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2015年 03月 28日
感想_カフェ・ド・フロール
b0130850_11164110.gifトリッキーにして巧み! 『カフェ・ド・フロール』3月28日公開。2年前に、妻キャロルと別れたアントワーヌ。若くして結婚し、2人の娘をもうけた彼らはお互いこそ運命の相手だと信じていたが、アントワーヌはローズという女性に運命的に惹かれてしまったのだった。アントワーヌとローズは順調に愛をはぐくむが、キャロルはまだアントワーヌを忘れられず、いつも同じ夢にうなされる。その夢には、1969年パリ、シングルマザーとダウン症の息子が出てくるのだった。
映画『カフェ・ド・フロール』公式サイト

僕の2014ベストだった『ダラス・バイヤーズ・クラブ』のジャン・マルク=ヴァレ監督の、2013年の作品が公開と聞いて、これはきっといい作品に違いないと飛びついたら、やっぱりいい作品だった! 最初は、現在と1969年の物語がどう交差するのかちょっとわからず、少しトリッキーなシャフリングもあって混乱したんだけど、いやいやどうしてそれは見事に回収されるのでした。これはシネフィルの方々はぜひチェックしたほうがいい佳作!

人物相関でいえば、浮気して妻を捨てた男と、それに傷ついた女の話だから、悪いのはアントワーヌとローズだろうって話なんだけど、ことはそんなに単純じゃない。運命のソウルメイトは存在するのか。それに対して抗うことはできるのか。普通の人が撮ったらこれ、ほんと凡庸でどうでもいい話になりそうなのに、そうはさせなかったのすごいわ。アントワーヌとキャロルの相性が抜群だったことをさりげなく印象付けながら、でもローズとの関係も単なる出来心ではないことを明示する。彼らの出会いはあまりにも運命的ゆえに皮肉でもあり、三角関係をものすごく複雑に見せる。キャロルの苦悩はいかばかりか。悪夢を見るのも仕方ない。

そしてその悪夢世界もまたすごい。これは現実に起きたことなのか、あくまで夢の中なのか。オカルトの領域だけど、それをメインのお話と完璧に融合させててしてやられたわ。シングルマザーのジャクリーヌが育てるダウン症の息子ローラン。そしてローランと異常なまでの結びつきを見せる同じダウン症を持つ少女ヴェラ。微笑ましい子供達のお遊びだったはずが、やがてジャクリーヌを困惑させ、そしてそれはキャロルに思いもよらない真実をつきつけるという。ラストは、悲劇になるかと一瞬身構えたけど、お見事な着地でした。ホ。

本当のところはわからない。アントワーヌとローズの未来がどうなっているかも、生まれ変わりが起こりうるのかも、ソウルメイトが存在するのかどうかも。あとを引く余韻もすごいわ。2時間の長さを感じさせず、この時点で『DBC』の成功は約束されてたんだね。新作の『Wild』(夏公開予定?)も超〜楽しみ!
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by april_cinema | 2015-03-28 00:00 | All-Star
2015年 03月 21日
感想_陽だまりハウスでマラソンを
b0130850_11161446.gifかなり惜しい! 『陽だまりハウスでマラソンを』3月21日公開。メルボリン五輪男子マラソンの金メダリスト、パウル・アヴァホフ。すっかり年老いた彼は、ガンを患う妻とともに介護施設に入居するが、高齢者へのリスペクトが感じられない施設の居心地の悪さに耐えかね、マラソンを再開させることを決意。しかもベルリンマラソンに出場するとまで宣言する。周囲は呆れるが、彼の闘志は陰鬱だった施設に影響を与え始め…。
陽だまりハウスでマラソンを公式サイト

マラソンが題材になる作品がちょいちょい出てくるけど、ランナーとして観ずにはいられませんな。お話としては、まあまあよくある感じね。老人が一念発起し、トラブルに見舞われながらも最後まで諦めない、と。この作品はそこに老人介護施設の問題を織り交ぜながら、マラソンをフックにして人生を最後まで諦めないというメッセージをあたたかく届けてくれる。あと、密かにメルボルンオリンピックは敗戦処理に沈むドイツの希望だったという時代背景に、歴史問題もさりげなく織り込んでいる。そしてハイライトは夫婦愛。どれだけ歳を重ねても寄り添い合う相手がいる素晴らしさも描いています。

