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2015年 11月 02日
感想_ソロモンの偽証<後篇・裁判>
b0130850_11183221.jpg嘘は、真実は、誰を守れるのか。『ソロモンの偽証<後篇・裁判>』DVD鑑賞。ついに、学校内裁判が始まった。被告は、柏木殺害容疑のかかる大出。検事、藤野。弁護人、神原。先生、親、生徒、刑事、学校関係者を巻き込み行われた5日間の戦い。そして、予想もしなかった真相とは。
映画『ソロモンの偽証』オフィシャルサイト <前篇・事件>2015年3月7日(土)、<後篇・裁判>2015年4月11日(土)公開

劇場で観れなかった後篇をようやくDVD鑑賞。基本的には原作の筋をなぞった感じで、演出のテンションは前篇同様になんか重くてちょっとわざとらしくて、あんまりハマれない感じだったけど、原作では読み取れなかったものが実写になることで見えてきたなって思いました。大出を糾弾する場面や、神原の告白なんかは、真に迫る感じもあったし。

宮部さんが描きたかったことは、嘘は果たして人を守れるのか、ということ。事件が起きた後に校長先生がした判断。生徒に何を隠し、何を伝えるのか。マスコミには、そして警察には。生徒を守るための行為だったけれど、それは第二の悲劇のきっかけにもなってしまった。では樹里のついた嘘ははたして。彼女自身を守ることができたのか。でも、松子の悲劇は果たしてどうなるのか。そう、嘘では誰かを守ることはできないのではないだろうか。

でも、だからといって真実ならば誰かを守れると言い切れるのだろうか。嘘をついていない森内が守られることはなかった。神原の告白は柏木くんを救いはしなかった。樹里の嘘を暴くことになった。しかし大出は守られた。一方で、隠されていたものも明らかになった。必ずしも、真実が、本当のことが誰かを救うとは限らない。いや、誰かを救うと同時に、誰かを傷つけることもある、というほうがリアルなんだろうな。

てことを言いたかったんだと思う。大人には大人の、学校には学校の、子供には子供の都合があり、人生がある。そこには嘘も、本当も、どっちもあるだろう。善意の嘘もあれば、悪意を剥き出しにした真実だってある。その中で、自分を守れるものは、藤野涼子のいうとおり、自分だけなのだ。乗り越えるべきは自分なのだ。柏木くんが乗り越えるべきは、屋上のフェンスではなくて、自分自身を苦しめた自意識だったのだ。そうして、子供たちはやがて大人になっていく。裁判を始めた動機は、本当のことが知りたい、だった。大人たちに与えられる回答や結末ではなく、自分たちで掴み取る真実。そうすれば胸のモヤモヤは晴れるはず、そう思っていただろう。でも、結果は、胸のすくようなハッピーエンドではなかった。傷つく人、傷つける人を作るものだった。勝ちも負けもない限りなくグレーなものだった。でもそれが社会であり、世界なのだ。それを知るのが、きっと14歳なんだろう。

映画としての独創性や面白みにはやや欠けたけど、原作の強さを活かした作品だったように思います。原作で読み解ききれなかったコアに気付かせてもらえて、自分的にはとてもすっきりしました。藤野涼子ちゃん、安藤玉恵さんに似てる気が。あと井上判事役の子がなんか良かったな。そして塚地さん、前篇に続いていいお仕事。あの遣る瀬無さに胸が詰まりました。

前篇の感想はこちら。
感想_ソロモンの偽証<前篇・事件>
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by april_cinema | 2015-11-02 00:00 | Starter | Comments(0)
2015年 08月 22日
感想_ナイトクローラー
b0130850_1235680.jpgキモリアル。『ナイトクローラー』8月22日公開。深夜、金網を盗んで売りさばく男ルイス。ある日、たまたま出くわした交通事故現場を撮影するクルーに遭遇。そのスクープ映像がテレビ局に売れると知ったルイスは、さっそくビデオカメラを入手し、警察の無線を傍受、事故現場のいち早い撮影に成功。まんまとテレビ局にデータを買ってもらう。味をしめたルイスは、機材と車、そして助手を揃え、毎夜撮影へと向かうように。誰よりも早く現場をおさえるため、撮影はエスカレートし、ついにルイスは超えてはならない一線を超える。
映画『ナイトクローラー』公式サイト

