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2015年 11月 14日
感想_恋人たち
b0130850_22391991.jpg生きていかねば。『恋人たち』11月14日公開。3年前に妻を通り魔に殺された篠塚は、今もやり場のない思いを抱えたまま。一時仕事ができなくなったこともあり、保険料の支払いも滞るほど。しかも、犯人に責任能力がなかったという最悪の判決まで出て、訴訟を起こすこともままならない。死ぬことも、殺すこともできず、篠塚は鬱々とした思いだけを飲み込みながら生きていた。平凡な主婦の瞳子も、同性愛者の弁護士の四ノ宮も、また同じように。
映画『恋人たち』公式サイト | 2015年11月14日(土)公開

橋口亮輔監督待望の新作は、その期待に応える傑作でした。重厚さは伴いながら、それでも生きる理由を示してくれ、いくばくかのユーモアも込められていて。冒頭の篠塚の独白シーンひとつで、この映画の本質が映し出されていた気がしたよ。完全なるリアリティっていうのかな。演技とはとても思えない、生きてる人そのまんまの台詞回し。もうこれでこの映画の世界を完全に構築してたと思ったわ。実際そのトーンは最後まで変わらず、すべての端役にまでちゃんと命が宿ってました。これはフィクションかもしれないけど、リアルそのものだって。だから、140分の長尺を感じさせなかったです。

篠塚の感じる通り、世間はくだらないことばかりだし、どうでもいいことで騒ぎ、おまけにバカばっかりだ。そんな世界で生きる意味がどこにあるんだ。一体なんなんだこれは。そんな気持ち、誰もがどこかで抱えている。どれだけ幸せに暮らしていても、時々その落とし穴は待っている。これは一体何になるんだろう。私はなんのためにここにいるんだろう。篠塚はその一番深い穴に落ちた。彼は何一つ悪くなかったのに。平凡な主婦も、同性愛の弁護士も、それぞれに大きかったり小さかったりする穴にハマる。僕たちのそばに、それはある。

それでも、だけど、僕たちは生きなくちゃいけないんだ。どんな苦しみや幸せが待っていても、そこで立ち止まる事はできなくて。理由なんてないし、意味だってなくていい。夢も別にいらない。ただ、生きなくてはいけない。それだけなのだ。それ以上でも以下でもないんだ。絶望でもないし、陳腐な希望でもない。でも、生きていれば、どこかで何かとつながることができるのも、それもまた本当のことなんだ。お腹いっぱい食べて、誰かと話して、少し笑えたら。篠塚にだって、テレビを観に来いと言ってくれる人がいた。先輩は、腕をなくして、きっと篠塚と同じ穴に落ちていただろうけど、今はこんなにも笑っている。あの東北から流れてきたという男は、震災によって土地を追われたんじゃないかと思う。怪しい準ミスにも何かがあったんだろう。そんな人生は、ぜんぜん楽じゃないけど、でも生きて誰かとつながることって悪くないって思わせてくれました。力強く。とても。

瞳子がふとおしゃれを始めるシーン。明るい音楽と合わせて、突然「ああ、生きないと」って思いまし。僕自身ここのところちょっとリズムが悪くてややふさぎ気味だったのだけど、このシーンで漠然と「頑張って生きないと」って思わされました。なんならちょっと涙ぐみそうなくらいに。そんなシーンじゃなかったかもしれないけど、でもなんかほのかな希望を見たんだよね。結局は彼女もどこに行けたわけじゃない。篠塚も救われたわけではない。四ノ宮だって。でも不思議と、救われたような気がしたんだよな。この感覚は、『その夜の侍』と似た感覚だったな。思いもよらないところで、人は救われる。

篠塚の職場、東京のいくつもの橋のチェックというのは、今の東京のメタファーだったんだろう。50年前に作られたいろいろなものにガタがきて、世の中のいろんなものが崩れかけてしまっている。もちろん、見かけはひび割れてても、中身はしっかりしているものもある。見上げれば高速道路に阻まれて、空は少ししか見えない。少しだけど、でも青空が見えて気持ちが晴れることもある。これこそ今の東京を象徴した絵だったんだろう。ラスト、空を見上げた篠塚の清々しさに、また、少し救われた気がしました。