ホームのキャラが、頑固ジジイあり、皮肉屋マダムあり、うっかりおばあちゃんあり、わけあり応援者あり、とステレオタイプだけど味があっていい感じ。対比される若者スタッフたちは、田舎町で、死と隣り合わせでくすぶっている感じが今っぽいとも言えるのかな。ミュラーさんがアメリのポスターとか貼っちゃって、飛び出したい願望をわかりやすくアピールしてるのは笑ってしまったわ。

さて、ベタな展開ではあるものの、やっぱり愚直に走り続ける姿には心動かされるもので、徐々に再生していくアヴァホフを応援せざるをえない! 日本にも、諦めたらそこで試合終了ですよ、という名言がありますが、まさしくそれと同じ。テレビ出演で人生はマラソンであると答えるアヴァホフ、それも散々言い尽くされていることではあるけどやっぱり泡立つものがあります。これはもう普遍の価値観なのだ。

だがしかし! クライマックスのベルリンマラソンがいかんぜよ。伝説のランナーで、テレビに出て時の人である英雄が、この歳でフルマラソン完走です。これはもう、ものすごいインパクトなはずなのに、その高揚感を出せてないのはランナーとしてはかなり物足りなかったわ。あの姿を見たら絶対に声を枯らして応援するはずだけど、沿道のスタッフもずいぶん冷めた目線。スタジアムに帰ってきたら絶対スタンディングオベーションなはずなのに、普通に座って拍手だけ。これじゃいかんよ。アヴァホフの内側を見せたかったのかもしれないけど、これはもったいなかったな。最後に盛り下がってしまいましたわ。

後から知ったところ、これ2012年の実際のベルリンマラソンで撮影したそうで、その制約があっちゃしょうがないか。沿道のスタッフもスタンドの観客も、俳優が演技で走ってるとなると、特に興奮もしないもんな。てか実際に42km走ってないってことだもんね。あと、一般の人がカメラに映って手を振ったりされても困るとか、そういうこともあったみたい。エキストラも自由に使えないだろうしね。大人の事情はよくわかるけど、それでも残念は残念。ちなみに主演のハラーフォルデンさんは大御所俳優で、この撮影のためにマラソンを始めたんだってさ。そしてドイツの映画祭で史上最高齢の主演男優賞に輝いたとか。まさに映画を地でいく感じですね。ぜひフルマラソン完走の体験を味わってほしい!(味わってなければ)

ちなみに、パウル・アヴァホフって実在するのかしら?と思ったらしませんでした。メルボルン五輪の男子マラソン金メダリストは、フランスのアラン・ミムンさんでした。なーんだって言っちゃいけないけど。ランナーゆえに厳しい目で見てしまった部分もあるけど、全体は爽やかな感動エンターテインメント。元気をくれる1本です。よし、走りにいくかー!
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by april_cinema | 2015-03-21 00:00 | Starter
2015年 03月 14日
感想_ディオールと私
b0130850_11154889.gifホワイトデーにはディオールを(無理だろ)。 『ディオールと私』3月14日公開。2012年、ディオールのデザイナーとして迎えられたのは、ラフ・シモンズ。そのニュースは驚きとともに迎えられた。初めてのオートクチュールで、初めてのコレクションまでの、ラフを巡る8週間に迫る。
映画「ディオールと私」公式サイト

ラフ・シモンズの顔初めて見たけど、インテリな感じでデザイナーっていうよりIT企業のCEOみたいだったな。もちろん着てるものはすごいオシャレだったけどね。ってことで、面白かった! あんまり深いところまでは入ってなかったからお仕事エンタメ的に観れたところあるかもしれない。

