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2009年 01月 08日
感想_メメント
感想_メメント_b0130850_025723.jpgなんて野心的な! 『メメント』DVD鑑賞。ある事件の後遺症で短期記憶が定着しなくなってしまったレナード。自分の行動を残さずメモし、ポラロイド写真を撮ることでなんとか自分の方向性を維持し、彼はある男を始末する。それは、レイプされ殺された妻の復讐だった。記憶が続かない彼の足跡をたどるかのように、時間の流れを逆行させていく、サイコ×クロノサスペンス!
MEMENTO|SPECIAL EDITION

ということで、オレも時間軸をシャッフルさせて、『プレステージ』『バットマン ビギンズ』『ダークナイト』の順で攻略してきたクリストファー・ノーラン。そして本作ですが、こりゃ噂に違わぬ無限ループ! 『マルホランド・ドライブ』かっつーくらい、見終わった瞬間もう一度観たくなったよ〜。最初は複雑な構成に酔わされてたのに、気がつけばそのシャフリングに呑み込まれて、最後は加速しっぱなしの最高速に達したところでブッチギリのフィニッシュ。正直いってまだまるで掴めてないけど、他のレビューは観ずに素直なところを一回整理しておこっと。

つまりノーランが言いたかったのはこういうことか。記憶とはとても曖昧なもので、それが事実である保証なんてものはどこにもない。それが他人の記憶ともなれば、それはもうまるであてにならないもの。時間がたつほどにその信憑性は薄れ、あげく自分の都合のいいように改編してしまう可能性だって大いにある。いや、ほとんどの人がその経験はあるはずだ。

レナードの過去へと向かって行くこの作品では、観客はそこに描かれるフラッシュバックは当然真実の映像であるはずだという先入観を持っている。順行するモノクロ映像と、逆行するカラー映像が合わさったそこで、必ずやすべての謎が解けるものと思い込む。結果、ものの見事にダマされた! そう、その過去はあくまで記憶。それが真実であるという確証はまったく得られないのだ。うひゃー、記憶って、なんてあてにならないんだ〜。。サミーの回想は、いつのまにかレナードが作り上げた幻想なのかもしれない! 悪者だと断定していたテディは、レナードを救おうとしていたのかもしれない!! 味方だと決めつけていたナタリーは、レナードを利用しただけなのかもしれない!!!

そう思い始めたら、ほら、この2時間のオレの記憶だってもうまったくあてになりゃしませんよ。あれ、こいつ何言ってたっけ? どんな行動してたっけ?? 確か、これがこうなって、あそことここがつながるから…って、そう、すでに自分の解釈に沿った再構築をしようとしているもんね。あー完璧にヤラれた〜。

ということで、ノーランの人間心理の本質をごっそりと攫っていく手腕はスゴイです。豪腕と呼ぶべきか辣腕と呼ぶべきか。とにかく、もう一回観ないと始まらないんで、短期記憶が消失しないうちにもう一度観て再度検証すること決定。今日のところは完敗! マイリマシタ。

<09/02/17追記>
時間が空いちまったけど、DVD特典の『もう一つのメメント』(リバース・シークエンス・モード)を鑑賞。すべて時系列に沿ってシークエンスが組み直されたネタバレ的特典で、ようやくだいぶ整理されてきたわ。で、いちばんのポイントはセリフにもあった通りなのかも。すなわち、レナードがナタリーに言われて思い出そうとする妻との美しい思い出について。事件前のことにもかかわらず、レナードは妻について断片的にしか思い出せない。それは言葉にならない、メモすることのできない抽象記憶。事実と記録の間に茫漠と横たわるそれこそが、記憶というものの本質なのかもしれないな〜って。

レナードがメモだけで生きて行けないのは、つまりそこが欠けているからにほかならず、もちろん他者の意図とかも抜け落ちているのは確かなんだけどね。

<09/02/22追記>
そしてもう一度本編を鑑賞。2回観てもまだあやふやだったところが、ようやっと定着しつつあるような、でも何か質問されたら答えられないような…(そんなもんか、オレの映画リテラシー。。)。今までの感想をふまえた上で、人はこの曖昧な記憶を頼りに自分で物語を紡ぎながら生きているんだなぁ、と。事実だけではあまりにキツすぎるし、記録だけではすべてを網羅することができず、間を埋めてくれる記憶の存在が人間を人間たらしめているのかも。もちろんその記憶を都合のいいように改編してしまうのが人間の性ではあるけど、それは別にレナードだけではなく誰もがそう。

短期記憶が定着しない男というトリッキーな設定をつかって、人間の記憶という不可解かつユニバーサルなアイテムを描いたノーラン。エンターテインメント性(というか中毒性?)がこんなに高いのに、根本的なメッセージも込められた不世出の傑作といっていいかもしれません。やることない暇な日に、何度も続けて観るのがオススメかも。だって観れば観るほどに面白くなるもん。

by april_cinema | 2009-01-08 00:00 | MVP


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