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2009年 05月 30日
感想_路上のソリスト
感想_路上のソリスト_b0130850_2336132.jpgキャストの良さ、活かし切れず。『路上のソリスト』5月30日公開。LAタイムズの記者ロペスは、ベートーヴェンの銅像のある公園で、ある男に出会う。その男は、2本しか弦のないヴァイオリンで、しかし激しく心に訴えかける音楽を奏でる。その男、ナサニエルは障害を抱え、路上で生活していた。彼のことをコラムにすべく取材を始めるロペス。そして知ったのは、彼があの名門ジュリアード学院の中退者だったということ。天才的な才能を持ちながら、なぜ彼は今のような姿になったのか。
『路上のソリスト』大ヒット公開中!!

まず、ソリストを演じたジェイミー・フォックスが絶品! コワモテおっちゃんだと思ってたけど、こんな繊細なしかも実在の人物を演じて、ここまで惹き込むなんてスゴイわ〜。かなり感動。主演男優賞モノです(狙えたらしいけど、映画が間に合わなかったとかなんとか)。対するロバート・ダウニーJr.も近年見なかったクールな役柄で、渋い色気をかもしまくり。ハットがまた似合うんだわ。て感じで2人の芝居を観てるだけでもええもん観させてもろたなーって感じ。両者それぞれにめちゃめちゃイカスぜ。

がしかし、なんとも自分の中のオチを見つけるのが難しい映画。ロペスが、ナサニエルの弾くチェロに心を奪われるシーンは、映像と合わせてすごい感動。4本の弦から奏でられる音だけでこんなに世界が広がるなんて〜、って『奇跡のシンフォニー』的な音楽的感動方面に転がってくのかと思ったけど、全然違いました。ナサニエルは不安定な精神を抱え、もはやなにを信じることもなく人の言葉に耳を貸さない。ロペスは彼の居場所は路上ではないと、彼を救い出そうと介入して行くけど、それもうまく行かない。ロペスの行為は、ナサニエルの尊厳を無視したおせっかいなのか、ナサニエルのためには果たして何ができるのか、何をすべきなのか、何かができるなんて思うこと自体おこがましいことなのか。考え始めると底なし沼に落ちてっちゃうのよ。人対人のコミュニケーションの難しさがクローズアップされるのね。じゃあ、どうすればいいんだ?って答えを導けないのよ、簡単には。

でも多分、そういうことよりも、ナサニエルというソリストの人生そのものを観るってことが重要なのかな。音楽だけを純粋に愛し、そしてまた音楽に狂わされた人生だとしても、彼を支えているのはとことん根っこから音楽。そして彼の音楽は、まわりに少なからず感動を与えているという。そこから何か教訓を得るとってんでもないけど、そういう生き方もあって、それは外野がとやかく言うべきものでもないかもしれない、ってのを感じればいいのかも。ソリストってのはもちろんWミーニング。人間の孤独さの一面をかいま見た気分です。

さて、監督はジョー・ライト。現代劇を見るのは初めてだけど、前述の映像による音の表現の仕方とか、なかなか個性が出ててよかった面もあれば、中盤に音をアートワークみたいな映像で見せたときはちょっとやり過ぎか、とも思ったりもしたかな。そして、コラムニストというロペスの立ち位置がいまいち明確じゃなかったのは残念。もう少しペンを使ってアプローチしていくのかと思ったけど、この映画だとただの通りすがりって感じだったもん。まあとにかく、わかりやすいオチがないだけに消化するのが難しいけれど、とても質の良い映画なことは確かです。

by april_cinema | 2009-05-30 00:00 | Starter


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