まず、ラフが王様すぎて笑えたわ。アート作品見てインスパイアされたら、この絵と同じ柄の生地作って! だし、フィッティングしてジャケットがほしくなったら、明日までに作って! だし、コレクション会場の壁が気に入らなかったら、全部生花で埋め尽くして! だし。ビッグメゾンのディレクターってこんな感じなのか!? でもそのSっぷりがカリスマ感じさせてよかったねー。ショーの前日にアトリエのみんなにお花と手紙を贈っちゃったりもしてね。ただ、やっぱり仕事は素晴らしいんだろうね。言うだけのことはある、って感じ。自分もこういう不言実行的なリーダーでありたいと思いました。

そしてアトリエの職人たちがナイスな感じ。もうちょっとキャラや仕事内容が知りたかったけど、みんな誇り高くディオールを愛していらっしゃるのね。ディオールと私の「私」はラフだけではなく、スタッフ全員をさしているんだと思うわ。ラフのパートナーがゲイの男子ってのもわかりやすくてなんかいいね。ラフ自身がどうなのかはわからなかったけど。

コレクションはもちろん大成功。壁一面の生花はすごかったし、ちょっとしか見れなかったけどオートクチュールは素晴らしいものばかり。ドレスのスカート丈短くしてパンツと合わせちゃうのかっこえー! いい服ほしい熱がものすごく高まったわ。ラフ・シモンズの服ほしーー! あと、お約束のアナ・ウィンター登場。あとミューズのマリオン・コティヤールもいたね。ショーの最後、ランウェイに出るのを嫌がるラフのナーバスな感じも、人間らしくてよかったね。でも腹くくって最後はちゃんと締めるしね。

てことでファッション好きならきっと楽しめるだろうドキュメンタリでした。
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by april_cinema | 2015-03-14 00:00 | Starter
2015年 03月 14日
感想_イントゥ・ザ・ウッズ
b0130850_19173830.gifまさかの"進撃の罪と罰"!? 『イントゥ・ザ・ウッズ』3月14日公開。シンデレラは舞踏会で王子様と結ばれ、ラプンツェルは塔から解放され、ジャックは裕福になり、赤ずきんは無事に狼のお腹から生還。すべての望みは叶えられたけれど、彼らの人生にはその先があった…。ディズニーが贈るミュージカル映画は、名付けて「アフターハッピーエンドミュージカル」!
イントゥ・ザ・ウッズ|映画|ディズニー|Disney.jp |

物語には終わりがあるけれど、人生の終わりはもう少し先。というのはどんなお話にも通じる真理だと思うので、それをテーマにしたってのは興味深いよね。ってこれ、ブロードウェイミュージカル原作らしいけれど。監督は『シカゴ』のロブ・マーシャル。ふたを開けてみたら、えーと、これはけっこうトンデモかも? 大人向けなのかと思ったけど、やっぱりこれは子供向けでは?

冒頭は面白かったのですよー。おなじみの童話4本がクロスオーバーしながらダイジェスト的に進んでいって。豪華キャストの顔見せしつつ、みんな歌が上手いしさ。アナ・ケンドリック、キュートだったし、エミリー・ブラントもきれいだったね。ジェームス・コーデンはまたも美味しい役でナイス。メリル・ストリープは怖いだけって感じで、なんでアカデミー賞ノミネートされたのかよくわからず。ジョニー・デップは一瞬しか出てきませんでしたけど、赤ずきん役の子、オリジナリティあるねー。歌声もいいねー。そしてあの絶叫はよかったわ。それからジャック君もかわいかったし歌うまいし。俺のツボ的には、ラプンツェルやったマッケンジー・マウジーたんね。普段はブロードウェイメインで活躍中とか。要チェックだぜ。

