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2015年 12月 30日
感想_くちびるに歌を
b0130850_10503598.jpg全員に生きる意味がある。『くちびるに歌を』iTunesレンタル鑑賞。五島列島の合唱部に、有名ピアニストの柏木ゆりが臨時教師として赴任してきた。なずなら部員は大喜びし、まさかの男子の新入部員まで集まったが、柏木は愛想もなくピアノも弾いてはくれない。柏木には何があったのか。そして合唱部の全国大会出場の夢は。アンジェラ・アキの『手紙』がモチーフになった青春の物語。
映画『くちびるに歌を』公式サイト

この映画を評価する人の声が結構聞こえてきてたので興味持って拝見。うむ、確かに良かったわ。大きな構図はありそうな感じです。田舎の素朴な学校にやってきた異物と言える先生。その交流を通して成長するという。『フラガール』を思い出す感じね。先生も問題を抱えてて、子供達にもそれぞれの事情があって。分かりやすい感じではあります。

でも良かったのは、15歳という多感な時期の子どもたちの目を通して、「生きる意味」を一貫して伝えたこと。そこがブレなかったのが良かったよね。先生は恋人の死以来、ピアノが弾けなくなった。なずなは自分が母を死に追いやり父に捨てられたと思っていた。悟は自閉症の兄の世話という役目を背負っっていた。そんな中で新しく生まれる命。そこで直面する、私たちのは何のために生きているのか。答えは自分で出すしかない。でも逃げてはいけない。前へ進まなくてはいけない。

というメッセージが、アンジェラ・アキ『手紙〜拝啓十五の君へ〜』に乗って紡がれます。この曲って、合唱コンクールの課題曲なんだね。そして実際にアンジェラさんが五島列島の中学を訪ねたドキュメンタリからインスパイアされてできた小説が原作だそう。ガッキーは常に不機嫌ガールで美人ゆえにこういうのもハマるね。そして中学生キャストたちがキラキラしてたのもいい。悟役の彼、あの声マジですか? クリクリ少年ぷりにおじさんも萌えたわ。あと、山口まゆちゃんて子は蒼井優2世かと思ったよね。ベテラン陣もやけにいいキャストが集まってたね。

実は柏木先生ほとんど何もしてなかったり、ちょっと尺が長いかな〜と思うところもあったりしたけど、悟の兄の伏線がしっかり効いていたし、合唱での大団円とかしらけてもおかしくない展開ながらぐっときちゃいました。命の意味を問う作品には無性に惹かれちゃう今日この頃。そしてこの中学の訓示、「勇気を失うな、くちびるに歌を持て、心に太陽を持て」というのもよかったな〜。自分はまっすぐ歩けているか。そんなことを問いかけたくなる良作でした。
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by april_cinema | 2015-12-30 00:00 | All-Star
2015年 11月 02日
感想_ソロモンの偽証<後篇・裁判>
b0130850_11183221.jpg嘘は、真実は、誰を守れるのか。『ソロモンの偽証<後篇・裁判>』DVD鑑賞。ついに、学校内裁判が始まった。被告は、柏木殺害容疑のかかる大出。検事、藤野。弁護人、神原。先生、親、生徒、刑事、学校関係者を巻き込み行われた5日間の戦い。そして、予想もしなかった真相とは。
映画『ソロモンの偽証』オフィシャルサイト <前篇・事件>2015年3月7日(土)、<後篇・裁判>2015年4月11日(土)公開

劇場で観れなかった後篇をようやくDVD鑑賞。基本的には原作の筋をなぞった感じで、演出のテンションは前篇同様になんか重くてちょっとわざとらしくて、あんまりハマれない感じだったけど、原作では読み取れなかったものが実写になることで見えてきたなって思いました。大出を糾弾する場面や、神原の告白なんかは、真に迫る感じもあったし。

宮部さんが描きたかったことは、嘘は果たして人を守れるのか、ということ。事件が起きた後に校長先生がした判断。生徒に何を隠し、何を伝えるのか。マスコミには、そして警察には。生徒を守るための行為だったけれど、それは第二の悲劇のきっかけにもなってしまった。では樹里のついた嘘ははたして。彼女自身を守ることができたのか。でも、松子の悲劇は果たしてどうなるのか。そう、嘘では誰かを守ることはできないのではないだろうか。

