2009年 04月 18日
感想_レイチェルの結婚
b0130850_23303644.jpg理解りあえなくても、家族は家族。『レイチェルの結婚』4月18日公開。姉レイチェルの結婚式に出席するため、とある施設から一時帰宅したキム。しかし当のレイチェルも、父も、キムに対して腫れ物を触るように扱う。自らの過去を悔い、なんとか少しでもましな人生を取り戻したいと願い、もがくキムだったが、家族間で行き違う感情の中でいら立ちを募らせるまま、結婚式当日を迎えた。
レイチェルの結婚 - オフィシャルサイト

これはこれは家族版『レボリューショナリーロード』か、と言えば観た人にはわかるでしょう。つまりは、本質的には理解しきれない個と個の激しいぶつかり合い。抑圧されていた感情の暴発。家族というフィルターは、すべてを包み込んでくれるやさしさと同時に、ときに薄皮のようにまとわりつき、そして場合によっては壁のように立ちはだかることもある。家族だからといって全部が全部を分かち合い尊重して理解されるものでもなく、家族である前にいち個人である以上、いつの間にか本音を隠してしまうのはごく普通のこと。当然ネガティブな感情は余計に。にもかかわらず、「家族だから」という先入観がそういう普通を屈折させることもある。

キムはなんとか這い上がろうとしていて、自責と強い後悔から、購いを求める気持ちをもっている。変わらなくちゃって思っている分だけ、家族に認めてほしいと願っている。がしかし、家族はそんなことを感じてはいてもよそよそしい。父は過剰に自分を保護しようとする。姉はあからさまに嫌悪している。母は家を出てしまった。どうしてみんなあたしを助けてくれないのよ。まっとうに扱ってくれないのよ。元々妹気質で、感情のコントロールが巧くない(と思われる)キムは、なじめない違和感だけを感じ取ってますます自分をおさえきれない。親族が集まったパーティでの場違いなスピーチはその真骨頂。あのいかんともしがたい空気、不謹慎だけどぞくぞくしちゃうねー。アン・ハサウェイのばっさりショートが絶妙にハマってて、このシーンは主演女優賞ノミネートも納得のインパクト。

そしてこの映画、姉の描写がすばらしい! 問題を抱えた妹ばかりを守ろうとする家族の中で、言葉にできない疎外感を覚えつつ、でも姉だからそんなことを言うのは許されないと思い込むし、実際周りからも「お姉さん」を期待される中で振る舞わなくてはならない居心地の悪さ。もちろん本質的には妹を理解してあげたいのに、どこかでジェラシーが働いてしまう自己嫌悪との狭間にいるレイチェル。しかも自分の結婚式、主役は私なはずなのに、キムに邪魔なんてされたくない。わかっているけど、簡単に割り切れない辛さがよく出ていました。

父、母もまた娘のためになにかしてやりたいとは思いつつ、でも事件を思い出せば単純に娘だけをかばうことはできず、ここにもまた行き場のないバイアスのかかった感情が。いやーすごい視点で家族構成をぶった切ってます。はっきりいって胸くその悪さすら感じなくないというか、目をそらしてやり過ごしているものを全部噴出させてる感じ。ちょっとだけ『マーゴット・ウェディング』を感じさせつつ、あれよりは全然体温あるけれど。

なので、なかなか人に薦めるような作品とは言いづらいんだけど、でもとても魅力のある1本。決して問題は解決していないんだけど、しかし最後にはそれでも家族は家族、と前を向かせるだけのチカラのあるラストでした。きっとこの一家はこれからも衝突し、そっぽを向きながらも、一生家族であり続けるんだろうな。美しくないとしても、それが家族というものの本当の形なんでしょう。
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by april_cinema | 2009-04-18 00:00 | All-Star


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