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2015年 11月 08日
感想_スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望
b0130850_20564593.jpgついに観始めました! 『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』iTunesレンタル鑑賞。遠い昔、はるか彼方の銀河系で…。帝国軍の圧政に対して反乱を起こす反乱軍。レイア姫は、帝国軍の拠点であるデススターの設計図を盗み出すことに成功するが追っ手に捕まってしまう。しかし間一髪で、そのデータをR2D2にコピー。C3POとともに脱出したR2は、ある星でルークという青年と出会う。そして、レイア姫が探していたオビ=ワン・ケノービという男もそこにいた。彼は、かつて帝国軍と戦ったジェダイなのだった。

いよいよ来月に迫ったスター・ウォーズの新作。なんかすごい祭りになりそうなので、その流れに乗るべく6作全部観ることにしましたよ。てことでもちろん公開順に観ます! いやーこれを40年近く前に作っていたと思うとすごいねー。もちろん今見たらチャチさはあるよ。でも40年前でしょ、すごすぎるわ。宇宙のシーンも戦闘シーンもライトセーバーも宇宙のキャラたちも。変にリアルすぎない愛らしさが、なんか今も古びなくていいね。と、妙にほっこりした気持ちで見ました。

展開は、最近の作品とは比べ物にならないゆるさですね。設定も甘々だし、宇宙規模の割になんだかとんとん拍子なストーリー、デススターの警備はどうなってるんだとか、宇宙の秩序も不明、そもそも帝国軍と反乱軍の大枠の設定もまるでよくわからないなど、突っ込みどころは無限にありそうだけど、まあ最初から6部作とか言われてたわけだし、それはおいおい明らかになってくのかな。

一番思ったことは、主役扱いであろうルークの印象がものすごく薄いこと。ヒーロー扱いなはずだけど、ハン・ソロの方が美味しいとこ持ってくしジョークも冴えていてなんかかっこよく見えるし、オビワンもミステリアス強そう(あの絶対死んでないだろフラグ!)、C3POにR2D2も愛らしいし、チューバッカは図体でかいのに弱そうなのも面白い。やたら気の強いレイア姫もいいじゃないか。で、ルークは? ジェダイの血を引いてる感じ、全くなかったよ! でもそれも、これからの布石だったんだよね、きっと。

しかし改めて、このシリーズが後の映画にものすごく影響与えているんだろうことを薄々感じたなー。『ガーディアン・オブ・ギャラクシー』なんて完全にフォロワー作品だったんですね。気づいてないだけで、他にもすごいいろいろありそう。そういうつながりとか、いろいろ読み漁りたくなっちゃうけど、とりあえずまずは3部作見てからにしよっと。繰り返しになるけど、40年近くの作品を今も楽しめるってものすごいことですよね。
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by april_cinema | 2015-11-08 00:00 | All-Star
2015年 11月 03日
感想_アメリカン・スナイパー
b0130850_19252512.jpg何も生まないな、戦場は。『アメリカン・スナイパー』DVD鑑賞。テキサス出身のクリスは、アフリカでアメリカ大使館が攻撃されたテロ映像を見て、軍隊入りを決意。その後9.11もあり、「シールズ」の一員として、イラク戦争に派遣されることに。そこで彼は狙撃に才能を発揮し、いつしか彼はレジェンドとまで呼ばれるように。家族を国に残しながら、それでも敵を倒し、同志たちを守るために、4度にわたって戦争に参加したクリス。いつしか彼の心は蝕まれていった…。
映画『アメリカン・スナイパー』オフィシャルサイト

今年のアカデミー賞を騒がせ、アメリカで空前の大ヒットになったというイーストウッド作品をようやく鑑賞。楽しい映画じゃないとは思ってたけど、想像を絶する重く、苦しい映画でした。作品の7〜8割は戦場シーン。初めての任務で、女性と子供にも銃を向ける緊張感から、やがて取り憑かれたように敵のスナイパーを仕留めることに文字通り命をかけ、多くの敵を討ち、同時にたくさんの見方を守ったクリス。だけど、伝説というニックネームも虚しさがつきまとう。帰国後、彼に命を救われた兵士はクリスを英雄だと称えるが、それすらも漂う空気はあまりにも寒々しい。

