2009年 11月 14日
女優力を楽しむべし。『ゼロの焦点』11月14日公開。戦後の復興期、鵜原憲一とお見合い結婚をした禎子。新婚7日目、仕事の引き継ぎで憲一は金沢へ立ち、そして戻ってこなかった。禎子は金沢へ足を運び、失踪した夫の行方を探すにつれ、自分が夫のなにも知らないことに気付く。憲一の行方がわからないまま、憲一の兄、そして憲一の部下が殺される事件が発生。そこには憲一の過去に関係し時代に翻弄された2人の女がいた。 松本清張 生誕100年記念作品 映画『ゼロの焦点』公式サイト なかなかの見応えある昭和ミステリー。見所はなんつっても主演女優3人でしょう。広末は広末にしかない雰囲気が昭和の可憐なお嬢様と意外なほどマッチング。どこかこの世の者ではなさそうな不思議な浮遊感は彼女にしかないものだと思います。その時代を生きていそう、とかいうリアリティ路線のハマり方とは違う存在感でよかったなー(って単にヒロスエ好きだからなのかしら?)。木村多江は不幸を背負った女を完璧に体現。金沢訛りとあわせてこちらはまんまとハマってました。すげー。 でも後半2人を喰い切っちゃったのは中谷美紀。気品高き良家の婦人でフェミニストなどいう、パブリックイメージ通りどころか本人の素の性格とぴったりじゃないの?って役を、完全にもののにしてて、『松子』より『自虐』より良かったと思う! しかもメチャクチャ美しい、美し過ぎる!! 衣装やメイクとあわせてただ一人別次元へといってしまってるようにも見えました。この姿は必見もの。 冬の北陸の不穏な曇天模様や(曇り待ちをかなりしたらしい)、韓国まで行ったという昭和の再現、そして凄いと思ったのは照明。たとえばクルマのヘッドライトの前での木村多江vs中谷美紀。稲光を映す広末。その他、スミっぽい薄暗さの中にいろんな種類の光が入って来てこの雰囲気をみごとに表現してたわ。犬童さんの構成・演出もよかったんじゃないかなー。 ただし、話は所詮昭和のミステリ。戦後という時代に呑み込まれた悲運ていうのは魅力がないわけではないけれど、現代へのリンクは弱いと思う。し、ミステリ慣れしている人間からすると、トリックが優れるわけでもなく、かといってフーダニット、ホワイダニット、ハウダニットのどの側面から見ても強い印象はない。ので、物語としては期待したほどは楽しめなかったですわ。見所はたくさんあるのに、単純に面白いか?と問われると、別にフツー、って感じ。まあそれは原作(未読)の時点である程度決まってしまってたことかもしれないけど。
by april_cinema
| 2009-11-14 00:00
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