でも、だからといって真実ならば誰かを守れると言い切れるのだろうか。嘘をついていない森内が守られることはなかった。神原の告白は柏木くんを救いはしなかった。樹里の嘘を暴くことになった。しかし大出は守られた。一方で、隠されていたものも明らかになった。必ずしも、真実が、本当のことが誰かを救うとは限らない。いや、誰かを救うと同時に、誰かを傷つけることもある、というほうがリアルなんだろうな。

てことを言いたかったんだと思う。大人には大人の、学校には学校の、子供には子供の都合があり、人生がある。そこには嘘も、本当も、どっちもあるだろう。善意の嘘もあれば、悪意を剥き出しにした真実だってある。その中で、自分を守れるものは、藤野涼子のいうとおり、自分だけなのだ。乗り越えるべきは自分なのだ。柏木くんが乗り越えるべきは、屋上のフェンスではなくて、自分自身を苦しめた自意識だったのだ。そうして、子供たちはやがて大人になっていく。裁判を始めた動機は、本当のことが知りたい、だった。大人たちに与えられる回答や結末ではなく、自分たちで掴み取る真実。そうすれば胸のモヤモヤは晴れるはず、そう思っていただろう。でも、結果は、胸のすくようなハッピーエンドではなかった。傷つく人、傷つける人を作るものだった。勝ちも負けもない限りなくグレーなものだった。でもそれが社会であり、世界なのだ。それを知るのが、きっと14歳なんだろう。

映画としての独創性や面白みにはやや欠けたけど、原作の強さを活かした作品だったように思います。原作で読み解ききれなかったコアに気付かせてもらえて、自分的にはとてもすっきりしました。藤野涼子ちゃん、安藤玉恵さんに似てる気が。あと井上判事役の子がなんか良かったな。そして塚地さん、前篇に続いていいお仕事。あの遣る瀬無さに胸が詰まりました。

前篇の感想はこちら。
感想_ソロモンの偽証<前篇・事件>
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by april_cinema | 2015-11-02 00:00 | Starter
2015年 09月 12日
感想_私たちのハァハァ
b0130850_2355583.jpg青春との距離、感じちゃったぜ。『私たちのハァハァ』9月12日公開。クリープハイプの大ファンである北九州の女子高生4人組、さっつん、イチノセ、ちえ、文子。福岡のライブで、東京にも来てねと言われたことを真に受けて、4人はチャリで東京のライブへと向かう! 彼女たちの青春の1000kmの先に待っているのは!?
映画『私たちのハァハァ』オフィシャルサイト

なんとなく好きそうな匂いを感じ取って行ってきましたテアトル新宿。いやー青春だったね。最初は、いわゆるイマドキの女子高生ノリと手持ちカメラにややついていきづらさを感じつつも、でもじわじわとそのノリに引っ張られて楽しくなってくる。勢いで夜の街を飛び出して、カメラ片手にフツーのちゃりで関門海峡越えちゃったりして。

でも、明らかに4日で東京辿りつけるわけないし、いろいろ無理あるなんてこと、いまどきすぐわかるよね?とか、なんかリアル風に撮ってるけど本当にリアリティあるのかこれ?とか、余計なことが頭をめぐりはじめる。でもそんなふうに考える自分こそ、大人に毒されてしまっているなーとも気づく。効率とか、そういうんじゃないんだよな、青春て。無鉄砲さって。なんか、自分と青春にずいぶん隔たりができてしまったことを突きつけられた気がしてちょっとショック。そして妬ける。こういう衝動がほしい! そしてその衝動はいくつになっても必ず手に入れられるはずなのだ!