クリスは信じる道を行ったにすぎない。でも、アメリカ側から見たからこれは英雄でこそあれど、イラク側から見れば彼は悪魔であり侵略者だった。劇中、戦争の目的は明らかにされないまま、ただただ敵の重要人物を追い、民間人も巻き込みながら戦いを繰り返す。そこに人間らしい感情はなく、文字通りの命の奪い合いがあるのみ。でも、誰もそこに疑問を感じない。わずかに疑問を口にするセリフもあったけれど、それはあっという間に銃声にかき消され、砂埃の中で見えなくなってしまう。それが戦争の実態なんだろうか。

退役軍人のPDSDは、『ハートロッカー』や、『マイ・ブラザー』なんかでも描かれてた通り。これがアメリカでヒットするということは、それだけ多くの人が関心を持ち、心を痛めているということでもあるんだろうか。クリスの中にはいつまでも銃声は鳴り止まず、愛する家族を前にしてなお、それは止められなかった。そして、ようやく克服したかのように見えたところで起きた悲劇。この映画、クリス自身の自伝の映画化だそうだけど、彼はこの完成を見ずにこの世を去ったそう。彼が亡くなったのは2013年、なんとまだ39歳。僕と3つしか歳が違わないという。想像を絶する悲劇に、言葉が出ませんでした。

戦争の悲劇と、運命を曲げられてしまったひとりの男。彼は英雄ではなく、犠牲者だったと思うと胸が痛みます。クリスのご冥福を祈ります。それにしても、役作りで18kg増量というブラッドリー・クーパー。別人の域の役者魂、しかと焼き付けました。ハングオーバー野郎がこんなに売れっ子になるなんてね〜。
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by april_cinema | 2015-11-03 00:00 | Starter
2015年 08月 22日
感想_ナイトクローラー
b0130850_1235680.jpgキモリアル。『ナイトクローラー』8月22日公開。深夜、金網を盗んで売りさばく男ルイス。ある日、たまたま出くわした交通事故現場を撮影するクルーに遭遇。そのスクープ映像がテレビ局に売れると知ったルイスは、さっそくビデオカメラを入手し、警察の無線を傍受、事故現場のいち早い撮影に成功。まんまとテレビ局にデータを買ってもらう。味をしめたルイスは、機材と車、そして助手を揃え、毎夜撮影へと向かうように。誰よりも早く現場をおさえるため、撮影はエスカレートし、ついにルイスは超えてはならない一線を超える。
映画『ナイトクローラー』公式サイト

ジェイク・ギレンホールの怪演が話題の本作、いや~気持ち悪かったねー。『フォックスキャッチャー』のスティーヴ・カレルと共通する気色悪さ。なにを考えてるのかつかめず、その目はどこを見ているのかわからず、言葉すらも通じているのかどうなのか。日夜ネットにかじりつき、血の通わない情報だけを体内にめぐらせ咀嚼して吐き出すそのおぞましさよ! ネット社会の現代を痛烈に皮肉ってます。こういう人、絶対いるし。だけどそれでやっていけちゃう怖さ。ジェイクは12kg減量して役作りしたそうですが、目のギョロつき具合がすごいんだわ。思い出すだけで気持ちワル!

とにかく夜のシーンばっかりだし、話が犯罪まがいなので、テンションは低く暗く、湿度高め。無線聞いて、現場へ急行、撮影って流れは画的にはそんな盛り上がらないこともあり、ルイスの低温度なしゃべりもあり、中盤はやや退屈もする。が、クライマックスは狂気のカーチェイスになだれこんで覚醒! 思わず『プリズナーズ』がフラッシュバックしたね。ルイス、なんであんなに運転技術あるんだ?