この話をして『恋人たち』と名付けるセンス。僕は特定の恋人を指しているというよりは、すぐそばにいる"恋しい人たち"というニュアンスな印象を受けました。今年を代表する邦画ですね、間違い無く。
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by april_cinema | 2015-11-14 00:00 | MVP
2015年 09月 11日
感想_キングスマン
b0130850_18292519.jpgスーパークール&ウルトラクレイジー!!! 『キングスマン』9月11日公開。ロンドンの高級テイラーに勤めるハリー。しかし本当の顔はどの国にも属さない世界的最強諜報員集団キングスマンのメンバー。彼は、かつて自分の命を救った元キングスマンの息子・エグジーをスカウトし、エグジーは選考試験に臨む。その頃、IT長者のヴァレンタインは地球保護のための人類滅亡計画を進めていた。はたしてキングスマンはこの計画を止められるのか!?
映画『キングスマン』オフィシャルサイト

『キック・アス』ノリのスーパースパイアクション炸裂! とにかく全方位カッコエエーーーーー! まずは衣装。英国紳士100%のスーツ&メガネ姿でキレまくりのアクションを披露するコリン・ファースが格好いいのは言うまでもなく、くすぶりエグジーの若者ストリートファッションからの、訓練に臨む際のブリットチェックなつなぎとかシャレオツすぎで、そして敵キャラを演じるサミュエルLジャクソンは英国トラッドと対局をいく最先端モードなセレブファッション。もうこれ見てるだけでもお腹いっぱいです。スパイ用の小物たちも傘、靴、メガネとハイパースペックかつ恰好よすぎね。はーほれぼれ。

それ以上に最高なのはアクションのビジュアル全般ね。初っ端の中東からアルゼンチンまでのオープニングは見事すぎるよ。ランスロットも十分格好良かったのにその上をいくガゼル登場の超絶インパクト! オスカー・ピストリウス真っ青。からの、ハリーがエグジーを守るところの映像感覚はたまらなすぎる! エグジーが身体能力生かして自宅から脱出も素敵。さらに教会での大乱闘から、最後はまさかの脳天大爆発連打! あれ、なんか現代アート作品であんなの見たような気がするけど、思わず笑っちゃうほどのスパークっぷり。とにかく動き、映像感覚、そしてそれを数倍効果高める音楽も非の打ち所なしね。R15指定になるくらいには残虐シーンもあるけれど、そこはあえての非現実的ご愛嬌。あんまり真に受けずに笑って流しちゃうのが正解ですな。

「マナーが人を作る」ほか、名言もじゃじゃ漏れだし、キャストがみんな格好いいし、この興奮はもう止められません! 130分弱、スクリーンかぶりつき確実。さすがはマシュー・ヴォーン監督というしかないっすわ。合間に挟んだイギリス流のインテリジョークもたまらないし、ラストのスウェーデン王妃のエロテロリストっぷりも完璧でしたわ。あとから知ったけど、これもコミック原作なんだね。続編絶対やるだろうと思ったら、やっぱりやるみたいで、日本も舞台になるとかなんとか。それは楽しみすぎるじゃないの。

これは数あるスパイ映画の中でも金字塔レベルでは。いやはや格好良すぎてたまりません。クロエ・モレッツはいないけど、タロン・エガートン君がいる! 今年のベスト10入り確実、必見の1本です。
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by april_cinema | 2015-09-11 00:00 | MVP
2015年 04月 17日
感想_セッション
b0130850_19225236.gif9分間のドラムマスター!!! 『セッション』4月17日公開。音楽名門校1年のドラム奏者、ニーマン。偉大な音楽家を夢見る彼に声をかけてきたのは、校内の評判も高い教師フレッチャー。しかしそれは地獄の始まりだった。フレッチャーの練習に参加したニーマンは、恐怖でクラスを支配するフレッチャーと、その異常なまでに緊張感を目の当たりにし、衝撃を受ける。差別用語まじりにバンドを罵倒し続けるフレッチャーに認められるべく、ニーマンは取り憑かれたようにドラムを叩き続ける。その先に待っていたのは、狂気の世界だった。
映画『セッション』公式サイト

アカデミー賞を騒がせ、鬼教師役のJKシモンズが助演男優賞を受賞。その中身は、強烈に魂を削り合い罵り合いぶつけ合う、ジャズ界のリトルスターウォーズ! 最初は音楽版スポ根くらいに見ていたけどとんでもない。完全にそこは戦場だったよ。フレッチャーが見ているのはただただ最高の高みで、そのためにはいかなる手段も辞さず、そして一切の妥協や甘えを許さない。今の時代、絶対に許されないほどの強烈すぎるやり方が半端じゃないぜ。でもニーマンもただの甘ちゃんじゃなく、真っ向からその勝負に挑み続けるからすごい。そして心を失くしていくのはまさに戦地帰りの兵士と同じ。もはや彼の生きる場所は戦場しかないという。。

