2009年 04月 11日
おつかれさまでした、市川監督。『buy a suit スーツを買う』4月11日モーニング&レイトショー公開。大阪から上京したユキは、かつて天才と言われながらも今は行方のわからなかった兄のもとへ。気まぐれに届いたハガキの住所を尋ねると、兄はホームレス生活をしていた。東京の風景と絡まる、人々の擦れ違いと結びつき。市川監督初のプライベートフィルム、そして遺作。 [◎『buy a suit スーツを買う』4月11日(土)より公開!!] ほとんどドキュメンタリーかと思うような様相で、映し出される東京の町と、わずかな登場人物たちの心模様。一風変わった設定だし、寂しげにも見えなくないけれど、その根底には大きな人間愛というか、現代人を肯定する向きを感じるんだな。雑踏と、高層ビルとの中で、不器用にもつながりあって行く人たちの姿に、不思議な希望を感じたりもする。 説明下手な兄は、自分の思っていることをうまく伝えることができない。きっとみんな似たようなもんで、肝心なことだろうが、どうだっていいことだろうが、なんにもちゃんとは伝えられていないんだろう。でもそれでいいの。それがオレたちなの。それを恐れなくていいし、逃げ出さなくてもいい。なんとなくそこにいるだけで、わかってあげられることも、わかった気になってあげられることもあるのだから。 ラスト近くは印象的な言葉が続く。「確かめ合わなくてもいいじゃん」「生きなあかんとかそんなん確かめんのもうやめよ」。たとえ理解できなかったとしても、それを無理矢理すり合わそうとなんてしなくても、うちらは意外とやってけるんじゃないだろうか。家がなくても暮らしていけるように。オチのない会話にも意味があるように。『いけちゃんとぼく』を読んだときもそれ、感じたところがあったんだよね。 わずか50分弱に収められた市川監督の最後の目線は、ふきだまりのような東京に根付いた人間らしさを感じさせます。監督の作品はほんの少ししか拝見してないけれど、ご冥福をお祈りしたいと思います。
by april_cinema
| 2009-04-11 00:00
| 6th-man
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