いやはやしかし、刺激だけを貪る視聴者と、過激さを求め続けるメディア、どんどんリアリティを失って暴走していく社会はまっことリアルそのもの。遠いLAの与り知らない深夜の話、とは割り切れませんはこれ。うちらのすぐ隣にも進行している社会的病魔ですもの。やばい犯罪や事故も多い今日この頃、近くでこの手の話が起きてもおかしくないな~と、テンション下がります。

おもしろいですが、まじめに見るとそこそこキツイ話。そんなつもりでどうぞ。
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by april_cinema | 2015-08-22 00:00 | Starter
2015年 05月 23日
感想_サンドラの週末
b0130850_13532986.gif究極の選択。『サンドラの週末』5月23日公開。うつ病が完治し、職場復帰が目前のサンドラだったが、会社から解雇を言い渡される。不服を訴え、サンドラ復帰を社員の再投票で決めることになるが、復職の条件は、同僚16人のうち過半数にボーナス1000ユーロを放棄させること。投票は3日後、月曜の朝。同僚全員を説得して回るサンドラの短くて長い週末が始まった。
映画『サンドラの週末』オフィシャルサイト

主演のマリオン・コティヤールがアカデミー賞主演女優賞にもノミネートされていた作品で、ダルデンヌ兄弟作。マリオンはうつ病あけで精神的に安定しない女性を演じてますが、相も変わらず美しいわー。そして作品は静かにいろいろと考えさせるわー。

ほぼワンシチュエーションドラマといってもいい感じの展開。サンドラは、とにかく同僚を訪ねる。1000ユーロのボーナス or サンドラの復職というわりと究極の選択の中で、サンドラの復職を選んでもらうというミッションはかなりハードルが高い。居留守を使う者、要求を突っぱねる者、苦しい家計を訴える者。一方でサンドラに味方する者、一度はボーナスを選んだ自分を責める者、サンドラの親切を今も忘れない者。正解はない。価値観はそれぞれ。サンドラだけが特別なわけではないから。ボーナスを選んだとしても責められる理由はない。

それだけの話だけど、小さな伏線があちこちに。主任の陰謀説も真相はあやしいし、そうなると最終的な投票結果も果たして不正はなかったのかという疑問も。そこにかぶせて社長からの最後の提案は随分やってくれるぜって感じ。でも、資本主義社会ってこうなっちゃうし、なにも会社だけに限った話じゃないか。パイの数が限られている。それを手にできないものが必ず出る。そのとき果たしてどうするのか、と。倫理感が問われるなー。

自己犠牲や奉仕だけで結論づけられないし、隣人愛ということだけでもないし、お金か仁義かという二元論でもないし。こういう複雑さは社会のあちこちに転がってるよね。単純なプロットでそれを描くお手並みはさすがというべきか。同僚たちにもそれぞれの背景があって群像劇っぽくも見えるし、移民のこととか、親子関係、結婚関係、共働きで生活がやっとのこと、地方都市の抱える問題、グローバリゼーションの弊害、いろんなフランスの世相も反映していると思われます。

娯楽性はないけど、考えさせられる映画。今にも逃げ出しそうなサンドラが立ち向かったことがエライ、ってだけにしちゃうのはもったいない。さて、僕はどちらに投票しただろうか。
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by april_cinema | 2015-05-23 00:00 | Starter
2015年 05月 15日
感想_真夜中のゆりかご
b0130850_15522980.gif理屈じゃ割り切れないよね。『真夜中のゆりかご』5月15日公開。幸せに暮らす刑事のアンドレアスだったが、ある夜、妻アナの絶叫で目覚める。その手に抱いていた赤ん坊のアレクサンダーは、息を引き取っていた。ショックのあまり遺体を離そうとしないアナを前に、アンドレアスはネグレクトにあっていた前科者の赤ん坊とのすり替えを思いつく。それは新たな悲劇を呼ぶとも知らずに、ただ唯一の方法であると信じて。
映画『真夜中のゆりかご』

スサンネ・ビア最新作! 今回もじとーっとした展開で、アンドレアスの行為はあまりに常軌を逸し過ぎていて共感できねーって思ってたけど、なかなか理屈だけじゃ割り切れない落とし所だったな。アンドレアスは間違いを確かに犯したけれど、それは別の命を救うことにもなった。そしてそもそもの問題は別のところにあった。現実の難しさだね。正しいことがすべてではないし、今その場で起きていることと、これから先起こるであろうこと、どっちが大事かは誰にも測れないし。