でまあ、これは期待高まる!って思ってたのに、中盤から失速してもたもた。童話は知ってるお話なんだから、もっとサクっと進んでよ。肝心のアフーターハッピーエンドにたどりつくのが遅いんだもの。で、まあこれがなかなかぶっ飛んだ展開でしたわ。設定はギャグみたいなもんだろうから突っ込むことはしないけど、そこからの罪と罰についてがかなり説明的で、説教っぽくなっちゃったのがキツイ。テーマは重みがあるのに、そうなると大人向けというよりは子供の道徳の授業って感じがしちゃったな。てか、童話自体がそもそもけっこうエゴイスティックだったよねって話もあるな。結局王子がただのチャラい奴だったり、シンデレラの継母も嫌な奴のままだしったり、けっこう安易な悪役がいるのもテーマと合わないんだよなー。

最後にはもうミュージカルって感じもしなくなっちゃったしね。でもま、ディズニーにしちゃチャレンジングというか、いろんな要素がごちゃまぜで変わった映画ですわ。とにかく豪華キャストだし、退屈ってわけではないから、見ておいて損はないかもしれません。
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by april_cinema | 2015-03-14 00:00 | Starter
2015年 03月 13日
感想_ブルックリンの恋人たち
b0130850_11145428.gif音楽に救われて。『ブルックリンの恋人たち』3月13日公開。弟のヘンリーが事故にあい、昏睡状態になったことを聞き、フラニーはモロッコから急いで帰国。ミュージシャンを目指すというヘンリーとけんか別れしたままだったことを悔やみ、弟が残した日記をたよりに彼の過ごした日常を追いかける。そして憧れだったというジェイムズ・フォレスターのライブへ。それをきっかけに、ジェイムズはヘンリーの見舞いにきてくれた。
映画『ブルックリンの恋人たち』公式サイト

さらっとした大人の恋と音楽の映画でした。原題は『Song One』てことですので、ブルックリンは舞台にはなってるけど特に街にフォーカスされるわけでもなく、恋物語ってほどでもない。いちおうロマンスではあるけれども。主役は、音と音楽かな。日常のあらゆるところに流れる音。鳥の声、波の音、電車の音。そして数々の音楽。NYで日夜流れ、ライブも無数にあり、ミュージシャンも星の数ほどいる。その一つひとつに思いがあって、そして誰かが救われたりもする。

キャストも、フラニー、ジェイムズ、ヘンリーに姉弟のママというほぼ4人という小さな物語。弟想いのアン・ハサウェイの美人ぷりが際立つ感じで、ジェイムズはスランプだったし美人のフラニーをつまみ食いじゃん、て気もしなくはなかったし、フラニーも傷心を癒すにちょうどよかったという気もしたけど、でもそういう小さな結びつきって意外と大事なのかもね。変にふたりがドロドロにはまるわけでもなく、やっぱり音楽がふたりの間をつないで、そして小さな奇跡が起きて。

さらっとしてるので雰囲気を楽しむのみというところ。音楽にうといし、語れるほどのものはないけど、やっぱり音がある世界っていいなーと思いました。
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by april_cinema | 2015-03-13 00:00 | Starter
2015年 03月 13日
感想_博士と彼女のセオリー
b0130850_11151796.gifグッとくるけどさー。『博士と彼女のセオリー』3月13日公開。理論物理学を専攻するスティーヴンは、聡明な女性ジェーンと出会い恋に落ちる。しかし、間も無く体に異変が起き始める。何もないところで転び、チョークを持つ手が震える。診断は、運動ニューロン障害、余命2年。絶望するスティーヴンだったが、ジェーンは彼と生きる覚悟を決めふたりは結婚。病気の進行は止まらないが、ふたりは数々の困難を乗り越え、スティーヴンは素晴らしい研究成果をあげる。
映画『博士と彼女のセオリー』2015年3月13日(金)TOHOシネマズシャンテ他全国ロードショー

スティーヴン・ホーキング博士と、彼を支え続けたジェーンの家族の物語。実話です。ふたりともご存命です。アカデミー賞もにぎわせた注目の作品だったけど、思ったより僕には刺さらなかったのです。多分意図的だと思うんだけど、終盤までかなり淡々としてたんだよな。過剰にドラマチックにせずにあえて抑えていたのだとは思うのだけど、スティーヴンとジェーンの歴史の中でのターニングポイントでの感情の揺れとか、葛藤とかが、あまりにさらりと描かれてたのがもったいなかったのかなと。それでも最後、授賞式のスピーチに泣かされ、ジェーンと離れるときの一言にふたりの足跡が集約されててグッときただけに、前半でもう少しためが効いてたら一気に持ってかれたんじゃないかと思うのだけど。ふたりの人生を描くにはちょっと浅かったか。

