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2009年 07月 25日
感想_バーダー・マインホフ 理想の果てに
感想_バーダー・マインホフ 理想の果てに_b0130850_23563736.jpg鬼気迫る歴史! 『バーダー・マインホフ 理想の果てに』7月25日公開。1967年、ドイツの学生がデモ隊と警察の衝突中、警官に射殺される。これに端を発して激化した学生運動はやがて、バーダー・マインホフ(後のドイツ赤軍)結成へと変容する。彼らは自らの理念に基づき、西側資本主義打倒のため爆破や強盗、誘拐などさまざまなテロ活動を10年以上に渡って行った。その活動の記録、ドイツのタブーが今、明らかに。
映画「バーダー・マインホフ 理想の果てに」公式サイト

あまりにも過激なテロ活動の連続に、150分間ほぼ圧倒されっぱなし。私情や主観はすっかり排除し、あくまでそこでなにが起きたのかを忠実に収めて行く、記録映像かドキュメンタリーかってくらいの臨場感と客観性。しかも、例えばある事件で使われた銃弾の数、とかもすべて事実に忠実に作っているそう。暗殺ひとつとっても、すさまじい残忍さで弾を撃ち込んでいたけれど、それは誇張じゃなくて事実なのか…。ここまで強い信念といえば聞こえはいいけど、それはもう狂信。ここまで傾倒できるって現代でぬるま湯生活しているわっちにはただただ驚きしかないよ。たかだか40年前とは思えないほどの隔世の感。

不勉強につき、ドイツ赤軍の行動や歴史ってのはここで初めて知ったけど、目的のためにとる様々な手段はどれもものすごいインパクト。自分たちの信じる理想世界実現のため、ここまで手段を選ばないなんて。行動なき言葉を排除するため、そして世間と権力者への見せしめのため、次々と実行していく様は、決して容認はできないけれど、ある種の畏敬の念すら持たせるほど。もちろんそれが正しいやり方じゃないってのは歴史が証明しているけど。それにしても現代のテロに劣らない過激さには目を疑うぜ。

感傷を挟まない分、作りはすこぶるストイックでとにかくひたすら事実を流す。その時バーダーが、マインホフが、何を考えていたかは表情で推し量るのみで余計な感傷は挟ませないし、解釈すらも許さない。次から次へと入れ替わり立ち代わりする人物と事件を追いかけてたら150分もそこまでの長さは感じないし、退屈もしない。けどそれゆえに観る人は選ぶね。しかしこうして改めて見ると、学生運動の狂騒って半端じゃないわ。今の時代じゃ考えられないのは、恵まれているからというよりも、単に牙を抜かれてるからじゃないのか、って気さえしてくる。きっかけさえあれば、何かが弾けてしまうことはありえるのかもしんない。今は個人の狂気ばかりが取りざたされているけれど、もしそれが集約してひとつの方向に向かうことがあったとしたら…。そんな悪い想像もあながち的外れって言えないんじゃないか?

理想を追いながらも彼らが描いた世界は実現されることなく、でも間違いなくあれだけの人の心を捉えていたという事実。単なるないものねだりじゃすまない歴史的事実に、風穴開けられた気分です。

by april_cinema | 2009-07-25 00:00 | Starter


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