思い返せば冒頭から妻の不安定さは際立っていたし、夜泣きのあやし方やヒステリックな感じは布石だったわけですね。それだけ子育てというのは難しく大変だということ。対照的にサネの母性が最終的にはアンドレアスへの救済になるわけですが、なかなかどうして。アナのお母さんとの関係性も伏線ということだけど、ちょっとわかりづらかったね。アンドレアスのお母さんや、同僚シモンの家族関係も、ひとつのメタファー。こういう丁寧な描写は、ビア監督のいいところ。北欧の風景、インテリアの素敵さもまた魅力のひとつで。

メタファーといえば邦題もまた効いてるね。実際に事件のことを直接さしてもいるし、あっちへ行ったかと思えばこっちへ揺り戻す展開を表してもいるし、視点と立場によって見え方が変わり続ける価値観の振れ幅のことも指しているのでしょう。いい時もあれば、わるい時もある。今がそのどちらにいるのかは、しばらく後になってからしかわからないというのが難しいところだよね。村上春樹が、生きる意味ってなんですか?って聞かれて、死んでから考えればいいって言ってたけどそういうことだよね。死んでみて初めてわかるのが、生きてた意味ってわけで。

最終的にアナがいちばんダメじゃんて話しでもあるけど、彼女への救済ももう少しあるとよかったかなー。ただの情緒不安定女になっちまったからね。そしてサネ役の女優さんの目ヂカラはすごかったね。モデルさんだそうで。
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by april_cinema | 2015-05-15 00:00 | All-Star
2015年 04月 04日
感想_パレードへようこそ
b0130850_19195942.gif偏見を乗り越えよ! 『パレードへようこそ』4月4日公開。1984年、サッチャー首相は炭坑閉鎖案を取り合え、炭鉱夫たちはこれに反抗してストライキを起こす。それを見たマークは、権力と戦う炭鉱夫は、マイノリティで社会の片隅に追いやられている自分たちゲイの仲間だと直感し、彼らのサポートを決意。まずは寄付を募ることに。ゲイ、レズの仲間と組織されたサポートグループはその寄付を届けようと炭坑組合に連絡を取るが、ゲイのグループであることを言うだけで門前払い。ようやく寄付を受け入れてもらえたのは、ウェールズの小さな炭坑の町だったが、そこでも偏見にさらされることになり…。
映画「パレードへようこそ」オフィシャルウェブサイト

実話ベースのお話だそうで、気持ちよく最後まで見られる映画でした。差別と偏見にさらされていた80年代のゲイやレズビアンたちと、時代の変化の中で苦境に立たされていた炭鉱夫たち。全然違うクラスタが、全然違う目的を持ちながらも、互いを理解し合う様子が爽やかに描かれております。今でこそLGBTへの理解が進んでいるように感じるけど、ほんの30年前まではこんなにも露骨な偏見があったのですな。かくいう僕も、LGBTの題材が映画でさんざん取り上げられているから知ったような気になったいるけど、どのくらい現実的に理解しているかといわれると自信ないところもあるかな。特に差別を持つ気はないけれども、女装する男性や男装する女性のことは奇異の目で見ちゃうんだろうな。

さて、展開自体はわりと予想通りというか、炭坑の町でも仲間になってくれる人と、受け入れてくれない人とにわかれ、すったもんだの末に徐々にわかり合っていくというパターン。この手の話の映画、わりと続いている気がするので、そこまで目新しさがないのはもったいないけど、ビル・ナイとか、イメルダ・スタウントンとか、ジョージ・マッケイとか、イギリスの名優たちが集まっていい感じに仕上げてます。80'sなビジュアルや音楽もナイスで、見どころのひとつ。