シモンズの怪演は確かに半端じゃなかったよ。完全に鬼軍曹つーか、鬼神と化してました。ただでさえ顔が怖いうえになんかマッチョだったし、黒のピタTがハマりすぎ。動きのすべてに怒りのようなものがにじんでいて、指先からも視線からもそれをほとばしらせていたわ。でも、主演のマイルズ・テラー君だって負けちゃいなかったよ。ジョン・キューザックに似てると思いつつ、優男のようでありながら文字通り血を流しながら叩き続ける姿。フレッチャーと渡り合う目つき。ドラムは初心者だったそうだけど、よくここまで叩けたなー! もちろん音はあててるんだろうけど、鬼気迫る感じも、病的な感じも伝わったわ。学生らしい高揚感や、恋人への横柄な態度もすべてよかった。

それらを煽り続ける映像もお見事。冒頭から緊張感フルマックスで、ドラムソロ、バンドシーン、そしてフレッチャーの独壇場を、巧みなカット割りで魅せる魅せる。一秒もだれることないそのストーリーテリング能力すごいわ。監督、若干28歳とは恐れ入る。デイミアン・チャゼルの名前を覚えておこう。ついでにニーマンの彼女役のメリッサ・ブノワちゃんもかわいこちゃんだったから覚えておかないとな。

で、中盤以降の展開もぶっ飛びですが、それすらも軽々飛び越えちゃう驚愕のラスト。『4分間のピアニスト』を時間的にも内容的にも超えちまったスーパープレイ!!! 史上最高のドラムソロであり、セッションでした。頭ん中でドラムビートが鳴り止まないよ!!

異常なまでの緊張感、卓越した演技とシナリオ、そして高みに上るためならどこまでが許されるのか。倫理や道徳を超えた、神の領域を目指す人間の所業、今年ベスト級の完璧な作品でした!

<追記>
なにやら論争が起きてるってヤフートップに出てて、菊地成孔さんと町山さんのブログを読んで、おかしなことになってるなーと。でも菊地さんの意見はわりと納得のいく専門家の意見という気がしたわ。そしてこれを読んで、フレッチャーは確かにただのイカれたおっさんだったと気づいたわ。最後の騙し討ちとかひどい話だしね。町山さんのフォローはそれに比べるとちょっと弱かったなーと思いつつ、でもとりあえずすげー面白かったことだけは保証しますよ。今年必見の1本!
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by april_cinema | 2015-04-17 00:00 | MVP
2015年 03月 13日
感想_イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密
b0130850_19102926.gif解けないのは暗号よりも人の心。『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』3月13日公開。第二次大戦下、ドイツ軍の進撃を止めるため、彼らの使う暗号を読み解くチームが結成される。そこに加わったひとりがアラン・チューリング。天才数学者であるアランは変わり者ゆえにチーム内で疎まれながらも、暗号解析のためのマシン"クリストファー"作りを進める。しかし、思うような成果があがらず、チーム解散の危機が迫る。極秘で進められたその計画と、アランが抱えた秘密に迫る、事実に基づいた物語。
<公式>映画『イミテーション・ゲーム / エニグマと天才数学者の秘密』オフィシャルサイト|3月13日(金)ロードショー

抑えめのストーリーテリングながら、それは抑制の効いた実に理性的で美しいシナリオ! タイトル、テーマにふさわしい知的ゲームのような作品でした。すごく面白かった! でもこれは、単なるエンターテインメントではありません。話の主軸は、ドイツ軍の暗号「エニグマ」を読み解くことにありながら、それを紡ぐテーマは秘密と嘘。暗号解き、スパイ活動など国家レベルの秘密から、組織の決まりごとや恋の駆け引きといったパーソナルな嘘まで含めた、人間の心理の読み解けない複雑さこそが主題として横たわってました。これはなんとも素敵な伏線いっぱいストーリー!

例えばアランは、決定的な秘密をひとつ抱えている。妻となる女性にその事実を隠し、そして真実を告げながら彼はもうひとつ別の嘘をつく。でも、彼女はきっとそれにも気づいていたよね。だけど受け入れたんだよね。それはマシンには導き出せないなんとも人間的な答え。学生時代のアランが負った傷もまた、人間心理の複雑さを示す。秘めた愛情と、最愛の人に打ち明けてもらえなかった秘密。それは彼の人格にどんな影響を与えただろう。心を閉ざしただろうか。嘘はつかないと誓わせただろうか(だから彼は冗談を言えなくなった)。でも、あのときにはわからなかったことを、アランはこの仕事の中で知っただろう。人は、良かれと思って嘘をつくことが、少なからずあるということを。

