2010年 04月 24日
前向いてるけれど。『プレシャス』4月24日公開。プレシャス・ジョーンズは夢見ていた。雑誌のカバーを飾ること。歌って踊ること。先生が私のことを密かに好いていること。その他さまざまなこと。それは、あまりにも過酷な現実から目を逸らすための方法。父親に虐待され、16歳にして二人目の父の子を妊娠中。家では母親からの苛烈な仕打ちが待っていた。 映画「プレシャス」公式サイト とことんヘビーな環境にいる女の子が題材だけに、どこまででも重くシリアスにできたところを、ただ落とすのではなく、もちろん茶化すわけもなく、ポジティブに転調してきたことにまずは拍手。現実逃避の空想は、ともすれば『パンズ・ラビリンス』にもなっただろうけれど、そこまで悲惨にはせず、どちらかというと松子の方を向いた感じ。もちろん出発点がネガで逃避ベースだから楽観して見るわけにはいかないながら、それでも力強く生きることを肯定してくれてるのかな、と。あーでもやっぱヘビー。相当にヘビー。ちょい滅入るな…。 役者たちがすごい。プレシャスを演じたのはほぼ新人。fatで能無しと罵られるネガサイドと、幻想の中で解放される様子と、代替学校で生まれ変わる姿を、こういう人が確かにいるんだろうと思わせる説得力で演じる。さらにコメディアンだというモニークの鬼母っぷり。オスカー受賞という目で観てしまってたから最初はやりすぎか?とも思ったけど、ラストで持ってきましたね。これが決め手か! 悪役をただの悪にしない、裏の素顔を持たせるってのはやはり必要。これがドラマをがぜん立体的にしてる。マライアはさほどいいと思わなかったけどレニクラは格好よかったです。 レズビアンや、男性看護士、その他マイノリティの香りを散りばめつつ、ハーレムの裏の姿をリアルに描きながら、ただの問題提起ではなく、人生を肯定する方向にまとめてます。運命はただただ過酷で、プレシャス母子の環境に救いはないかもしれない。しれないけど、人生を諦めるべからず、と同時に、自分がプレシャスに出会ったときに手を差し伸べてあげられるかどうか。ここが問われているような気がして、多分オレん中に二の足を踏んでしまう心があるから、手放しで絶賛できてないんだと思う。弱いぜ、オレ。
by april_cinema
| 2010-04-24 00:00
| All-Star
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