2009年 09月 19日
消化に時間かかります。『リミッツ・オブ・コントロール』9月19日公開。マドリードの空港に降り立ったコードネーム"孤独な男"。エスプレッソは2杯、銃も任務中のセックスもなしというルールを自らに課し、「自分こそ偉大だと思う男を墓場に送れ」という任務に従って、「ヌード」「ブロンド」「分子」「メキシコ人」ほか次から次へと現れるコードネームを持った人物たちと会う。暗号の先にたどりついたのは荒野の中のアジト。 映画「リミッツ・オブ・コントロール」公式サイト なんかカッコよさそうなロードムービー?くらいの気持ちで臨んだら返り討ち〜というか丸裸〜。言葉のわからない国でひとりぼっちみたいな。ものすご〜く観念的な世界で、簡単には中身が頭に入ってこねーっす。セリフは最小限なうえに、出会う人、出会う人、同じ言葉をひたすら繰り返す。なもんだから、たまに口を開いても謎掛けのような意味深ワードばかりで、これがまた混乱させてくれるのよ。終盤うまく消化できてない自分にうろたえつつ見終わった瞬間はちょっとクラクラするような、かなり作家性の強い作りなので、十分それを覚悟しておくように。『インランド・エンパイア』か?って思ったくらい(あんなには交錯倒錯してないけど)。 でも与えられた映像とテキストを取り込んで、自分の中に降りて行ってさらに深く埋没していくと、なんとなくおぼろげな輪郭やメッセージのようなものが落ちてくるような、勝手に再構築しているだけのような(まあ明確な答えを得ることは不可能でしょう)。ヒントになるのはやっぱりタイトルか。支配の限界。ロジック以上のイマジネーション。世界には秩序を越えた倫理ってのが存在していて、それは誰にも支配のできないもの。というか支配を越えて初めて到達できる場所がある。そこでは起こりえないことも起きてしまうスーパーナチュラルが待っている。 そんな世界の前では、人生も、自分の中のルールも、無意味なものなのかもしれない。富や名声、支配なんてのはなおのこと。それがいったいこの宇宙の前でなんになるというのか。と神の目で俯瞰されているような。って言ってて自分でもなにがなんやらわかってませんけど。ただ、こういう作品で想像をかき広げるのは嫌いじゃないというか、簡単には放棄したくないというかね。負けず嫌いの血が巡ります。支配の外側でどれだけ自己を解放できるのか。ジム・ジャームッシュからの挑戦状のようだ。 主演のイザック・ド・バンコレがもののみごとに孤独な男にぴったりで。寡黙な佇まいだけで2時間引っ張り切る存在感がスゴイっす。ティルダ、工藤夕貴、ガエル君、そしてビル・マーレイなどなど道中ですれ違う謎の人物たちもキラ星ありいぶし銀ありのナイスキャスティング。この人たちじゃなかったら退屈なだけで終わったかもしんないね。不穏な音楽も作品性にかなりぴったりきてましたわ。 ポッカーン率90%くらいに昇りそうな難解—こういう表現は嫌いだけど—映画。さあ、支配の限界を超えてみろ!
by april_cinema
| 2009-09-19 00:00
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