ジェイク・ギレンホールの怪演が話題の本作、いや~気持ち悪かったねー。『フォックスキャッチャー』のスティーヴ・カレルと共通する気色悪さ。なにを考えてるのかつかめず、その目はどこを見ているのかわからず、言葉すらも通じているのかどうなのか。日夜ネットにかじりつき、血の通わない情報だけを体内にめぐらせ咀嚼して吐き出すそのおぞましさよ! ネット社会の現代を痛烈に皮肉ってます。こういう人、絶対いるし。だけどそれでやっていけちゃう怖さ。ジェイクは12kg減量して役作りしたそうですが、目のギョロつき具合がすごいんだわ。思い出すだけで気持ちワル!

とにかく夜のシーンばっかりだし、話が犯罪まがいなので、テンションは低く暗く、湿度高め。無線聞いて、現場へ急行、撮影って流れは画的にはそんな盛り上がらないこともあり、ルイスの低温度なしゃべりもあり、中盤はやや退屈もする。が、クライマックスは狂気のカーチェイスになだれこんで覚醒! 思わず『プリズナーズ』がフラッシュバックしたね。ルイス、なんであんなに運転技術あるんだ?

いやはやしかし、刺激だけを貪る視聴者と、過激さを求め続けるメディア、どんどんリアリティを失って暴走していく社会はまっことリアルそのもの。遠いLAの与り知らない深夜の話、とは割り切れませんはこれ。うちらのすぐ隣にも進行している社会的病魔ですもの。やばい犯罪や事故も多い今日この頃、近くでこの手の話が起きてもおかしくないな~と、テンション下がります。

おもしろいですが、まじめに見るとそこそこキツイ話。そんなつもりでどうぞ。
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by april_cinema | 2015-08-22 00:00 | Starter | Comments(0)
2015年 07月 25日
感想_共犯
b0130850_23111555.jpg今の高校生タイヘンそーーー。『共犯』7月25日公開。いじめられっ子のホアンは、登校途中に少女シャーの遺体を発見する。たまたま通りすがった同じ学校のリン、イエとともに発見者として通報した彼らは、死の真相を探り始める。シャーは同じ学校で、お金持ち、だけど孤独で友達もいなかった。なぜ彼女は死んだのか。それは自殺だったのか、それとも…。
映画『共犯』公式サイト

監督の前作『光にふれる』は、ちょっと物足りなさもあったけどビジュアルがとても綺麗で印象に残っていたので、今作はちょっと期待して観たら、それに応えてくれる内容だったな〜。凝った画作りは健在で、今回はそこに青春のほの暗さと現代の闇を掛け合わせた青春ミステリに。ちょっと暗く救われにくい話ではあるけど、しっかり引き込まれたわ。

孤独がホアンを絡めとり、その孤独がシャーに共鳴させ、そしてまた別の孤独を抱えるふたりと共振してしまった悲劇。ホアンとシャーの背景は最小限の描かれ方だったけどしっかり伝わるものがあったし、フェイスブックによって彼らがつながり、そしてあらゆるものが拡散される環境は、物語のスピード感を高めるのにも効果的。テンポよく話が展開していきます。

今の高校生活がどんなもんかわからないけど、SNS全盛で、本当に多様なコミュニケーションと衆人環視が当たり前の中での青春ってほんとしんどそうだわ。このネット社会でうまくやってくのって、中高生にはやっぱり厳しいんじゃないかと思う。ホアンがなぜいじめられてたのかはわからないし、シャーの孤独感もかなり軽く描かれてたので簡単に理解共感てわけにはいかないのがもったいなかったけど、この年代全体をおおうムードは感じられたかな。しかしなー、シャーはチューの公平さが嬉しかったってのにこんなの悲しすぎるだろうよ。