チャリは断念してヒッチハイクに、夜のバイト、SNSで炎上して、仲間割れ。彼女たちがたどる軌跡はわりと青春もののステレオタイプだけど、やっぱりそこにあるの煌きの尊さは普遍的。彼女たちは行動することで知る。世界の広さと、世界の近さを。憧れの芸能人は、目の前に存在する人間だった。遠いと思っていた東京は、その気になれば行ける場所だった。きっとイタリアも、まだ見ぬ未来も、手の届くところにある。現実は、悲観すべきものだけじゃなくて、いつだってそれと同時に可能性をもって待っていてくれる。彼女たちは自分たちの足で立ち、歩き、そして文字通り「ハァハァ」の奇跡を、知る。

自分で動くことが、すべてであり、青春てすなわち、生きること。ハァハァは、待っていてもやってこなくて、自分で獲得すべきもの。彼女たちが手にした可能性は、僕たちの周りにも転がっているはず!と、少しはっぱかけられた気分になりました。

しかしこれ、どこまで台本があるんだ?ってくらい自然な感じだったね。4人のキャラも現実にいそうな感じでよかったです。傑作とは言わないけど、『ゴーストワールド』や『ジュノ』あたりと並べてもいい女子の青春を切り取った1ページ。青春好きには愛される1本ではないかと思います。
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by april_cinema | 2015-09-12 00:00 | All-Star
2015年 07月 25日
感想_共犯
b0130850_23111555.jpg今の高校生タイヘンそーーー。『共犯』7月25日公開。いじめられっ子のホアンは、登校途中に少女シャーの遺体を発見する。たまたま通りすがった同じ学校のリン、イエとともに発見者として通報した彼らは、死の真相を探り始める。シャーは同じ学校で、お金持ち、だけど孤独で友達もいなかった。なぜ彼女は死んだのか。それは自殺だったのか、それとも…。
映画『共犯』公式サイト

監督の前作『光にふれる』は、ちょっと物足りなさもあったけどビジュアルがとても綺麗で印象に残っていたので、今作はちょっと期待して観たら、それに応えてくれる内容だったな〜。凝った画作りは健在で、今回はそこに青春のほの暗さと現代の闇を掛け合わせた青春ミステリに。ちょっと暗く救われにくい話ではあるけど、しっかり引き込まれたわ。

孤独がホアンを絡めとり、その孤独がシャーに共鳴させ、そしてまた別の孤独を抱えるふたりと共振してしまった悲劇。ホアンとシャーの背景は最小限の描かれ方だったけどしっかり伝わるものがあったし、フェイスブックによって彼らがつながり、そしてあらゆるものが拡散される環境は、物語のスピード感を高めるのにも効果的。テンポよく話が展開していきます。

今の高校生活がどんなもんかわからないけど、SNS全盛で、本当に多様なコミュニケーションと衆人環視が当たり前の中での青春ってほんとしんどそうだわ。このネット社会でうまくやってくのって、中高生にはやっぱり厳しいんじゃないかと思う。ホアンがなぜいじめられてたのかはわからないし、シャーの孤独感もかなり軽く描かれてたので簡単に理解共感てわけにはいかないのがもったいなかったけど、この年代全体をおおうムードは感じられたかな。しかしなー、シャーはチューの公平さが嬉しかったってのにこんなの悲しすぎるだろうよ。

ミステリとしては上質。ただ、全体としてのメッセージはちょっと弱いのかもしれない。監督は映像感覚には優れてそうだけど、物語性の構築はそこまで強くないのかもね〜。でもおもしろいよ。ヒロインの子、かわいかったな〜。見終わってすぐ画像検索&FBさかのぼりまくりのキモヲタ発動しました。姚愛寗(ヤオ・アイニン)ちゃんです。よろしく! ←なんと、写真集『明星』に出てる子だった!!!!!
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by april_cinema | 2015-07-25 00:00 | All-Star
2015年 03月 07日
感想_ソロモンの偽証<前篇・事件>
b0130850_1114298.gif後篇を見ないことにはね。『ソロモンの偽証』3月7日公開。クリスマスイブの夜、2年A組の柏木君が死んだ。学校の屋上からの転落死、それは自殺と結論付けられたが、他殺であるとする告発状が届いたことで学校と生徒たちは大いに揺れ動くことに。柏木の同級生であり事件の発見者の藤野涼子は、真実をつかむため、自分たちで事件について調べることを決意。中学生による、中学校で行われた学校内裁判。それは20年が過ぎた今も、伝説として語り継がれることになる。
映画『ソロモンの偽証』オフィシャルサイト <前篇・事件>2015年3月7日(土)、<後篇・裁判>2015年4月11日(土)公開