あらためて、世界ってのは多様性に満ちていて、性的趣向も、育った環境も、ひとつで括るのは土台無理な話で、どれだけ自分と違う立場やものの考え方に対してオープンでいられるかってことだよな。それを拒んだときに、今のイスラム国のような争いも生まれてしまうのだろうし、寛容性の考え方ってほんと難しいわ。受け入れるものを間違えるとまた争いになったり、無秩序が生まれたりもするわけで。なるべくニュートラルな自分でいたいものだな、と思います。
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by april_cinema | 2015-04-04 00:00 | Starter
2014年 10月 17日
感想_誰よりも狙われた男
b0130850_15502381.gifPSHが良すぎて泣ける。『誰よりも狙われた男』10月17日公開。ドイツ・ハンブルクへと密入国してきたイスラム系の男をキャッチした、バッハマン。9.11以降、テロ組織への警戒が増したこの町でスパイ活動をする彼らは、その男を泳がすことでより大きな悪を釣り出す作戦を立てる。しかし、同じドイツの別の諜報機関や、アメリカCIAも同じ情報を入手。彼らは危険因子の可能性があるその男をすぐに拘束するよう命じるのだった。
10月17日(金)公開 || 映画『誰よりも狙われた男』公式サイト

極上のスパイサスペンスで、2時間まったく隙のない緊張感が持続。ラストはなんともやるせないけど、それが今の世界のリアルを描いているんだろうなと腑に落ちつつ、それがさらにやるせなくさせるスパイラル。なにが正しいのか、本当にわからない世界です。そしてその中で圧倒的な存在感を放つ主演のフィリップ・シーモア・ホフマン。彼の新作をこの先もう2度と観ることができないなんてあまりにも哀しい。まだ46歳、早すぎるよ…。

原作者のル・カレがもともと諜報機関出身というだけあって、そのリアリティが遺憾なく発揮されたシナリオ。イスラム系のその青年はロシア人の父とチェチェン人の母を持つが、おそらくロシアのチェチェン侵攻でできた子供で、父のことを恨んでいる(あれ、ちょっと年号あわないか)。ロシア当局に拷問され、命からがら亡命してきた。その目的はしかし、父が遺した遺産を手にするため。彼自身は敬虔なイスラム教徒にしか見えないけれど、その大金をいったい何に使う気なのか。誰にもわからない。さらにそこに、トルコ系移民がからんできて、まったく違う次元の移民問題も見え隠れ。宗教、歴史、政治、そしてテロ。一筋縄じゃいかない問題ばかりが横たわっていて、あまりにもグレーゾーンが多い現代社会の闇に気付かされる。いったいぜんたいどうして世界はこんなにグレーになってしまったのか。いや、もともとそうだったのが顕在化しただけなのか。

さらに、疑わしきは罰せずの価値観と、惨事を未然に防ぐためにも危険な芽は早めに摘み取っておきたいというリスクヘッジの気持ちとがまた同時に存在する難しさよ。可能性の話をしたら、確かにあの男が引き金には絶対ならないとは誰にも言い切れないというね。と同時に、移民を支持するソーシャルワーカーや、偉大なイスラム指導者の息子といったサブキャラたちにも、短い時間ながらちゃんと役割が与えられているところが秀逸だなー。考え出すと、いい意味でどんどんこんがらがっていくという濃密さ、緻密さ。

でもやっぱりフィリップ・シーモア・ホフマンのことを思わずにはいられない。秀作ということ以上に、心に留め置きたい一本。ラスト、ファーー○クと叫ぶ彼の演技が忘れられないわ。R.I.P。あなたの死もまた僕たちにはファ○クすぎる悲劇でした。
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by april_cinema | 2014-10-17 00:00 | All-Star
2014年 05月 24日
感想_ディス/コネクト
b0130850_0193375.gifプチ『クラッシュ』風。『ディス/コネクト』5月24日公開。友達のいない音楽少年ベンは、同じ学校のジェイソンとフライによるFacebookでのいたずらが原因で自殺未遂を起こし、意識不明に。ベンの父、弁護士のリッチはなぜ息子がそんなことになったのか、必死にパソコンから情報を探す。そんなことが起きてるそばでジェイソンの父親は、元ネット犯罪課の刑事。舞い込んで来た依頼は、赤ん坊を亡くした夫婦からだった。妻は哀しみを癒すために入り浸っていたチャットが原因で、個人情報を盗まれ全財産を失ったのだった。時を同じくして、リッチは担当するテレビ局から呼び出される。女性キャスターが、違法ポルノサイトで働く少年をインタビューしたことがきっかけだった。人々はネットでつながりを求める。その結果、得たものとは…。
映画『ディス/コネクト』5.24[SAT]新宿バルト9他にてROADSHOW