ミステリとしては上質。ただ、全体としてのメッセージはちょっと弱いのかもしれない。監督は映像感覚には優れてそうだけど、物語性の構築はそこまで強くないのかもね〜。でもおもしろいよ。ヒロインの子、かわいかったな〜。見終わってすぐ画像検索&FBさかのぼりまくりのキモヲタ発動しました。姚愛寗(ヤオ・アイニン)ちゃんです。よろしく! ←なんと、写真集『明星』に出てる子だった!!!!!
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by april_cinema | 2015-07-25 00:00 | All-Star | Comments(0)
2015年 07月 18日
感想_チャップリンからの贈りもの
b0130850_2342859.jpg味があるね。『チャップリンからの贈りもの』7月18日公開。1977年のクリスマス、チャップリンが亡くなったというニュースが駆け巡る。それを見て、チャップリンの棺を盗もうと思いついたのが、出所して間もなく、失業中のエディ。友人のオスマンを誘うが真面目に暮らす彼は取り合わない。しかし、妻の入院費がどうしても必要なため、やむなく話にのることに。かくして、ドタバタと棺を盗み出すことに成功し、身代金を要求するが…。本当にあったチャップリンの棺泥棒事件をベースに、人生のおかしみを描いた一作。
映画「チャップリンからの贈りもの」公式サイト

小さなお話だけど、味わい深い佳作でした。話のノリは、ちょっと『ハイネケン誘拐の代償』と似てて、素人がお金に困って出来心で誘拐を企てて、すったもんだっていうね。大きく違うのは、あちらはなんだか悲惨な結末だったけど、こちらはもうちょっとほっこりしているところ。エディは小悪人だけどどこか憎めないし、オスマンは家族思いでとっても真面目。キャラは全然違うけど、同じ移民同士、助け合っている姿に思わず応援したくなります。

誘拐からのくだりは、喜劇タッチ。素人ゆえに棺の運び出しもなんだかおぼつかないし、なんとか盗み出してもそのあとの身代金の要求がてんでダメ。やることなすこと隙だらけで、これはとてもうまくいきそうにないという。という流れから、あっさり捕まっちゃいますけれど、というね。最後のどんでん返しは気がきいてるね〜。タイトルどおり、喜劇王ゆえの恩赦ってところでしょうか。

細かいところにチャップリンオマージュがあるようで、一瞬サイレント風になったり、ラストが『ライムライト』そのものだったりするらしいので、ファンならきっとニヤリとするはず。すごく泣けるとか、めちゃくちゃ笑えるってもんではないけど、小さなハッピーをもらえるような作風でした。
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by april_cinema | 2015-07-18 00:00 | Starter | Comments(0)
2015年 07月 04日
感想_フレンチアルプスで起きたこと
b0130850_22533927.jpgちょっと考えすぎじゃない? 『フレンチアルプスで起きたこと』7月4日公開。スキーリゾートへとやってきたトマス一家。理想的なバカンスのはずが、2日目のランチでそれは一変する。人工的に誘発した雪崩が、予想以上の大きさになってレストランを直撃! すると、トマスは家族3人を置いて我先にと逃げ出してしまった。幸い、雪崩はレストランまでは来ず、全員無事だったが、妻子は逃げ出したパパへの失望を隠せないのだった。
映画『フレンチアルプスで起きたこと』公式サイト

もっとすごいドラマがあるのかと思ったけど、わりと粘着質な会話劇だったわ。ピンチで逃げたパパを許せるかどうかっていう話であり、男らしさとはなんなんだっていう話です。でもこれはとにかく、トマスがバカだよ。雪崩で逃げちゃうのは仕方ないと思うのね。でも、逃げた事実を認めなかったのはまずいよ。不祥事発覚したときの経営者と一緒。言い訳したくても、嘘を重ねずに、とっとと認めてひたすら謝る、これっきゃないでしょうに初期対応を間違えすぎ。ああなるともう炎上必至よね。そのせいでお友達のマッツまでとばっちり受けて超かわいそうだし。