貪るように読んだ宮部みゆきの原作が、前後篇2部作となって映画化。その前篇は、思った以上に重た〜いダウナーなテイスト。死体のメイクはショッキングだし、告発状を書く樹里ちゃん怖いし、いじめ映像も残酷だし。小説のテイストはおさえたドキュメンタリータッチだったけど、映画はかなりあおってきてました。昭和をイメージしたのか暗めの映像もホラーっぽさを増してたしね。樹里ママの永作さんも怖いし。松子の父を演じた塚地さんはものすごくよかったな。

原作を読んでいる身としては、各キャラの掘り下げの少なさや、エピソードの展開の性急さに不満を覚えましたな。涼子の内面は全然語られないし、刑事である父とのやりとりも見えてこない。モリリンはただ不安定なだけのキャラで生徒との関係性も見えない。柏木の不気味さはなんとなく出てたけど、お兄さんとの確執がないとそのすごみは足りない。樹里ちゃんのコンプレックスはだいぶ大事にされてたようだけど、まだまだそんなもんじゃない。野田くんなんてただのお人好しになっちゃったね。本当はそんなもんじゃないんだぜ。なんていうと、原作に引っ張られすぎだね。映画は映画だし、後篇を見てからじゃないとなにも評価できませんね。

原作のイメージでは、思春期の心の移ろいや、スクールカーストが主テーマと感じていたのだけど、映画はより「嘘」を強調してきたのかなーと思った。てかそもそもタイトルも偽証だしね。でも原作、偽証って主題になってたっけ? 嘘ではないけど、黙ることや隠すこと、それがよかれと思ってやっていることでも、嘘は嘘。偽善もまた、嘘のひとつ。そんなところを追求していくのかな。中学生という大人と子供のはざまで、嘘をつくことは処世のための通過儀礼となるのか。それでも人は真実を望むのだけど。

中学生にしてみんなしっかり者すぎるだろう、というのは原作通りながら、ほぼ00年生まれ前後のフレッシュな中学生キャストのみんながいい感じ。涼子はもうちょっと美人がいいなって思ったけど、将来性あるかもね。大出くんや神原くん役の子はイケメン俳優にはるかな? まえだまえだのお兄ちゃん、太りすぎだよ。そして樹里ちゃんのほうが実は将来性あるのかも。とかとか。

前篇が面白かったとは言えないけど、後篇に期待しつつ、それよりも現実世界の川崎の事件となんとなくのリンクを感じなくもなくて胸が痛いです。

<2015年11月3日追記>
後篇見ました。原作で読み取れなかった部分に気付けてよかったです。
感想_ソロモンの偽証<後篇・裁判>
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by april_cinema | 2015-03-07 00:00 | Starter
2015年 01月 09日
感想_トラッシュ! −この街が輝く日まで−
b0130850_9215166.gif壮大さに負けてる。『トラッシュ! −この街が輝く日まで−』1月9日公開。リオ郊外、ゴミ拾いをして暮らす3人の少年は、財布を拾う。そこには現金と、身分証と、不思議な暗号。すると、警察が普通じゃない様子で財布を探しにやってくる。少年たちはとっさに財布を隠し、みずから暗号を解き明かすことに。そこには国を覆すほどの秘密が隠されていた!
映画『トラッシュ!-この街が輝く日まで-』大ヒット上映中

ダルドリーは好きだし、なんと脚本がリチャード・カーティスときたら、どんだけ超絶面白いのかと期待しまくったけど、あれ、そうでもなかったな…。なんかわりと最後まで盛り上がらないまま、話だけがつるつると進んで終わってしまった印象だわ。

少年たちの貧しくも逞しい様子はよかったんだけど、過去にダルドリーが描いた映画と比べると成長が感じにくい。暗号を解いて、大仕事はやってのけたけど、彼らの未来が変化するような兆しはあまり感じられなかった。おそらく暮らしは貧しいままだし、将来になにか影響を与えるような雰囲気もなかった気がするんだよね。ブラジルの街並みの迫力は確かにあって、フェルナンド・メイレレスが参加した意義というのはあったと思うけど、それも背景にしかなっておらず、有機的に機能した感じもなかったなー。