観てまず思い出したのは『クラッシュ』。あの感じの群像劇スタイルの物語でした。切り口はネットによるつながり。Facebook、チャット、ポルノサイト。ネット経由での無数のやり取りの向こうにある、さまざまなドラマを同時多発的に巻き起こしつつ、最終的な落としどころは、生身のつながり。ネットを悪者に仕立てるわけじゃないけど、相対的に危険性が強調されていることは否めないかな。

よく出来てはいると思うのだけど、ちょっと既視感がある気もするんだよな。ひとつひとつのエピソードに、やや意外性がなくて。ベンの自殺未遂があぶり出すのは、親子や家族の関係性。だけど、リッチは確かに仕事人間なんだろうけど、家庭をないがしろにしているとまでは思えなかったな。お姉さんは普通に育ってたわけだし。一方のジェイソンと父の関係は、まあ父子家庭の難しさなんだろうなぁ。むしろ、ジェイソンとグルのフライのほうが悪ガキっぽかったぜ。あいつ、取り締まったほうがいいんじゃねーか?

子供を失って以来関係が冷えきった夫婦の話は『ラビットホール』が記憶に新しいね。あれが名作だっただけに、ちょっとエピソードとして弱く感じてしまったのと、旦那さんちょっと怖いよね。彼は軍にいたことから日常にフラストレーションを感じていて、それは『ハートロッカー』に描かれてた部分とリンクする。夫婦の問題とは別の問題があると感じました。児童ポルノのほうはちょっとよくわからなかったかな。女性レポーターはなにがしたかったんだろうか…。

つまるところ、ネット経由の「接続」と、生身の「つながり」を対比させたつくりで、言いたいことはネットによるディスコミュニケーションによって、人々の断絶が起こっているということでもあるし、一方でそのネットによって救われている人もたくさんいるというパラドックスのようなもの。児童ポルノの彼らは、ネットがなければもっと危険なことをしでかすのではないか。それを楽しんでいる人たちももっとおかしなことに手を出すかもしれない。チャットがなかったらあの奥さんは心のバランスを失っていたかもしれない。SNSは確かにベンを傷つけたけど、悪意がなければそうはならなかったし、ジェシカが実在していたら彼は幸せだったかもしれない。

全部たらればだけど、罪はネットにあるのではなくて、結局、全部生身の僕たちしだいってことだろうな。いったい何とつながりたいのか。何を求めているのか。それを見失ったとき、悲劇が起きるんだと思いました。ただそのあたりの結論は映画として出してなく、実は救いのない物語だと思ったことが、ノリきれなかった要因。面白くないわけじゃなかったのだけど。
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by april_cinema | 2014-05-24 00:00 | Starter
2013年 11月 30日
感想_おじいちゃんの里帰り
b0130850_22272357.gifあとひとひねりで名作。『おじいちゃんの里帰り』11月30日公開。トルコからドイツに家族を連れて移住し働いてきたフセイン。このたびドイツに帰化し、はれてドイツ人となった。そして家族を前に、トルコの故郷に家を買ったからみんなで一度里帰りをしようと提案する。家族はそれぞれ乗り気ではなかったが、渋々トルコへと向かうことに。孫のチェンクに、おじいちゃんがどうしてドイツにやってきたのかを語って聞かせながら。
おじいちゃんの里帰り

ドイツにはトルコ移民がたくさんいるという話は聞いたことがあったし、その移民問題を扱った映画も何本か観てきてましたが、これはトルコ側の目線でアイデンティティを問うた物語でした。出身地と育った場所と、そして二世三世となるにつれ複雑になっていく問題は、世界中いろんなところで起きているんでしょう。在日三世の僕もいくらか共感するところがあるので興味深く見ることができましたよ。