で、男らしさってなんだって話ですよ。あの雪崩は超危機的状況だと思うのですよね。そりゃー妻子を格好良く救ってほしいけど、たとえばトラックの前に飛び出した赤ちゃんや子犬を、身を呈して飛び込んで救えるのかっていう話だと思います。普通は足がすくんで、まず動けないでしょう。そこに、男と女ってのを持ち込むのはなしだと思うわ。このふたつが同じケースと言えるかどうかわかんないけどさ。わかんないけど、判断までの時間が短いときの反射に関しては責められるの酷だわー。これがタイタニックみたいにじわじわ系だったり、火事とかのもう少し時間の猶予があれば違うとは思うけど。やっぱりこれは、トマスの言い訳が支離滅裂すぎたのが悪いね。あげく、立場が悪くなったら泣いてすますってそりゃないぜ。おまけに、浮気の事実まで出てくるし、それをホテルスタッフに見られるし、パンツ一丁だし。

吹雪でプチ遭難した妻をトマスが助けに行ったのは罪滅ぼしなのか、勇敢さなのか。でもあのパターン、子供ふたりあそこに置いてったら絶対ダメだと思うから、あれも失敗アクションだと思うんだよね(結果オーライだったけど)。結局、トマスはとことんアホだってことが言いたかったのかな。そして最後のバス。あれは一体何だったかわからないけど、ついにはトマスの判断を待たずに行動したエヴァ。もはやジャンヌダルクの域でしたね。マッツはちょっとナイスアシストしつつ、ふしだら姉さんはバスに残留というのは、なんの示唆か。

時間を重ねた夫婦のあけすけさとかもちらほらあったし、そういえば突如差し込まれた裸の男たちがビールあおりながらサウナで絶叫みたいなシーンはなんだったんだろう…。トマスの思考か? なんかいろいろあるにはあるけど、この映画自体は、考えすぎの映画と認定したいと思います。あんまり固定概念に縛られず、もっとラクに行こうぜ。あ、そうか、あのおばちゃんこそがダイバーシティを体現するスーパーリバティパーソンだったのかな。
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by april_cinema | 2015-07-04 00:00 | Starter | Comments(0)
2015年 06月 13日
感想_ハイネケン誘拐の代償
b0130850_1352842.gifなんかが足りん。『ハイネケン誘拐の代償』6月13日公開。1983年アムステルダム。妻の妊娠を知ったコルは、人生を変えなくてはと考えていた。仲間たちと共同経営していた会社は不況で倒産、銀行からの融資も断られた彼らが考えたのは、なんと巨大企業ハイネケンの経営者、フレディ・ハイネケンの誘拐だった。綿密なリサーチと作戦により、その誘拐はみごとに成功する。しかし…。
6.13 公開 映画『ハイネケン誘拐の代償』公式サイト

実話ベースですって! あのハイネケンにそんなことがあったとはつゆ知らず。興味津々だったのですが、なんかこう、意外とシュッとしなかったな。いや、おもしろいのですよ。若者5人の素人犯罪なのにけっこううまくいっちゃうのね。しかも誘拐のための資金ほしさで、まず銀行強盗する、っていう無茶苦茶な展開がまずウケる。ボートを駆使して逃げ切るあたりもアムスらしさ出てるし。さらに、ハイネケン監禁用の部屋をセルフビルドで作っちゃったり、用意周到なのか、バカなのか、よくわからないけど、実際にこれが成功してるんだから、なかなかスマートってことだよね。

がしかーし、そのまま身代金ゲットとはいかないのです。ハイネケンは不敵で、とらわれの身でありながらあれこれ要求して翻弄してくる。身代金は要求すれどもリアクションがなくて焦る。いざ身代金が出てきてもそれをどう奪い、そしてそこからどう逃げ切るのかで紛糾。最後には仲間割れして、いよいよ御用となってくるわけですが。

誘拐のメソッドよりも、この舞台裏の仲間割れに焦点が当てられているのがこの映画のユニークなところ。エンタメとして以上に、人間関係のおもしろさ、難しさ、もろさを表現してるんですね。しなきゃいいのに奥さんに電話しちゃったり、どうしても仲間うちで意見が合わなかったり。はたから見てるとなにやってんだよ!みたいなところもあるけど、もともと冷徹な犯罪人間じゃない彼らはそんなにシビアにはなりきれないという。