なにより、国を揺るがしかねない政治とカネ問題が背景にあったけど、結局ボスが失脚するだけの話だし、いまいち明るい未来を想像しにくかったのも問題。だし、あらためて子供3人でどうにかなる問題だったのかも疑問。謎もつるっと溶けちゃったしね。そのあたり、サスペンスとして弱かったのももったいなかったかなー。あと、少年3人以外のキャラが弱いよ。ルーニー・マーラとか存在意義あったのか? やさしかったけど、いまいち頼りにならなかったし拘束され損すぎるわ。

テンポよく明るいけど、それだけ。ビッグスリーのネームバリューがなかったほうが、もう少し楽しめたかもしれません。
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by april_cinema | 2015-01-09 00:00 | Starter
2014年 11月 14日
感想_6歳のボクが、大人になるまで。
b0130850_2047886.gifこれはすごい傑作。『6歳のボクが、大人になるまで。』11月14日公開。メイソンは、大学に戻ることを決めた母に連れられてヒューストンへ引っ越し。離婚してアラスカにいっていた父はたまに会うといつも楽しい話をしてくれる。それからしばらくして、母は再婚を決めた。相手の連れ子ともうまくやっていたけど、その男は母に暴力を振るった。歳を重ね、メイソンは高校生になっていた。初めての恋はうまくいかなかったけれど、写真家になるという夢を見つけた。そんな、メイソンの12年間の日々。
映画『6才のボクが、大人になるまで。』 大ヒット上映中

前評判が激高かったけれど、それも超納得の素晴らしく豊な映画だったな。基本的には、メイソンの12年間を淡々と描くのみ。いろんな出来事は起こるけれど、それは誰にでも起こりそうなもので、特別にドラマティックなものではない。だけど、全然退屈はしない。むしろ、自分の青春時代を重ねてしまうような向きがある。それがリアリズムによるのか、演出によるのかわからないけれど、ひとつ言えるのはウィットに富んだ脚本と、それを自分のものにしている役者たちの力量にあると思う。

監督は、『ビフォア・サンライズ』シリーズのあの人で、今作もまあ会話の多いこと。でもそれがリアリティの源泉であり、その積み重ねがそのまま月日となって、描かれない時間も浮かび上がらせる。それからもうひとつ、最もすごいのは12年間をまったく同じキャストで撮り続けたということ。メイソン役の少年は実際に6歳の頃に撮影が始まり、12年の成長がそのままフィルムに焼き付けられている。もちろん家族も全員同じキャスト。父はイーサン・ホーク。姉は監督のお嬢さん。髪型も変わるし、メイソンはあどけない子供からすっかり大人になる。イケメンになっていたのも奇跡的だと思う。マイケル・ウィンターボトムの『いとしきエヴリデイ』も、同じことを4年間やってたと思うけど、その3倍だし、内容がはるかにこちらのほうがよかった。

最後のひとことに、この映画の12年間のすべてが集約されている。「大切な瞬間は、いつもそばにある」。『アバウト・タイム』も同じことを表現してたと思うけど、これは本当に真理中の真理で、それをこんなにも長い時間をかけて表現したということに敬意を表するし、思い返せば返すほどに感動がふつふつとこみ上げてくるんだよな。

撮影は、1年ごとにスタッフキャストが集合して、その1年で起きたことなんかを話し合い、それを反映させながら脚本に落としていったのだそう。メイソンが写真に興味を持ったのも本当のこと。父がビートルズのアルバムを作ってプレゼントしてくれたエピソードも本当のことだそう。フィクションと現実の境界をそうやってなくしていくことで、この映画のリアリティは生み出されている。メイソン役の彼はとんでもない経験をしたわけだし、彼の人生は大きく変わったとも言えるし、それが彼の人生だったとも言える。そしてその映画になった人生を僕たちが俯瞰して、みずからの人生をかえりみたりしている。なんて奇妙な、だけど豊な関係なんだろう。『ビフォア・ミッドナイト』のときも思ったけど、また12年後、メイソンの人生を見たいな、なんて思っちゃうよ。