アカデミー賞候補にもなった、ベネディクト・カンバーバッチ、さすがのいい仕事。こういうキレ者、カワリ者はお手の物だろうね。コリン・ファースの次は彼と言う感じがすごくします。ヒュー役の彼もイケメンだったし、妻となる人を演じたキーラもよかったね。『はじまりのうた』のナチュラル美人もよかったけど、こういうクラシカルなお転婆ギャルもいけちゃうんだね。顔は美人なような怖いようなって気がしちゃうけど。どの作品でもキレるキーラの顔が忘れられなくて怖いぜ。

しかしこれが実話であり、国家機密としてつい最近まで伏せられてたり(この事実もまた映画のテーマとリンクする)、世の中には知らないこと、知らないほうがいいことがゴマンとあるわけですな。特定秘密法案について、ふと思ったりもしちゃったり。なんにしても、これだけの骨太で親密なテーマを織り込みながら、3つの時代を織り交ぜて編み込んだプロットはお見事というほかないかと。大興奮するタイプの映画じゃないけど、ものすごく精巧な傑作のひとつだと思います!
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by april_cinema | 2015-03-13 00:00 | MVP
2015年 02月 20日
感想_きっと、星のせいじゃない。
b0130850_11131357.gif超絶胸に、しみた。『きっと、星のせいじゃない。』2月20日公開。ガンに冒されながら、抗がん剤治療の効果で普通の日常を過ごせているヘイゼル。酸素ボンベは片時も手放せないけれど。で、両親の指示でしぶしぶいったサポートの会で出会ったのは、骨肉種で右足を切断しながらも明るくユーモアいっぱいのガス。ふたりはすぐに意気投合。ヘイゼルはお気に入りの小説をガスに貸すと、気に入ったガスはオランダに暮らす作者に感想をメール。すると、返事がかえってきた。ふたりはさらに距離を縮めるが…。
映画「きっと、星のせいじゃない。」公式サイト

ああ、とても胸に迫るもののある、良い映画でした。本当に良い映画と胸を張って言える。ガンと戦うふたりのティーンの恋物語、にも見えるし、確かにそういう入口だけど、それ以上の感動をくれる物語。永遠とか無限とか、そういうものが存在することを、これだけ説得力を持って描いてみせたこの監督、新鋭らしいけど素晴らしい仕事だと思います。

前半はとにかく、ガスのイケメンぶりが際立ち、ヘイゼルのタフガールっぷりも好感度大。くすぐったくも親気分で見守りつつ、後半、オランダ行から少しずつこの映画の意味が頭をもたげてくる。ろくでなしだったピーター・ヴァン・ホーヘンが口にした、大小の無限とはなにか。それが頭に残りながら見守り、そこに解を与える"生前葬"はかなりグッときたなー。いつも僕たちは、大きな無限のことばかり考えてしまう。100の、1000の、10000の、ミリオンの、億万のもっと先を。でも無限はそれだけじゃない。ゼロと、イチの間にも無限は確かに存在するのだった。亀の競争の話も、まさにこれ。ピーターが示唆したのは、未来ではなく目の前の無限を見ろということだった。それに、気づく聡明なヘイゼルよ!

最後の結末は厳しいけれど、でもその展開もまた永遠を信じさせるに足るもの。再び現れたピーターが口にしかけた「トロッコ問題」ってなんだろ?ってあとからウィキってしまいました。あの場で彼が何を語ろうとしたのかは知りえないけれど、自分を責めるなと言いたかったのかな。それとも、すべての人を救うことはできないということなのかな。それもまたメタファーなんだろうな。思えば、ガスの登場から、この物語はメタファーに埋め尽くされていたのかもしれない。ガスのたばこ、アンネの家。それは、希望の。忍耐の。生と死の。無限の。永遠の。

アムステルダムの光景はベタに美しかったし、シャイリーン・ウッドリーンちゃん、カワイイとはあまり思わないけどすばらしい演技でした。それよりもガスを演じた彼にぞっこんラブになっちゃったけどね。ウィレム・デフォーのろくでなしっぷりもものすごく格好よかったわ。パジャマからスーツへの華麗なる転身もね。あーあと、サングラスの友人の彼もすっごいよかったなー。卵投げたいーーーー!