絶賛されてる主演のエディ・レッドメイン君は確かによかった。ホーキング博士になりきり、体の自由を奪われていく姿を見事に表現。体は動かずとも心までは自由を失うことはなく、わずかな表情と動作でメッセージを伝える様子はすごかったね。だけど、やっぱりどうしてもシナリオに起伏が少なかったから、そのがんばりがあまり伝わらなかった気もしている。だったら『フォックスキャッチャー』のスティーヴ・カレルのほうが怪演だったんじゃないかって思ったな。あと、障害を乗り越えるって意味では『潜水服は蝶の夢を見る』のほうが震えた。同じことはフェリシティ・ジョーンズにも言えそうで、勇敢で聡明で、しかし介護疲れをし、ジョナサンに心揺れる様子は確かに伝わったけど、それ以上のなにか言葉にならない部分てところまでは出てこなかったようにも思ったんです。

それでもそれでも、クライマックスはよかったんだよなー! スピーチで、落ちたペンを拾えたならば。ずっとスティーヴンが抱え続けた無念さがありながら、でも彼は心折れることなくそこに立っていた。いや、何度も折れたのかもしれないけれどそれを乗り越え、素晴らしい偉業を成し遂げて。うん、やっぱりそういう折れたのか、乗り越えたのか、そういう葛藤をもう少し見たかったんだと思うわ。てのはさておいて、希望を捨てない姿が感動を呼ぶね。これはもう映画がどうのというより、ホーキング博士が素晴らしかったって話だよね。

とどめはラスト、「見ろよ、俺たちが作り出してきたものを」。『6歳のぼくが大人になるまで。』を彷彿させる、時間の流れを振り返らせて泣けたわ。劇中はあえて触れなかったのか、2年の余命はどこへいったのか、何十年と生きてきたこと。それはジェーンなくして成し遂げられなかったこと。ふたりの歩いた道は美談だけじゃ到底片付けられないんだろうけど、心を動かす終わり方でした。
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by april_cinema | 2015-03-13 00:00 | Starter
2015年 03月 13日
感想_イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密
b0130850_19102926.gif解けないのは暗号よりも人の心。『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』3月13日公開。第二次大戦下、ドイツ軍の進撃を止めるため、彼らの使う暗号を読み解くチームが結成される。そこに加わったひとりがアラン・チューリング。天才数学者であるアランは変わり者ゆえにチーム内で疎まれながらも、暗号解析のためのマシン"クリストファー"作りを進める。しかし、思うような成果があがらず、チーム解散の危機が迫る。極秘で進められたその計画と、アランが抱えた秘密に迫る、事実に基づいた物語。
<公式>映画『イミテーション・ゲーム / エニグマと天才数学者の秘密』オフィシャルサイト|3月13日(金)ロードショー

抑えめのストーリーテリングながら、それは抑制の効いた実に理性的で美しいシナリオ! タイトル、テーマにふさわしい知的ゲームのような作品でした。すごく面白かった! でもこれは、単なるエンターテインメントではありません。話の主軸は、ドイツ軍の暗号「エニグマ」を読み解くことにありながら、それを紡ぐテーマは秘密と嘘。暗号解き、スパイ活動など国家レベルの秘密から、組織の決まりごとや恋の駆け引きといったパーソナルな嘘まで含めた、人間の心理の読み解けない複雑さこそが主題として横たわってました。これはなんとも素敵な伏線いっぱいストーリー!

