2010年 01月 30日
凍てつくほどのリアルだ。『フローズン・リバー』1月30日公開。NY州最北の地で子供2人と暮らすレイ。新しいトレーラーハウスを買うため必死に貯めた資金をギャンブル依存のダメ夫に持ち逃げされ途方に暮れた彼女は、子供たちと生活を守るためある仕事に加担する。それは、冬の間凍るカナダ国境を流れる川を越え、アジア系の密入国者を運んでくるというもの。同じく子供との生活を願うモホーク族のライラとともにリスクを背負った裏仕事を続けるが…。 映画『フローズン・リバー』公式サイト ずっしりくる地味な社会派映画の秀作。ストーリーは単純。苦境にあるふたりのマザーが、それぞれ環境は違えど子供のために裏仕事に手を染めるというだけ。だけど、すべての動機となってるふたりの女の母性ってのが、ただならぬサバイバルに物語を変容させている。端から見れば、なぜそんなことを、と思うし、場合によっては馬鹿げたことだとさえも思うかもしれない。だけれど当事者にとって、これほど深刻で現実的な苦悩と葛藤はない。他に選択肢がはたしてあっただろうか。きっとない。それが現実であり、母というものなんだろう。親ではなく、母。 ふたりの負のスパイラルは端的ながらもピリっと描かれていて、感情移入を妨げることはない。不法入国者の子供のエピソードなどは、あっと驚かされるインパクトもさることながら、レイとライラの母性がよく出た秀逸なシークエンス。凍った川と国境というのもなんともメタファーの利いた設定だし、クライマックス以降のレイの決断は胸を撃つに足るものだし、最終的な展開も印象深い。 とにかく地味で質量があるから、誰に薦めるべき映画なのかはわからない。間違いなく辛気くさい。でも、この大量の受賞歴に嘘はないな、って思える1本でした。単館映画冬の時代にシネマライズが人肌脱いだってのもわかるね。応援したいです。
by april_cinema
| 2010-01-30 00:00
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