2009年 11月 28日
強烈ヘヴィー級パンチ…! 『戦場でワルツを』11月28日公開。26匹の犬に追いかけられる夢を見たボアズは映画監督の旧友アリにそのことを相談する。それは20年以上前に従軍したレバノン戦争の後遺症なのかもしれない。が、確かにその戦争に参加したはずのアリには当時の記憶が抜け落ちてしまっていた。引っかかりを憶えたアリは、一緒に従軍していた旧友たちのもとを訪れ詳細な話を聞き出すことに。最後まで思い出せなかったのは、ある虐殺の記憶だった。 映画[戦場でワルツを]公式サイト 社会派アニメだとは思ってたけど、ドキュメンタリーだとは思ってなかった…。その強烈さにKO寸前。オープニング、追いすがる犬の描写からしてただならぬ格好よさ。日本のアニメみたいな滑らかさやリアリティとは遠く離れた、無機質な中に不思議な立体感のあるアニメーションがテーマと合致。初っ端から不穏なただならぬ空気を醸し出してくる。質感は少し『ペルセポリス』を思い出す感じ。 アリは、失った戦争の記憶を取り戻すために奔走する。それはあまりにも凄惨すぎたため、自身の精神を守るために改編されてしまった記憶。人が人でなくなってしまう戦争という狂気は、どっちの立場にとっても尋常ではないできごとだということ。『告発のとき』でも兵士のPTSDは題材になってたね。それと共通項あり。観客にはある程度予想がつく。アリが何を見て、そして何を忘れたのか。徐々に核心に迫りながら、その奇妙にねじまがった戦場という世界がやはり遠く感じてしまうのも事実。 しかし! 最後の最後に用意された爆弾でそんな甘っちょろさは木っ端みじん。遠い世界の20年も前のこととして距離をおいてしてしまっていたとしても、一気に戦場の上に立たされること必至。アニメーションでドキュメンタリーをまとめていたことが、最後の最後で強烈な意味を持って浴びせかけられる感じ。完全に呑み込まれました。なんて表現方法をするんだろう…! アニメだからって油断してました。戦場に材をとったちょっと考えさせられてセンチメンタルないい話なんじゃないかと。そんな甘さもすべて吹き飛ぶほどの重量級の1本。その衝撃を焼き付けてください。
by april_cinema
| 2009-11-28 00:00
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