こうして書いてみるとなかなか見所も多い気がするんだけど、全体的に低体温でトーンが暗かったのが、なんか物足りなくさせた原因かな。もしくはもう少しこの心理面の掘り下げに、親近感を覚えられるとよかったのかな。まあでもどちらにしても衝撃の実話で、楽しめるとは思いますけれど。
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by april_cinema | 2015-06-13 00:00 | Starter | Comments(0)
2015年 03月 13日
感想_イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密
b0130850_19102926.gif解けないのは暗号よりも人の心。『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』3月13日公開。第二次大戦下、ドイツ軍の進撃を止めるため、彼らの使う暗号を読み解くチームが結成される。そこに加わったひとりがアラン・チューリング。天才数学者であるアランは変わり者ゆえにチーム内で疎まれながらも、暗号解析のためのマシン"クリストファー"作りを進める。しかし、思うような成果があがらず、チーム解散の危機が迫る。極秘で進められたその計画と、アランが抱えた秘密に迫る、事実に基づいた物語。
<公式>映画『イミテーション・ゲーム / エニグマと天才数学者の秘密』オフィシャルサイト|3月13日(金)ロードショー

抑えめのストーリーテリングながら、それは抑制の効いた実に理性的で美しいシナリオ! タイトル、テーマにふさわしい知的ゲームのような作品でした。すごく面白かった! でもこれは、単なるエンターテインメントではありません。話の主軸は、ドイツ軍の暗号「エニグマ」を読み解くことにありながら、それを紡ぐテーマは秘密と嘘。暗号解き、スパイ活動など国家レベルの秘密から、組織の決まりごとや恋の駆け引きといったパーソナルな嘘まで含めた、人間の心理の読み解けない複雑さこそが主題として横たわってました。これはなんとも素敵な伏線いっぱいストーリー!

例えばアランは、決定的な秘密をひとつ抱えている。妻となる女性にその事実を隠し、そして真実を告げながら彼はもうひとつ別の嘘をつく。でも、彼女はきっとそれにも気づいていたよね。だけど受け入れたんだよね。それはマシンには導き出せないなんとも人間的な答え。学生時代のアランが負った傷もまた、人間心理の複雑さを示す。秘めた愛情と、最愛の人に打ち明けてもらえなかった秘密。それは彼の人格にどんな影響を与えただろう。心を閉ざしただろうか。嘘はつかないと誓わせただろうか(だから彼は冗談を言えなくなった)。でも、あのときにはわからなかったことを、アランはこの仕事の中で知っただろう。人は、良かれと思って嘘をつくことが、少なからずあるということを。

アカデミー賞候補にもなった、ベネディクト・カンバーバッチ、さすがのいい仕事。こういうキレ者、カワリ者はお手の物だろうね。コリン・ファースの次は彼と言う感じがすごくします。ヒュー役の彼もイケメンだったし、妻となる人を演じたキーラもよかったね。『はじまりのうた』のナチュラル美人もよかったけど、こういうクラシカルなお転婆ギャルもいけちゃうんだね。顔は美人なような怖いようなって気がしちゃうけど。どの作品でもキレるキーラの顔が忘れられなくて怖いぜ。

しかしこれが実話であり、国家機密としてつい最近まで伏せられてたり(この事実もまた映画のテーマとリンクする)、世の中には知らないこと、知らないほうがいいことがゴマンとあるわけですな。特定秘密法案について、ふと思ったりもしちゃったり。なんにしても、これだけの骨太で親密なテーマを織り込みながら、3つの時代を織り交ぜて編み込んだプロットはお見事というほかないかと。大興奮するタイプの映画じゃないけど、ものすごく精巧な傑作のひとつだと思います!
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by april_cinema | 2015-03-13 00:00 | MVP | Comments(0)
2015年 03月 07日
感想_ソロモンの偽証<前篇・事件>
b0130850_1114298.gif後篇を見ないことにはね。『ソロモンの偽証』3月7日公開。クリスマスイブの夜、2年A組の柏木君が死んだ。学校の屋上からの転落死、それは自殺と結論付けられたが、他殺であるとする告発状が届いたことで学校と生徒たちは大いに揺れ動くことに。柏木の同級生であり事件の発見者の藤野涼子は、真実をつかむため、自分たちで事件について調べることを決意。中学生による、中学校で行われた学校内裁判。それは20年が過ぎた今も、伝説として語り継がれることになる。
映画『ソロモンの偽証』オフィシャルサイト <前篇・事件>2015年3月7日(土)、<後篇・裁判>2015年4月11日(土)公開