涙が落ちるような強い衝動はなかったけど、反芻すればするほど胸に沁みて広がる感動があります。タイトルとメインビジュアルがチープにも見えるけど、本格的なヒューマンドラマ。安易な難病ものと侮るなかれ。『17歳のエンディングノート』『永遠の僕たち』に勝る、『私の中のあなた』に匹敵する1本だと思います。
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by april_cinema | 2015-02-20 00:00 | MVP
2015年 02月 07日
感想_はじまりのうた
b0130850_225658100.gif踊り出さずにいられない! 『はじまりのうた』2月7日公開。ミュージシャンの恋人デイヴとともにNYへとやってきたソングライターのグレタ。しかしデイヴに裏切られ、激しく傷つく。そんな彼女が出会ったのが、ダンという中年男。ダンはグレタの歌に惚れ込み、自分と契約を結ぶよう迫る。彼は、かつての敏腕音楽プロデューサーだったが、今は妻子と別居し、会社からも追われたところだった。
映画『はじまりのうた』公式サイト || 2.7 sat. シネクイント、新宿ピカデリーほか全国Roadshow

うおおおお、これはものすごくよかったぞおおおおおおお!!! 中盤から、ずっと踊りだしたい衝動に突き動かされるほどに音楽に入り込んでしまったよ。少なくとも足はリズムに乗って動き出しちゃいました! 監督は『ONCE ダブリンの街角で』のジョン・カーニー。僕は『ONCE』はそこまでハマらなかったんだけど、この作品はもう最強です。何がいいって、音楽がちゃんとドラマを語っているところ。ただ曲がいいとか、ライブが熱いとかではなく、映画としてストーリーを奏でる媒介として音楽がこれ以上なく機能しているんだよね。

そして、それをいっそう輝かせるのがアイ・ラブ・ニューヨークシティ! なんと劇中でゲリラレコーディングを敢行するのだけど、それがむちゃくちゃ格好いいのよ! セントラルパークとかエンパイアステートビルを望むビルの屋上とか、ベタベタなところもあれば、地下鉄のホームに名もなき路地裏もあり、しかも喧騒も雑踏も邪魔する子供たちもすべて音楽に取り入れてしまっているところが最高クール! あと踊っちゃダメだぜゲームとかも最高だったし、お互いのプレイリストを聞きっこするのも、もんのすごくよかったよねー!!!

さらにさらに、アルバム作りに参加するメンツもいいんだわ。音楽院(きっとジュリアード)で退屈する姉と弟(ぼくはこのメガネガールの"ファッ⚫︎ンビバルディ"がとても気に入りましたよ。シャノン・マリー・ウォルシュちゃん、売れろ!)、子供バレエ教室で伴奏を担当する男子、ギャングスタなラッパー(こいつが超いいやつ。リスペクトを忘れない男!)に紹介してもらったベースとドラム、人種も育ちもバラバラ、普段接している音楽も違う、だけど同じアルバム作りに参加できてしまうというのが、いかにもNYであり音楽のチカラ! 格好良すぎるぜ。しかも微妙な時制ずらしがハマってるし、マジで最高。イエス、るつぼ!

失恋女と甲斐性なし男の組み合わせなんて安っぽくも聞こえるけれど、ノンノンこれが素晴らしいパートナーになっていくのだな。何度もくっつくかと思わせながらもそっちにはいかないのも理性が利いてていいわ。そしてキーラは歌声披露しつつ、大人キュートな魅力を振りまくし、マーク・ラファロのこの味わい深い格好よさはなんて名付けたらいいの?って感じ。大きくなったヘイリー・スタインフェルドちゃんも美形じゃないけどよかったね。音楽が家族の絆を復活させちゃうってのも素敵じゃないのーーーー!

とまあ、数え上げたらきりがないほど素敵のてんこもり。ラストのまとめ方も超秀逸でグッときたな〜。俺も買いたいよあのアルバム! 最後になりましたけど、マルーン5のアダム君のハイトーンボーカル、さすがだわー。もちサントラ即ゲット。いやーこれは何度でも見たい傑作! 早くも年間ベスト10入りは確実(ベスト5もいけると思う)。みんな見て、見て、見てーーー!
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by april_cinema | 2015-02-07 00:00 | MVP
2014年 12月 12日
感想_ゴーン・ガール
b0130850_23253196.gif今年最後にすごいのキター! 『ゴーン・ガール』12月12日公開。5回目の結婚記念日の朝、散歩から家に戻ると妻のエイミーが消えていた。室内には乱れた跡があり、ニックはすぐに警察に電話する。失踪したエイミーを探すため情報提供を呼びかけるニック。しかし、状況は少しずつ思わぬ方向へ。調べれば調べるほど、ニックこそがエイミー失踪の黒幕だと指し示すのだった。エイミーはニックが殺したのか。それとも。
映画『ゴーン・ガール』オフィシャルサイト

デヴィッド・フィンチャー最新作、これはヤバ面白かったー! これはネタバレ仕方ないから言っちゃうけど、エイミーがヤバすぎるよ〜〜〜! なんなのあの完璧主義。そして理想を突き詰め、手段を選ばず、たいそうなことしでかしたのに、しゃーしゃーと現れちゃうしたたかさ。女ってこうなの? てか夫婦って何なの? なんて真面目に考えちゃいけないですね。とにもかくにも最大級にクレイジー! あまりにぶっ飛びすぎて途中笑えてくるほどのサイコサスペンス。ぜひお楽しみいただきたい!

