2009年 10月 10日
いい味出していとをかし! 『パンドラの匣』10月10日公開。結核を患い自らを余計者と考えていた利助だが終戦を迎え生への未練が生まれる。かくして療養所へと入った利助は完治して出て行った青年つくしにあてて、手紙を送り始めた。入れ替わりにやってきた看護婦の竹さんがあまり気に入らないこと。若くはつらつとしたマア坊のこと。利助は新しい男になるべく、一風変わった療養所での生活を送る。 映画『パンドラの匣(パンドラのはこ)』公式サイト 『ヴィヨンの妻』と同日公開になる太宰原作の映画化。これはぜひ2本並べて拝見して、見比べてほしいなー。こちらはちょっと風変わりな青春系の映画。自意識過剰な利助に太宰節が透けて見えつつ、富永監督らしいシュールポップな雰囲気と、でも普遍的な青年の日々があわさってすごくいいムード。どの要素をとってみても今っぽくてイイんです。 まずキャスト。主演の染谷(そめたに)君がすっごく良かったわー。男っぽさ増の林遣都って感じのギョロ目と太眉で昭和っぽさと色っぽさが兼ね備えられた感じ。太宰的「ボク」という一人称がよく似合う! ヒロインの川上未映子もその雰囲気を活かした配置。昭和のムードに合う顔なのね。で、仲里依紗ちゃんがこれまた絶品!! とぼけたハイカラ娘が本当によくお似合いで。ますます好きになっちゃったわ。誰にでもできる役じゃないっす。特別出演してるKIKIちゃんのおでこ出しも貴重なショットでしょー! お次はセット。宮城の廃校2つを使って繋いでるそうだけど、すごくいい感じ。戦後間もない雰囲気を残しつつ、ほの暗さと隔絶された奇妙な明るさが同居して、不思議とポップな印象。あわせてナース服をシアタープロダクツがオリジナルでデザイン。現代っぽさのミックスがぴたりとはまって萌え要素アップ。でもって原作通りという珍妙なかけ声「やっとるか」「やっとるよ」「がんばれよ」「ようしきた」が絶妙なアクセント。これだけで、ここが異空間でありまるで校則のような一体感をもたらしてることが伝わるもんね。 『パビリオン山椒魚』はなんとも掴みづらかった富永監督だけど、今作はそのセンスがうまくハマった印象。なにが起きるでもないこの不思議譚のような世界に浸ってくだせぇ。
by april_cinema
| 2009-10-10 00:00
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