人生ってやっぱり不思議で愛おしい。それを思い出させてくれる傑作と、また1本出会えたことに心から感謝します。派手さはないけれど、多くの人の心をとらえる作品なんじゃないかと思います。
(原題は「BOYHOOD」。邦題だけはなんとかしてほしかったな)
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by april_cinema | 2014-11-14 00:00 | MVP
2014年 09月 13日
感想_So Young〜 過ぎ去りし青春に捧ぐ〜
b0130850_19214394.gif後半忙しいネ。『So Young 〜過ぎ去りし青春に捧ぐ〜』9月13日公開。幼なじみの憧れの先輩リン・ジンを追いかけ大学に入学したお転婆女子チョン・ウェイだが、彼はひと言もないままアメリカに留学してしまっていた…。寮のルームメイト、学校一の美女ルアン、潔癖性のウエイジュアン、短髪で男みたいなシャオペイとの大学生活は悲喜こもごも。そしてある日、ウェイはチェン・シアオチョンという寡黙な男子と出会う。いきなり突き飛ばされるという最悪の出会いだったが、ウェイはその男に恋をしていた…。
So Young〜 過ぎ去りし青春に捧ぐ〜

なんとあのヴィッキー・チャオが監督デビューだって聞いて、まったく期待してなかったんだけどけっこう面白かった〜。『あの頃君を追いかけた』の青春初恋部門と、『きっと、うまくいく』の青春成長部門をイイトコ取りした感じですかね。冒頭の謎のファンタジー映像が始まったときは絶望的な気分になったけど、その後の展開はありがちとはいえよかったですよー。日本の連ドラっぽくもあるし、少女マンガっぽくもあるしって感じ。原作は中国のネット小説だそうで、むべなるかなと。

とりあえず主人公ウェイを演じた、楊子姍(ヤン・ズーシャン)ちゃんが可愛かったのがなによりだよね。吉高と、あやや入った雰囲気で、テンションは思いきり高い破天荒系ガールという俺のストライク。どうしてこういう二次元キャラに弱いんだろうなー。彼との出会いとか、その後の展開とか、もう付き合い切れないほどにくだらないけど、それでもつい観てしまう安心感もなんなんだろうなー。しかしアジアの学生寮ってこんなに汚いもんなんですかね。冒頭喩えに出した2作も、やっぱり汚かったもんなぁ。てか日本の学生寮をむしろ知らないのだけれども。あ、いや、大学時代先輩の県人会の寮に言ったっけ。あれはけっこう綺麗だったね。

さて、そんな青春初恋物語で終わるかと思いきや、後半は大人になってからゾーンも描かれて、これは『僕等がいた』モード。ちょろちょろと群像っぽさも出しつつ、ずいぶん前の伏線を回収してみたりして、なんかいろいろがんばってるなーって感じ。もう少し素直に、ウェイとシアオチョンのことだけやってくれてもよかった気がするんだけどね。リンジンのくだりとか全然要らない感じしましたよ。

つーことで、悪くないけど決め手にも欠けるライトな青春ムービー。退屈はしないと思います。しかし監督があんなにカワイイって現場じゃどんな気分なんでしょうねー。
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by april_cinema | 2014-09-13 00:00 | Starter
2014年 05月 10日
感想_WOOD JOB!〜神去なあなあ日常〜
b0130850_0135188.gif爽やかで笑えてGJ! 『WOOD JOB!〜神去なあなあ日常〜』5月10日公開。大学受験に失敗し、興味本位というかパンフレットに写っていた美人に惹かれただけで1年間の林業研修に参加した平野勇気。やってきたそこは超ど田舎で、しかも1ヶ月の基礎講習からしてツラすぎ! 逃げ出そうとしたものの、パンフレットの彼女と出会ってしまったもんだからなんとなく戻ってきてしまい、ついには1ヶ月の講習を終えて中村林業での実地訓練へと入る。この中村林業、さらなるど田舎かつ、先輩のヨキは激コワ。もちろん待ってるのは超重労働! どうなるなよなよ男子代表、勇気!
映画『WOOD JOB!(ウッジョブ)〜神去なあなあ日常〜』公式サイト