例えばアランは、決定的な秘密をひとつ抱えている。妻となる女性にその事実を隠し、そして真実を告げながら彼はもうひとつ別の嘘をつく。でも、彼女はきっとそれにも気づいていたよね。だけど受け入れたんだよね。それはマシンには導き出せないなんとも人間的な答え。学生時代のアランが負った傷もまた、人間心理の複雑さを示す。秘めた愛情と、最愛の人に打ち明けてもらえなかった秘密。それは彼の人格にどんな影響を与えただろう。心を閉ざしただろうか。嘘はつかないと誓わせただろうか(だから彼は冗談を言えなくなった)。でも、あのときにはわからなかったことを、アランはこの仕事の中で知っただろう。人は、良かれと思って嘘をつくことが、少なからずあるということを。

アカデミー賞候補にもなった、ベネディクト・カンバーバッチ、さすがのいい仕事。こういうキレ者、カワリ者はお手の物だろうね。コリン・ファースの次は彼と言う感じがすごくします。ヒュー役の彼もイケメンだったし、妻となる人を演じたキーラもよかったね。『はじまりのうた』のナチュラル美人もよかったけど、こういうクラシカルなお転婆ギャルもいけちゃうんだね。顔は美人なような怖いようなって気がしちゃうけど。どの作品でもキレるキーラの顔が忘れられなくて怖いぜ。

しかしこれが実話であり、国家機密としてつい最近まで伏せられてたり(この事実もまた映画のテーマとリンクする)、世の中には知らないこと、知らないほうがいいことがゴマンとあるわけですな。特定秘密法案について、ふと思ったりもしちゃったり。なんにしても、これだけの骨太で親密なテーマを織り込みながら、3つの時代を織り交ぜて編み込んだプロットはお見事というほかないかと。大興奮するタイプの映画じゃないけど、ものすごく精巧な傑作のひとつだと思います!
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by april_cinema | 2015-03-13 00:00 | MVP
2015年 03月 07日
感想_ソロモンの偽証<前篇・事件>
b0130850_1114298.gif後篇を見ないことにはね。『ソロモンの偽証』3月7日公開。クリスマスイブの夜、2年A組の柏木君が死んだ。学校の屋上からの転落死、それは自殺と結論付けられたが、他殺であるとする告発状が届いたことで学校と生徒たちは大いに揺れ動くことに。柏木の同級生であり事件の発見者の藤野涼子は、真実をつかむため、自分たちで事件について調べることを決意。中学生による、中学校で行われた学校内裁判。それは20年が過ぎた今も、伝説として語り継がれることになる。
映画『ソロモンの偽証』オフィシャルサイト <前篇・事件>2015年3月7日(土)、<後篇・裁判>2015年4月11日(土)公開

貪るように読んだ宮部みゆきの原作が、前後篇2部作となって映画化。その前篇は、思った以上に重た〜いダウナーなテイスト。死体のメイクはショッキングだし、告発状を書く樹里ちゃん怖いし、いじめ映像も残酷だし。小説のテイストはおさえたドキュメンタリータッチだったけど、映画はかなりあおってきてました。昭和をイメージしたのか暗めの映像もホラーっぽさを増してたしね。樹里ママの永作さんも怖いし。松子の父を演じた塚地さんはものすごくよかったな。

原作を読んでいる身としては、各キャラの掘り下げの少なさや、エピソードの展開の性急さに不満を覚えましたな。涼子の内面は全然語られないし、刑事である父とのやりとりも見えてこない。モリリンはただ不安定なだけのキャラで生徒との関係性も見えない。柏木の不気味さはなんとなく出てたけど、お兄さんとの確執がないとそのすごみは足りない。樹里ちゃんのコンプレックスはだいぶ大事にされてたようだけど、まだまだそんなもんじゃない。野田くんなんてただのお人好しになっちゃったね。本当はそんなもんじゃないんだぜ。なんていうと、原作に引っ張られすぎだね。映画は映画だし、後篇を見てからじゃないとなにも評価できませんね。