見せ方も素晴らしかったね。時系列と見せかけつつ、エイミーとニックの慣れそめを挿入し、失踪前後に何があったのが徐々に明らかになっていく。でも、途中まではわからないのですよ。本当はニックなのか? いや、やっぱり違うのか? だとしたらエイミー何者??って感じでね。そのあたりの整理と見せ方、さすがですね。2時間強だけどまったく退屈しないもの。なんでもこれ原作があって、だいたい原作通りらしいので映画オリジナルな部分や演出がどうだったのかは比較してみないとわからないのだけれど。

ベン・アフレックの追い詰められてく感じはよかったし、エイミー役のロザムンド・パイク、あのいけすかない感じはたまらないねー! 人を見下し、罪も嘘も自分のためにはなんともおもわず、だけどすべてが思い通りにはならなくて。なによりの犠牲者はあの同級生だけどね。濡れ衣着せられて死に損すぎる!!! しかし、情報に流される大衆と、無責任な報道とか、いろいろ細かいところにも語る要素ありますな。気持ちのいい映画じゃないけど、誰もがニヤっとしてしまうでしょう。ぜひ、カップル、ご夫婦でご覧あれ〜!
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by april_cinema | 2014-12-12 00:00 | MVP
2014年 11月 22日
感想_インターステラー
b0130850_2334391.gif映画5本分の知恵熱! 『インターステラー』11月22日公開。近未来の地球は、異常気象と食料危機に見舞われていた。このままではやがて植物も枯れ、酸素がなくなり、人類は窒息死という運命を迎える日も遠くない。そんなとき、元宇宙飛行士のクーパーは、ひょんなことから極秘裏に活動を続けていたNASAの基地を発見する。彼らは人類を救うための宇宙探索を続けていたのだった。
映画『インターステラー』オフィシャルサイト

待望のノーランの新作は宇宙SF! しかしこれ想像の斜め上どころか異次元の中を行く超絶SFだったわ…。とにかく銀河系の彼方に生命維持できる環境を探すというミッションに対する科学的アプローチがすごいのね。未来の設定だから、現在では不可能なことも可能になっているとはいえ、理論上の仮説がちゃんと積み上げられてる。のかどうか、素人のボンクラ脳ではついていけないレベルの会話でしたわ(実際最先端の理論に忠実で科学者の評価も高いそう)。土星の近くにあるワームホールに飛び込んでうんたらかんたらで、ブラックホール内の量子データが必要で、重力は次元を超えて、時間は後には戻ることはないけれど、ホニャラララララ。このあたり、まったくついていけませんでした。宇宙船デザインはそんなにドラスティックじゃないけど、ロボットはむちゃくちゃレベル高いし(ちょっとモノリス風味)、みずからをコールドスリープさせる技術も確立してるし。確実に『2001年宇宙の旅』は意識していると思われますが、SFものとしての評価、どうなんだろう(高いみたいです)。

さて。しかしこの設定のすさまじさも映画の輪郭でしかなくて、なによりもそこに縦にも横にも何重にも織り込んだドラマとエンターテインメントはやっぱりすごかった。序盤、荒廃した近未来を描きつつ、巧みな伏線張り。上手なのは、簡単にフラグとはわからないように布石を打つところだよね。冒頭のテレビの映像も、本棚からのメッセージも、時計の存在も。娘っ子マーフがアン・ハサウェイに似てて驚いたけど、インド軍の飛行機追跡とかも迫力あったし、なにげにあれがクライマックス前の放火シーンとつながってる感じなのかしらね。

役者たちも総力戦。主演のマシューは、完全にいい感じのイケメンオヤジ路線に復活し、今回も子供への愛情あふれ熱意とユーモアにも満ちたヒーローを体現。アンハサウェイも、クールだけど人間くささを持ち合わせたヒロインに。マット・デイモンはまさかの超悪役で登場したかと思えば、成人したマーフはジェシカ・チャスティン! 非の打ち所ありません。さすがノーラン。ノーラン組常連のマイケル・ケインもいい役どころですー。