貪るように読んだ宮部みゆきの原作が、前後篇2部作となって映画化。その前篇は、思った以上に重た〜いダウナーなテイスト。死体のメイクはショッキングだし、告発状を書く樹里ちゃん怖いし、いじめ映像も残酷だし。小説のテイストはおさえたドキュメンタリータッチだったけど、映画はかなりあおってきてました。昭和をイメージしたのか暗めの映像もホラーっぽさを増してたしね。樹里ママの永作さんも怖いし。松子の父を演じた塚地さんはものすごくよかったな。

原作を読んでいる身としては、各キャラの掘り下げの少なさや、エピソードの展開の性急さに不満を覚えましたな。涼子の内面は全然語られないし、刑事である父とのやりとりも見えてこない。モリリンはただ不安定なだけのキャラで生徒との関係性も見えない。柏木の不気味さはなんとなく出てたけど、お兄さんとの確執がないとそのすごみは足りない。樹里ちゃんのコンプレックスはだいぶ大事にされてたようだけど、まだまだそんなもんじゃない。野田くんなんてただのお人好しになっちゃったね。本当はそんなもんじゃないんだぜ。なんていうと、原作に引っ張られすぎだね。映画は映画だし、後篇を見てからじゃないとなにも評価できませんね。

原作のイメージでは、思春期の心の移ろいや、スクールカーストが主テーマと感じていたのだけど、映画はより「嘘」を強調してきたのかなーと思った。てかそもそもタイトルも偽証だしね。でも原作、偽証って主題になってたっけ? 嘘ではないけど、黙ることや隠すこと、それがよかれと思ってやっていることでも、嘘は嘘。偽善もまた、嘘のひとつ。そんなところを追求していくのかな。中学生という大人と子供のはざまで、嘘をつくことは処世のための通過儀礼となるのか。それでも人は真実を望むのだけど。

中学生にしてみんなしっかり者すぎるだろう、というのは原作通りながら、ほぼ00年生まれ前後のフレッシュな中学生キャストのみんながいい感じ。涼子はもうちょっと美人がいいなって思ったけど、将来性あるかもね。大出くんや神原くん役の子はイケメン俳優にはるかな? まえだまえだのお兄ちゃん、太りすぎだよ。そして樹里ちゃんのほうが実は将来性あるのかも。とかとか。

前篇が面白かったとは言えないけど、後篇に期待しつつ、それよりも現実世界の川崎の事件となんとなくのリンクを感じなくもなくて胸が痛いです。

<2015年11月3日追記>
後篇見ました。原作で読み取れなかった部分に気付けてよかったです。
感想_ソロモンの偽証<後篇・裁判>
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by april_cinema | 2015-03-07 00:00 | Starter | Comments(0)
2015年 02月 21日
感想_女神は二度微笑む
b0130850_11134163.gifインドのアンジー降臨! 『女神は二度微笑む』2月21日公開。行方不明の夫を探してコルカタへと降り立った妊婦のヴィディヤ。泊まっていたはずのホテル、勤め先をあたるが、どこにも夫がいた記録がない。しかしそこで、夫と瓜二つというミラン・ダムジという男がいることがわかる。その男は2年前に起きたテロ事件の関係者で、彼の情報を探ると、関係者が次々消され始めた。彼女の夫はどこへ消えてしまったのか。
映画「女神は二度微笑む」公式サイト

これは予想しなかった力作! インドから届いた一級のサスペンスエンタメだったわ。途中までは、面白いけどまあ普通のサスペンスかな〜くらいに思っていたけど、最後は唸らされたね。いや確かに、そこんところは不思議に思って観ていたけど、そういう落とし前だったとはね。まんまと騙されたよ。というか、考える暇を与えない展開力、構成力が見事だったよね!

