2009年 06月 13日
ガチで生きるってこゆこと。『レスラー』6月13日公開。1980年代の人気レスラー、ランディ・"ラム"・ロビンソン。かつての栄光は見る影もなく、小さな会場×わずかなギャラでの興行の日々。トレーラーハウスで侘しく暮らし、その家賃すらスーパーのバイトで稼ぐ始末。そしてあるファイトで心臓発作を発症。医者からプロレスはもう無理と宣告され、引退を覚悟する。唯一の心の慰めであるストリッパーのキャシディに実情を打ち明け、離れて暮らす娘と連絡を取り、フルタイムで惣菜売り場の仕事を始めるなど、再出発へ。しかしそれもうまく行かなかったとき、彼は唯一の居場所へと衝き動かされていた。 映画「レスラー」オフィシャルサイト ミッキー・ロークの復活、ヴェネチアでの金獅子賞受賞、オスカーもノミネートと話題を振りまいた今作品。なるほど面白かったわ。安易なヒューマンドラマに陥ることなく、レスラーとして生き、そしてレスラーとして終わりを迎えようとする男の姿は惨めで情けないけれど格好よかったね。それは、しびれるような感動でも、涙がこぼれるような美学でも、輝かしい背中でもないの。ただただ、そういう風にしか生きられない一人の男の話なんだね。 製作にかなりのすったもんだがあったというだけあって、低予算で作られたであろうことはよくわかる。粗い手持ちの映像は、ボロボロのランディの肉体そして精神(そしてミッキー・ロークのキャリア)と調和する。プロレスラーの話でありながら、誰もが老い衰えいつか人生の表舞台を去ることを考えれば、これは誰にでもあてはまる普遍の物語。ストリッパーとして限界を感じ、どこかでランディと自分を重ねているキャシディの演技も、さりげなくて良かったね。ついでにエヴァン・レイチェルウッドが娘役だったなんて得した気分。出番は少ないけどやっぱり好きな顔。 もっとスポ根なのかと思ってたけど、ドラマ自他はさほどの盛り上がりはない。でもプロレスの舞台裏を見せながら人生のバックステージまで匂わせつつ最後まで惹きつけるだけの魅力をもった秀作。ランディは決して褒められた人間じゃない。しょうもない失敗もする。けど、"小利口"に立ち回ることなく自分らしさをまっとうする姿は、観客を納得させるに十分だったんじゃないかな。老いというのは間違いなく醜く哀しいこと。それは避けようがない。けど、そんなに悪いもんでもないのかも。なんて思ったりもしました。人生と本気で向き合った人にだけ辿り着ける境地。しかとご覧あれ。
by april_cinema
| 2009-06-13 00:00
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