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2009年 09月 19日
感想_正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官
感想_正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官_b0130850_1923073.jpgかなりちゃんとした社会派。『正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官』9月19日公開。ICE(移民税関捜査局)のマックスは不法滞在中のメキシコ人ミレヤを取り締まる。彼女の幼い息子を保護しメキシコまで送り届けるが、強制退去させられたミレヤは息子を捜してアメリカに密入国をしていた。女優志望のオーストラリア人。アイデンティティを見出せない韓国出身の高校生。信心深いイスラムの少女。夢をかなえるためキャリアを偽るユダヤ系青年。イラン出身のマックスの同僚とその家族。誰もがそれぞれのルーツを持ち、そしてアメリカで生活を送っているが、"移民"という壁がそこにはあった。
映画『正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官』公式サイト|初秋TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー

すごくしっかりした社会派の映画で、アメリカの社会問題である移民の現状を静かに切り取る。群像劇のスタイルをとって、『クラッシュ』方式で最後にはすべてがつながる仕組み。無駄なく綺麗にまとまっているので、どんどんのめりこめます。各エピソードはもしかしたら多少の誇張はあるのかもしれないけど(この辺は向こうで暮らしてないと温度がわからん)、リアリティは十分に感じられたわ。移民という問題につけこんだ裏ビジネスにはじまり、人種間の軋轢や偏見。人種のるつぼと言われる国だけに膨大すぎるそれらに対応しきれるわけもなく、アメリカ人はさまざまな価値観も混在。国境を越えてきた人々は強制退去に怯えながら暮らしているのは一体どんな気持ちなんだろう。

映画はなにかのメッセージを押し付けたり、誰か個人に肩入れしたりせずに、今こういう現実があるんだ、ということをフラットに提示してくる。そのスタンスは『扉をたたく人』と同種と言ってよさそう。群像劇にしている分、個人の感情が大きくフィーチャーされることはないけど、その分一筋縄じゃいかない感じや問題の根深さと多様性がより強く印象に残りました。

日本人にとっては何をどうすることもできないだけに、強いカタルシスがあるわけではないけれど、うーむと腕組みしたくなる映画。アメリカ社会の一端を知ることのできるよい映画だと思います。

by april_cinema | 2009-09-19 00:00 | All-Star


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