脚本が優れているのはもちろん、役者さんと編集がうまいんだわ。主演の女性がまずべっぴんさんで、それだけで目を奪われるし、コルカタ(カルカッタのことなのね)の街の猥雑さもかなり魅力的で、それを追いかけるだけでもエキゾチックが止まらない。そして出てくるキャラたちもいちいち魅力的。自分勝手な警視さんも、ヴィディヤを助ける若者警官ラナも、宿の子供も、殺し屋も(アイツ超キモコワ!!)、その他脇役たちも総じて魅力的だったわ。テンポのいい編集がさらにミステリを盛り上げてくれたしねぇ。

夫のため戦うヴィディヤの姿はずっとアンジーみたいだなって思いましたわ。クライマックスの、お祭りのシーンもすごくって、海外のこういう文化はたくさん見てみたいなーって思ったね。こういうストーリー、どっかで聞いたこともあるような気がするけど、ハリウッドリメイク決定も納得の1本(誰がヴィディヤ役になるんだろー。ジェニファーローレンスかね、やっぱり)。そちらも楽しみですが、まずはオリジナルにご期待あれ!
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by april_cinema | 2015-02-21 00:00 | All-Star | Comments(0)
2015年 02月 14日
感想_フォックスキャッチャー
b0130850_1154450.gif激渋。『フォックスキャッチャー』2月14日公開。ロス五輪レスリング金メダリストのマークのもとに、大富豪のジョン・デュポンから連絡がきた。彼は自分のレスリングチームに、破格の年俸でマークを誘う。マークはデュポンの思想に魅せられ契約を結び、同じくメダリストでありコーチでもある兄のデイヴにも声をかけるが、デイヴは家族との暮らしを優先させ誘いを断る。マークは、最新の設備でトレーニングを始め、87年の世界大会に優勝。ソウル五輪に向け順調な一歩を踏み出したかと思ったが、デュポンとの関係がこじれはじめ…。
フォックスキャッチャー

アカデミー賞5部門にノミネートで話題の一作。シリアスなドラマだろうと思ってはいたけど、予想以上に重たいというか、相当に渋かったわ。同じくベネット・ミラー監督作品『カポーティ』のときと同じ感じ。観終わった直後の感想は、「なにこれ?」でした。とにかくデュポンが何考えてるのか意味不明で、最後までそれは解消されず。説明はほとんどなされず、母との関係が悪かったこと、なにかしらトラウマなのか障害なのかをかかえていたんだろうな、というのは想像できるけども。後で聞いた話(&wiki情報)では、彼はゲイでもあったとかで、レスリング界ではけっこう有名な変わり者だったそう。

マーク&デイヴに関しても、説明はほとんどない。冒頭の描写で、マークが困窮してることはわかったけど、兄弟の関係性に深く切り込んでいるわけではない。でもマークは実力はありながらもメンタル脆いところがあって、だから兄が父のようにカバーしていることはよくわかった。そこにデュポンという異分子が入ったことで悲劇が起こったんだな、と一つ一つ反芻していくと味わい深い。けど、初見はポカン確実。かなり映画力要求される描き方だと思います。男たちの奇妙な三角関係。

しっかし役者たちがすごかったぜマジで。スティーヴ・カレル、付け鼻のせいもあるけど別人かと思わせる演技。表情はなく行動は不可解、動きも違和感だらけ。心がここにないあの感じを出せるのはさすがだな。それからマークに扮したチャニング。もともとすごいカラダだけど、輪をかけてでかくなっててレスラーそのもの。『ファイター』のマーク・ウォルバーグみたいだったな。そしてやけになって自分を殴って鏡に頭たたきつけるのすごかったわ。そしてそして、セクシーさを封印したマーク・ラファロもすごーーー! ハゲひげ親父な子煩悩かつ弟想いの父替わり、そしてレスラーでありコーチであり。ただひとつの失敗は、デュポンのオファーを受けてしまったことか。悲しいなぁしかし。

これが実話と思うとやれやれとしかいいようがない、なんとも不穏な1本でしたわ。フォックスキャッチャーという名前に込められたメタファーもいろいろ意味づけできそ。
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by april_cinema | 2015-02-14 00:00 | Starter | Comments(0)