話は決してシリアスになり過ぎることなく、ホームコメディのようで温かい。おばあちゃんを見初めた若き日のおじいちゃんから始まり、言葉もわからないままドイツに移住してからのドタバタがあったり、初めてトルコに戻ったら一家はすっかりドイツ慣れしてたり、いろんな変化を経ての今をわかりやすく描き出す。そもそも彼らは、ドイツ政府が労働力を求めたからこそやってきた人々であり、決して難民でもなければ不法移民でもない。今、ドイツでは外国人排斥的なムードもあるらしいけど、そこに一石を投じるべくトルコ系ドイツ人二世の姉妹監督が作ったんだって。移民排斥はヨーロッパ各国で聞く話だね。

最終的には、子供たちも孫たちも、自分たちのアイデンティティは自分たちで見つけていくように仕向けられていて、ハーフであるチェンクはみずからのルーツをトルコに感じ取るし(大人になってまた迷うこともあるんだろう)、次男のモハメドはトルコに戻ることを決める。長女の娘は、イギリス人ボーイフレンドとの子供を生むことを決めた。生まれてくる子の未来がどうなるにしても、等しくアイデンティティは与えられるのだ。それは国境線では分かち難いものとして。

世界はますます複雑になっていくけれど、本質はとてもシンプル。みんながみんな一生懸命生きているのだから、それを分かち合えたらいいのだよね。軽いトーンで大事なことをさらっと言ってくれる良作。もう少しドイツトルコ問題をこえた普遍性が出せたら傑作だったろうなー。
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by april_cinema | 2013-11-30 00:00 | Starter
2013年 11月 01日
感想_ある愛へと続く旅
b0130850_2094350.gifうそでしょ…な結末。『ある愛へと続く旅』11月1日公開。留学先のサラエボで、カメラマンのディエゴと結ばれたジェンマ。ふたりはローマに帰り結婚生活を送るが、子供を授かることはできなかった。そんなときサラエボで紛争が起き、ふたりはかつての仲間を案じて現地を訪ねる。そこで代理母を見つけ、ついに子供を授かり、ジェンマはローマへと帰るが、ディエゴはサラエボに残り、そして命を落とした。16年後、成長した息子をつれ、ジェンマはサラエボへ。そこで、衝撃の真実を知る。
映画『ある愛へと続く旅』

とんでもなく重たい、重たすぎる結末に目玉が飛び出たわ。しょっぱな、老けメイクのペネロペ観て、普通に老けたなーとか勘違いしつつ、過去を行き来する展開に愛だ恋だの物語ですか、と軽い気持ちで見ていたのですよ。前半は特に目新しいこともなく若いふたりが出会って、いちゃいちゃしてっていう感じで特に見るべきところもない。踊るペネロペを撮るエミル・ハーシュとかすごい格好いいし、サラエボもローマも絵になるしで、見栄えはとてもいいんだけどね。

で、中盤から子供ができないという話になってきて、徐々にこれはどういう結末に向かっているのだろうかと。ディエゴはどこにいってしまったのか。息子はいったい誰の子なのか。だが、簡単には答えにたどりつかず、悶々とした時間が過ぎる。そしてラスト10分からの怒涛の展開ですわよ…。想像だにしなかった展開に絶句。そして重すぎる運命に身動きもとれず。。だって、息子は…どうしたらいいんだよ。。

アンジーもサラエボを舞台にしていたり、20年が経過してここでおきたことが掘り起こされているんだな。それにしても本当についこないだ、僕だってもう物心ついてそれなりにたっていたときに、この惨劇が起きていたという事実に打ちひしがれずにはいられない。いや、今だってエジプトでもトルコでもリビアでも似たようなことが起こってもおかしくないのか…。とにかくラストで物語の意味はまるで変わったわ。これを安易で愛では片づけられないと思います。英題は『BORN TWICE』。うーん、含みがあるなぁ。

蛇足ですが、エミル・ハーシュがジャック・ブラック化しつつあるような。ってのはさておき、覚悟のいる映画でした。
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by april_cinema | 2013-11-01 00:00 | Starter