2010年 01月 30日
原作よりシャープな気がする! 『ゴールデンスランバー』1月30日公開。仙台で金田首相の凱旋パレードが行われる日、青柳は旧友の森田に呼び出される。と、いきなり背後で爆発音。なんと金田首相暗殺事件が勃発! 森田のクルマも爆破され、青柳はわけもわからないまま暗殺犯として指名手配され追われることに。とにかく現場から逃げ出した青柳を謎の人物たちが追い込む。青柳は旧友たちを頼っていくが、果たして逃げ切れるのか。真相はなんなのか。伊坂幸太郎原作の大ヒット作、映画化! ゴールデンスランバー 大好きな堺雅人主演、中村監督となると原作にハマれずとも期待値はマックス。おお、さすがは中村監督だ。原作よりもテーマがシャープに見えた気がしたな〜。原作にもある「習慣」と「信頼」というキーワードをうまく用いながら、見えない権力へのアンチテーゼをつきつけてストーリーを展開。この言葉はどちらも、理屈ではない反応を表す言葉。根拠や利害なしでもつながる人たちってのを描いてみせたんだろうか。キルオと青柳のような。 それに加えて良かったと思うのが、同じ見るという行為の中でも対極と言えそうな監視社会と、誰かが真実を見ていてくれるという良心の視点というのをうまく並行して描きあげたところが秀逸。監視社会の描写は原作に比べたらほとんどないと言っていいレベルで、原作を読んでなきゃわからないけど、その分後者はしっかりあぶり出せてて、正直なところ原作では感じ取れなかったところを実写化してくれた喜びがあったわ。 ただ、伊坂小説の魅力のひとつは、そことここがつながるのか!?っつーどんでん返し的驚きなわけで、純粋にストーリーを楽しめないのは原作読了者の損してる部分。『アヒルと鴨』もそうだったもんな〜。そういう意味では、原作を読まずに入ったほうが楽しめるような気がする。あとは、やはり原作はそれなりのボリュームがあるわけで、2時間ちょっとに収めるという作業できゅうきゅうとしてしまった印象はなくはない。中盤は布石を仕込むだけで精一杯で、1つ1つのエピソードの味わいみたいのがかなり薄かったもんね。キルオとかさ。 でもこうして見ると、伊坂小説ってのは、そのこまっしゃくれたレトリックや、アンチヒーロー的な価値観、そして布石と回収によるギミックについ目がいってしまうけれども、もう少し注意深く読めば、さらにその奥にある本質的メタファーみたいなのが読み取れるのかもって思えた。今度氏の作品を読む時はストーリーを追うことに傾倒しすぎずにその向こうに隠されたものを掘り起こすつもりで読んでみよっと。って映画の感想から離れてしまいましたが、原作未読者はまずまず楽しめるエンタテインメントじゃないかと思います。 感想_ゴールデンスランバー(小説)
by april_cinema
| 2010-01-30 00:00
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