宇宙空間での活動は控えめながら、どこかの惑星ということになっているスーパー津波は圧巻だわ、Dr.マンのいた氷の惑星もすごかったな。あれ、アイスランドなのか。あんなところが地球にあるんだな、というのも感動。いやしかし、この話どうやって着地させんのかと思ったら、5次元世界でタイムトラベルまで絡んできてのスーパーミラクルな展開。あまりにできすぎてて、並のディレクションだったら興ざめもいいところだけど、布石がしっかりしているのと、ドラマがちゃんと盛り込まれてるのと、着地があざとすぎないことで感動レベルに持っていくという神業。ちゃんとアン・ハサウェイも回収したしねー(ずいぶん住み良さそうな星だったけれど)。

いやしかし、SFでありタイムトラベルであり家族愛でありディザスターでありミステリであり、といった感じの1本で5度くらいおいしいスペシャルな逸品。本当に知恵熱出るので、両手あげてオモシロイデスオススメデス!と言えないけど、すごかったとだけは言えましょう。この人、記憶とか次元とか、そういうところにすごく興味があるんだね。この先どんな映画撮るんだろう。常人には理解の届かないところまで行ってしまいそうだぜ。(別記事読んだら、ノーランはケータイばっかり見てる人々に「空を見なよ」ってメッセージを届けたくて作ったんだって。それにしちゃスケールでかすぎるって)

ただひとつだけ。クーパー&マーフにNASAの座標を教えたのが未来のクーパーってのはタイムパラドックスを突破できなくないですかね。まあいんだけど、そんなことはさ。

<2015/05/19追記>
iTunesでレンタルして2度目鑑賞。もうさ、冒頭30分の入り方が神業すぎてほんと死にそう。この語り口の素晴らしさ、比類ないと思うわ。宇宙に入ってからは比較的落ち着くと思うのだけど、でもまったく飽きさせない3時間弱。やっぱり面白かったです。

が、結局初見と同じところが同じようにわかんなかったわ。重力のこと、ブラックホールのこと、相対性理論のこと、そして五次元世界のこと。で、おんなじようにタイムパラドックスはどうなってるんだろう?ってところを突き詰めることなくフィニッシュ。まったく次はいったい何を撮るんでしょうね、このスーパー天才監督は。

てかタイムパラドックスなんて別にないのか? 同じ時間軸だけど、クーパーにはものすごい時差が生じてすごい先の時代に一度行って、そこから地球にアクセスして、重力の謎が解けてマーフがすごいものを開発して、クーパーも自分たちも救ったってことか…? やっぱわかんね。なのにスゲーおもしろい。これって異常だよね。
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by april_cinema | 2014-11-22 00:00 | MVP
2014年 11月 14日
感想_6歳のボクが、大人になるまで。
b0130850_2047886.gifこれはすごい傑作。『6歳のボクが、大人になるまで。』11月14日公開。メイソンは、大学に戻ることを決めた母に連れられてヒューストンへ引っ越し。離婚してアラスカにいっていた父はたまに会うといつも楽しい話をしてくれる。それからしばらくして、母は再婚を決めた。相手の連れ子ともうまくやっていたけど、その男は母に暴力を振るった。歳を重ね、メイソンは高校生になっていた。初めての恋はうまくいかなかったけれど、写真家になるという夢を見つけた。そんな、メイソンの12年間の日々。
映画『6才のボクが、大人になるまで。』 大ヒット上映中

前評判が激高かったけれど、それも超納得の素晴らしく豊な映画だったな。基本的には、メイソンの12年間を淡々と描くのみ。いろんな出来事は起こるけれど、それは誰にでも起こりそうなもので、特別にドラマティックなものではない。だけど、全然退屈はしない。むしろ、自分の青春時代を重ねてしまうような向きがある。それがリアリズムによるのか、演出によるのかわからないけれど、ひとつ言えるのはウィットに富んだ脚本と、それを自分のものにしている役者たちの力量にあると思う。

監督は、『ビフォア・サンライズ』シリーズのあの人で、今作もまあ会話の多いこと。でもそれがリアリティの源泉であり、その積み重ねがそのまま月日となって、描かれない時間も浮かび上がらせる。それからもうひとつ、最もすごいのは12年間をまったく同じキャストで撮り続けたということ。メイソン役の少年は実際に6歳の頃に撮影が始まり、12年の成長がそのままフィルムに焼き付けられている。もちろん家族も全員同じキャスト。父はイーサン・ホーク。姉は監督のお嬢さん。髪型も変わるし、メイソンはあどけない子供からすっかり大人になる。イケメンになっていたのも奇跡的だと思う。マイケル・ウィンターボトムの『いとしきエヴリデイ』も、同じことを4年間やってたと思うけど、その3倍だし、内容がはるかにこちらのほうがよかった。

