるような。全世界の全世代が触れるべき素晴らしい宝です。「傑作」という言葉すら陳腐に思えるほどに。

<09/1/22追記>
バラク・オバマが大統領就任。映画の見過ぎかもしんないけど、もしなにかが起きてしまったらと不安の残る気持ちで就任式の映像を眺めた。きっとボビーを失ったとき(キング牧師や、JFKも)はこんな気持ちだったんだろうと、ようやく初めてわかった気がする。
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by april_cinema | 2007-02-08 00:00 | Legend
2006年 08月 17日
感想_フラガール
b0130850_8125761.jpg個人的にはここ数年でベスト。9月23日公開、李相日監督最新作『フラガール』に涙止まらず。オレがチケット代出してでもみんなに観てほしい傑作なので、長いけど読んでくれろ。  
フラガール

昭和40年、石油の登場でいわきの炭鉱は閉鎖寸前。そんな炭鉱町が起死回生を狙って「常磐ハワイアンセンター」(現スパリゾートハワイアンズ)建設計画をぶち上げた!つー実話ベースムービー。今を失いそうな炭鉱夫、未来を切り開く炭鉱娘、不運な過去を背負う女ダンサー、3者のパッションはハワイより熱ぃよ!!

炭鉱町の危機とそれを背負わされた大人たち、その運命が足枷になってる娘たちを、格好悪さや不条理を隠さずに真正面から描き切る。李相日って"ダサいくらい必死な姿の格好良さ"をちゃんと撮ってくれる。譲れないものは人それぞれ。変わるもの、変えられないもの、変えざるをえないもの。時代、心、暮らし。そういう町と人の生き様がいちいち全力だから胸を撃たれる。撃ち抜かれたら最後、もう涙止めるヒマも術もなし。

蒼井優、超〜圧巻。ハマリ役だった主演の松雪さん(衣装もお似合い!)をも完全に喰ってた。凡庸田舎娘〜懸命純情娘〜最後トップダンサー。一本の映画でこんだけイメージを変化させる演技力は神がかってる感すらアリ。特にソロのフラは『花とアリス』のバレエを越える輝き。バスでの笑顔、友人を送る涙、先生に捧げるフラ、すべてに見とれた。ひいきめなしで今年は蒼井優イヤー!(香川照之イヤーでもあるな) ほかトヨエツ、徳永えり、富司純子、岸部さん、池津祥子、しずちゃん(泣かされたぞ!)、などなど全キャスト超ハイレベルだわぁ〜!

世界を動かすのは、こういう情熱なんだべ。信念を持って生きる。それこそが人間本来の自然な姿(=スローライフだ!)だとオレは思う。テーマが斬新なわけじゃない。話はベタかもしれない。でも必死に生きるカッコよさ、そして気高さを見せてくれる映画でした。最高だよ、マジで。

余談。こーゆー地方の大型観光施設で健全経営できてるのはココくらいなんですと。そんな「スパリゾートハワイアンズ」、超〜行きたい! ということで、本日は蒼井優ちゃんの誕生日。公開には少し時間があるけど、おめでとうの気持ちを込めてひと足早くレビューしました。I LOVE YU!はさておき、本当に本当に傑作なので、せひ劇場でどうぞ。

<8月23日追記>
東急のフリーペーパーSALUS9月号で李相日のインタビューが載ってました。「エモーショナルな人を撮りたい。人が泥臭くも一生懸命に生きる姿を描きたかった」って言葉に深く納得。それ、映画からしっかり伝わりましたよ!

<9月16日追記>
『フラガール』がアカデミー賞の外国語映画部門に出品されることになりました〜! 公開前に決まるなんてスゲー。

<9月23日追記>
けんたろうのブログを見たらいてもたってもいられなくなって、散々人に薦めておきながら1人で観に行ってしまいました@シネリーブル池袋。日中はほぼ満席と劇場員は言ってたけどブラフか? と思わせる最終の回7割入り。

2回目につき涙こそこぼれなかったけど逆にたくさん笑顔で観てられたわ。この映画、人の心が動くシーンがたくさんあって、それにつられてこっちの心も揺さぶられます。ダンスシーンでのカメラアングルとカット割りや要所で使うスローモーションは迫力アップに直結。トヨエツの存在は節々でキーになっている。ああもう観どころたくさん、2回目もやっぱり観て良かった!な一作でした。さあみんな劇場へゴーだ!

記事がどんどん長くなっていきます。。w

<9月26日追記。こうなりゃとことん書き続けるぞ!>
メイン館であるシネカノン有楽町は全回満席で、初日の動員記録を打ち立てたそうです!

<10月18日追記>
宮崎あおいは今作での蒼井優の芝居を観て、その圧倒的な存在感に愕然としたそうです。

<07年1月10日追記>
キネ旬の2006年邦画1位に選出! 助演女優賞に蒼井優! 当然の結果ですな。

<07年2月25日追記>
日本アカデミー賞で5冠達成! 名実共に2006年を代表する映画となりました。メデタシメデタシ。

<10年8月21日追記>
久しぶりに自宅鑑賞。何年たっても色褪せないよさだな、こりゃ。人を変えて行くのはやっぱり誰かの情熱。冷静に全体を観ると、少し気持ちを喋りすぎるところもなくはなかったけど、改めて名作だ!
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by april_cinema | 2006-08-17 00:00 | Legend
2006年 03月 21日
感想_crash
b0130850_8104369.gifアカデミー賞作品賞受賞映画『crash』を鑑賞。監督/脚本のポール・ハギスって『ミリオンダラー・ベイビー』の脚本書いた人なんですね。彼的には連続受賞ってことか。スゴイや!
crash

一切の前情報なしで臨んだ今作。いやー、よくできた作品だったなー。ただでさえ群像ものは好きなんだけど、これだけ上手く収まってる作品はそんなにないかと。しかもたっぷり詰め込みながらも2時間切ってるところがまた秀逸。雰囲気は、お気に入りの『マグノリア』に通じるものあり。あれよりももう少し身近かな。

ハイウェイでの事故を物語の入り口に、様々な衝突、軋轢がリアルに描かれる。人種をはじめ、階級、正義、自尊心などなど、日常にあるいろんな境界線上のしがらみたちを突きつけながらも、そこにあるのが悲観や諦観ばかりではないところがグッド。クラッシュは決して避けられない。けど、不幸ばかりを生むものでもない。"透明のマント"のシーンは最高でした。世(つーかアメリカか)の陰と陽を浮き彫りにした完成度の高い傑作かと。

けど問題が一つあって。いかんせん向こうの人種差別問題の実態を知らないだけに、映画の核心が理解できないのよね。。そのへんのアメリカ社会の白と黒を掴んでいればもっともっと深く浸れたのになぁ、と歯がゆい思いをしたりもして。あぁ、無知なボク!
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by april_cinema | 2006-03-21 00:00 | Legend