2010年 03月 06日
強烈なるハート・アタッカー。『ハート・ロッカー』3月6日公開。2004年、イラク・バグダッド。戦死した男の代わりに爆弾処理班に新たにやってきたジェームズは、班のルールを無視した大胆な仕事ぶりで同僚のサンボーン、エルドリッジを驚かせる。不発弾の除去、自爆テロの抑止、爆弾テロ後の処理など、一歩間違えば死に至るそこが日常であるジェームズたちの、狂気をはらまずにいられない日常をえぐりとる。 『ハート・ロッカー』公式サイト こんなにも驚愕の世界だったなんて。。なんて戦争映画なんだ! 爆弾処理班という言葉だけでも不穏な響きがあるけれど、戦場に確かにあるその現実は想像以上に残酷な世界だった…。いつ爆発するかわからないモノから逃げ出すのではなく、自ら近づかなくてはいけない。しかもそれを日常化するということがどれほどの精神的プレッシャーになるのか、とても想像が及ばないよ。『告発のとき』では戦争帰りの兵士のPTSDを描いていたけれど、これもそれに近く、なおかつ今まさに戦場にある現在進行形を描いているだけにより衝撃が濃い。ちなみにどちらも原案脚本が同じ人。 とにかく徹底的なリアリティ。揺れまくる手持ちカメラは、観客も今まさにその場にいるような緊張感を強いる。遠い世界のできごとではあるけれど確かに起こっている(いた)ことかと思うと絶望的な気持ちにもなるし、目を背けたくもなる。キャラクター描写にも抜かりはない。ジェームズの異常なまでの行動と精神性。コレクション。妻子との会話。そしてラスト。異常を自分の中に取り込む以上、みずからの精神そのものを破壊しなくてはまともでなんていられないのだろう、と想像を助けてくれる。まったく開き直りなんてレヴェルじゃないぜ。まっとうな人間ならエルドリッジの反応を示すし、結果、彼は職務を全うすることはできなかった。常人には不可能なことを強いているってことか。 のっけからガイ・ピアースが憤死。レイフ・ファインズも爆死。知名度高いキャストは不文律など知ったことかと、掟破りのように舞台から退場する。それはまさに戦場そのもの。誰が生き残るかなんてのはまったく関係ないし、誰にもわからないし、誰が生き残らなかったとしてもほとんど多くの人は気にも止めないということ。ものすごいアタックの映画です。勇気と覚悟を持って、戦場に乗り込む気持ちで鑑賞しなくては。 これだけ重たい作品がオスカーを穫るとは思ってなかったよ。戦争映画だけど一見する価値は大アリでしょう。
by april_cinema
| 2010-03-06 00:00
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