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2010年 03月 20日
感想_マイレージ、マイライフ
感想_マイレージ、マイライフ_b0130850_11512498.jpgおもしろい。のに撃ち抜かれない。『マイレージ、マイライフ』3月20日公開。年間322日も出張で空を飛ぶ男ライアン・ビンガム。スマートに空港を行き来し、獲得マイルは1000万目前! モットーは、人生も人間関係もバックパックに入らないような余計な荷物は背負わないこと。似たような価値観を持った女性アレックスとラブアフェアーを楽しむある日、新入社員のナタリーがやってくる。優秀かつ現代っ子の彼女は、ライアンの仕事である解雇通告をオンラインで行い、出張制度を廃止する提案をする。
『マイレージ、マイライフ』オフィシャルサイト

ウィットに富んだ会話、深みのあるシノプシス、メッセージを織り込んだプロット。俊英ジェイソン・ライトマンの手腕がいかんなく発揮された一作で、最初から最後までそのマジックを楽しめる〜。まずはキャラクター。人生を飄々と、悠々自適に渡っていくライアンに、ジョージ兄貴はビンゴすぎでしょ〜。人生のバックパックに一体何を詰めるべきなのか。何を棄ててくべきなのか。思わず一緒になって考えてしまいますもの。入れるとしても優先順位はどうする!?ってな具合に。アレックス、ナタリーと主要キャラは3人だけなのにこれだけデプスのある物語を作るってのはセンスだよね〜。ジェイソン作品はオープニングが毎度おもしろいね。前2作のアニメーションから変わって今回は航空映像。原題『UP IN THE AIR』のとおり、ゆらゆらと宙に浮いた人生という名の不安定を象徴してておもしろいわ〜。それを俯瞰するというのを物語からも映像からも象徴的に示してます。クール。

がしかし。これだけよくできていると思うのに、どうしてもハートをぶち抜かれるようなセンセーションがない。なんだろう、あまりにもスマートすぎるのだろうか。ものすごくよく考えられていて、よく作り込まれている分だけ、パッションで感じる部分が少なくなっちゃうのかな。優秀過ぎて泥臭さがないというか、泥臭い部分すら演出に見えるというのか、そんな気が微妙に残るんだよなー。あまりにも巧くできすぎているんです。安易なハッピーエンドには落とさないところまで含めて。

人生は簡単には変えられないからこそ、なにを取捨選択するかは人それぞれ、というオチも秀逸だと思う。で、ジェイソン・ライトマンははたしてどんな選択をするんだろう? そういう方向性をあえて隠して観客に委ねた分、感情移入を妨げることになったのかも。でも最初から最後まで見所たっぷり飽きさせない作りは、賞レースを賑わせただけのことはあり。この秀逸さがいつかオレのハートを心底震わせる日がくるのか。楽しみに次回作品を待ちたいと思います。

by april_cinema | 2010-03-20 00:00 | All-Star


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