原作のイメージでは、思春期の心の移ろいや、スクールカーストが主テーマと感じていたのだけど、映画はより「嘘」を強調してきたのかなーと思った。てかそもそもタイトルも偽証だしね。でも原作、偽証って主題になってたっけ? 嘘ではないけど、黙ることや隠すこと、それがよかれと思ってやっていることでも、嘘は嘘。偽善もまた、嘘のひとつ。そんなところを追求していくのかな。中学生という大人と子供のはざまで、嘘をつくことは処世のための通過儀礼となるのか。それでも人は真実を望むのだけど。

中学生にしてみんなしっかり者すぎるだろう、というのは原作通りながら、ほぼ00年生まれ前後のフレッシュな中学生キャストのみんながいい感じ。涼子はもうちょっと美人がいいなって思ったけど、将来性あるかもね。大出くんや神原くん役の子はイケメン俳優にはるかな? まえだまえだのお兄ちゃん、太りすぎだよ。そして樹里ちゃんのほうが実は将来性あるのかも。とかとか。

前篇が面白かったとは言えないけど、後篇に期待しつつ、それよりも現実世界の川崎の事件となんとなくのリンクを感じなくもなくて胸が痛いです。

<2015年11月3日追記>
後篇見ました。原作で読み取れなかった部分に気付けてよかったです。
感想_ソロモンの偽証<後篇・裁判>
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by april_cinema | 2015-03-07 00:00 | Starter
2015年 03月 06日
感想_妻への家路
b0130850_1903557.gif無茶切ないやんけ! 『妻への家路』3月6日公開。文化大革命時代、右派として当局に拘束されていた夫が脱走したという知らせが入る。妻は心掻き乱され、しかし父の記憶がほぼない娘は、脱走のせいでバレエの主役を外されてしまう。夫は妻へのメッセージを残すが、娘はそれを密告してしまい、再び家族は離れ離れに。数年後、文革は終わり、夫は晴れて自由の身となって家へと帰る。しかし…。
映画『妻への家路』公式サイト

泣かせるねぇ! このうえなくシンプルなお話なのに、なんででしょうね、この切なさは。話はごく単純で、引き裂かれた夫婦が再会したのに、妻は心を病んで、夫を認識できなかったという。でもその前後関係を丹念に描写しているからここまで胸をつまかれるんですよ。チャン・イーモウ監督の丁寧さが際立ちます。

まずはなんといっても文化大革命という、負の歴史の虚しさね。誰にも罪はなかったのに時代のうねりに飲み込まれてしまったこと。同じような悲劇はあちこちであったんだと思う。夫婦だけを取り上げるんじゃなく、中国全体の悲劇として描いているのがよかったと思う。妻が嫌悪していた男も、彼もまた時代の被害者であり、彼にも家族があったという描写は、わずかなシーンだけどとても重要だったんじゃないかな。

そして娘の存在。物心ついたときには父はおらず、その父のせいでみずからの人生が壊されたと感じる不条理。それが運命を変えてしまい、大人になってそのことに気づいたときには取り返しがつかなくなっている。彼女に罪はない。それでも後悔は拭えない。僕はこの娘の気持ちにかなりシンクロしてしまいました。あのやり場のない気持ちは、想像するだけで胸が痛みます。彼女が悪いわけでは絶対にないのに。『つぐない』も思い出させるー。

でもやっぱり極め付けはこの夫婦。お互いへのまっすぐな思いを抱きながらも、そして相対しながらもそれを通わせられない虚しさよ。夫の帰りをひたすらに待ち、5日だけを生きがいとする妻。年老いて白髪も増えても、雪の日も、変わらずに髪をなでつけ、何年ぶりに会う夫の前で美しくありたいと願う純粋さ。夫もまた、他人扱いされながらも妻に寄り添い、自らの手紙を他人のふりをして読み、そして新たに書いた手紙が空回りするあの遣る瀬無さ。思い出すだけで嗚咽が出そうになります。いったい、どうしてこんなことになってしまったのだろう。

時代のせいだって外から言うことは簡単だけれど、取り返しのつかないことがある。それは美談ではとうてい片付けられなくて。苦しいほどの愛です。簡単に涙も流せません。
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by april_cinema | 2015-03-06 00:00 | All-Star