矢口監督らしいお仕事トリビアがほどよく散りばめられつつ、日本の田舎の現状をいい塩梅ですくいあげつつ、全体はユーモアでくるまれていて気持ちよかったですー。お題は林業で、そのお仕事がどんな感じなのか、教えてくれつつもどっぷりフォーカスしすぎずに適度なバランスでご紹介。上の世代が残してくれた木を切り、そして先の世代へと受け渡すべく木を植える。その長いスパンでのバトンの受け渡しの尊さは、やっぱり心に残るものがありました。目先の利益や損得ばかり追いかけがちな自分を戒めるに足るメッセージです。

そして、森の不思議とお祭りという、日本古来のアミニズムに踏み込んだのもよかったと思います。不思議のほうはまあ、ありそうなエピソードではあるけど、ちゃんとおにぎりフラグを回収したのもよかったし、ナオキとの最後の手つなぎへの布石にもなっているという流れるようなシナリオ、さすがです。そしてお祭りクライマックスも笑えたわー。あのバカバカしい感じ、嫌いじゃないし、ものすごいジェットコースターだったね。あれ、無傷でいられるわけないでしょってのwww

主演の染谷君やっぱいいよねー! と言いつつ『ヒミズ』観てないしちゃんとウォッチできてないんだけど、ほどよくチャラ、ほどよくナヨ、ちょっぴり成長、な若者を好演。いい雰囲気持ってるよね。ますます今後楽しみ。勇気の描く成長曲線ももちろん典型的な感じだけど、同級生たちを蹴散らす様に溜飲下げましたよ。もちろんね、そうはいってもずーっと田舎に暮らすってのは覚悟がいることだとは理解しつつ。僕も気を付けないとな。安易に田舎暮らしいいですよね、って言っちゃわないように。伊藤英明のこういう仕事っぷりも見事だと思いますよ。替われる人、いなくない?ってレベルでは。

とどめは、耳たぶですかね。しょうもないけど、大笑いしましたわ。幅広い層におすすめできます!
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by april_cinema | 2014-05-10 00:00 | All-Star
2014年 03月 15日
感想_ランナウェイ・ブルース
b0130850_23441728.gifもうひとドラマあってもいいかも。『ランナウェイ・ブルース』3月15日公開。ふたりきりで生きてきた兄ジェリー・リーと弟フランク。ある日、ジェリー・リーが、少年を撥ねてしまったとフランクを訪ねてきたうえ、元々不自由だった足をみずから撃ち入院してしまう。犯人を捜す警察が迫り、フランクはジェリー・リーを連れ、かつての恋人アニーが暮らす町、エルコを目指す。
映画「ランナウェイ・ブルース」公式サイト

兄をスティーヴン・ドーフ、弟をエミール・ハーシュが演じる男っぽいイケメンコンビがクール。そこに加わるアニー役をダコタんが演じてて、退廃的な世界の中に花を添える。おさえたテンションの中で、ツキに見放されながらも支え合って来た兄弟愛と、そして負け犬人生からなんとか一歩抜け出そうとするフランクの葛藤がしっとりと描かれておりました。

よくあるゴロツキの転落人生ではなく、ちゃんと再生の道が残されてるのがよかったね。ジェリー・リーはなにやってもうまくいかないけど、フランクはフランクなりに自分の人生を生きていて。酒浸りではあるけど、彼を拾ってくれた中古車屋のオーナーには認められ、愛してくれるアニーという存在もいて。ただ、兄を放っておけない、ずっと一緒にいなさいと言い遺した母の言葉を守って、くすぶっていたという。アニーもまた母親の影響で人生を狂わされ、フランクとも離れることになっていたわけで、ふたりが傷を乗り越えていく様子はかわいらしかったかも。

ただ、もうちょっと山がほしかったなーという気も。エピソードを増やして飾り立てる必要はないけど、兄弟の人生をもう一個深める何かがほしかった気がします。弟が物語を語り、兄がそこに絵をつける、その関係性とアニメーションの挿入のアイデアは面白かったけど、もう一歩それらを有機的に結びつけるなにかがありそうだけど、なんだろうなー。

格好いいけど、あとちょっと物足りない。そんな感じの映画でした。
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by april_cinema | 2014-03-15 00:00 | Starter