最後のひとことに、この映画の12年間のすべてが集約されている。「大切な瞬間は、いつもそばにある」。『アバウト・タイム』も同じことを表現してたと思うけど、これは本当に真理中の真理で、それをこんなにも長い時間をかけて表現したということに敬意を表するし、思い返せば返すほどに感動がふつふつとこみ上げてくるんだよな。

撮影は、1年ごとにスタッフキャストが集合して、その1年で起きたことなんかを話し合い、それを反映させながら脚本に落としていったのだそう。メイソンが写真に興味を持ったのも本当のこと。父がビートルズのアルバムを作ってプレゼントしてくれたエピソードも本当のことだそう。フィクションと現実の境界をそうやってなくしていくことで、この映画のリアリティは生み出されている。メイソン役の彼はとんでもない経験をしたわけだし、彼の人生は大きく変わったとも言えるし、それが彼の人生だったとも言える。そしてその映画になった人生を僕たちが俯瞰して、みずからの人生をかえりみたりしている。なんて奇妙な、だけど豊な関係なんだろう。『ビフォア・ミッドナイト』のときも思ったけど、また12年後、メイソンの人生を見たいな、なんて思っちゃうよ。

人生ってやっぱり不思議で愛おしい。それを思い出させてくれる傑作と、また1本出会えたことに心から感謝します。派手さはないけれど、多くの人の心をとらえる作品なんじゃないかと思います。
(原題は「BOYHOOD」。邦題だけはなんとかしてほしかったな)
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by april_cinema | 2014-11-14 00:00 | MVP
2014年 09月 27日
感想_アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜
b0130850_20191184.gifタイムトラベルもののベスト級! 『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』9月27日公開。21歳になったティムは、父から重大な秘密を告げられる。それは、一族の男子にはタイムトラベルの能力が備わっているということ。後の妻となるメアリーとの出会い、妹のキットカットの事故、そして最愛の父の死、すべてをタイムトラベルでやり直しながらティムが見つけたのは、なによりもかけがえのない普通の1日だった。
2014年9月27日公開 アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜

大好き好き好きリチャード・カーティスの最新作は、これまた絶品もの〜! タイムトラベルものは数あれど、その中でもベスト級の1本と言って過言ではないっ! 『バックトゥザフューチャー』に次ぐといっても過言ではないっっ!! てくらいに気に入った〜。本当に何を撮っても巧いよな〜。キレイにまとめるよな〜。後から振り返ると、やっぱりタイムトラベル関連でツッコミがないわけじゃないけど、そんなのまったく気にならないんですよ、この映画を観ている2時間の間はさ。

タイムトラベルとしてもさほど珍しいわけではなく、そして真ん中にあるかけがえのない日々や家族というテーマに関しても、さんざん描かれてきた直球のテーマ。だけどだけど、すごく良かったんだわ〜。冒頭のキャラやタイムスリップのルールの説明は最小限で理解させ、前半はメアリーとの出会いを楽しくラブコメ的に展開。強引すぎる出会いに、初Hのドタバタに、日々を表す地下鉄に、両親との面会に、嵐の結婚式と、すごくよかったな〜。特に結婚式は多幸感をあんな風に演出するの初めて観たよ。素敵過ぎる。そして後半は少しずつ質量を増していく。大切な妹を守ること。愛する妻子との未来。そして尊敬すべき父との別れ。エゴイスティックにタイムトラベルするようなシーンもありながらも、徐々にティムが人生に大切なものを見つけていって、そして最後の「every single dayこそが奇跡的にかけがえのないものである」ことに気付くくだりは、泣きこそしないけどじわわ〜んと胸を熱くするね。隣にいる人を抱きしめたくさせるような感じ。ああ、胸が静かにいっぱいになるなぁ!

主演のドーナル・グリーソン君、イケメンとは違うけどいい感じのスマートさで好感持てたし、レイチェル・マクアダムスは安定のラブコメヒロインぷりを発揮。ティーザーが彼女中心かつ雨のシーンなのは『君に読む物語』意識? そして鍵を握る父親役のビル・ナイも素晴らしかったよね。普通のお父さんだけど、家族を愛し、父として息子に大切なものを伝える姿がよかったなー! あと伯父さんもよかった。妹のネコっぽいキャラもかなり好きだった。あと、シャーロット役のグラマー彼女は『ウルフ・オブ・ウォールストリート』の彼女でしたか。どっかで観たことあると思ったけど。

なんか、リチャード・カーティスがこれで監督引退とかなんとか言ってるらしいけど、絶対大反対! もっともっと撮ってほしいです。てことで今年のベスト5に入る1本であり、この秋の大本命!
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by april_cinema | 2014-09-27 00:00 | MVP