2010年 05月 29日
ヒーローなんていやしない。『ヒーローショー』5月29日公開。芸人をめざすも芽が出ずロクに働いてもいないユウキ。かつての相方である先輩の剛志に誘われ、ヒーローショーの悪役のバイトをすることになるが、バイト仲間のノボルが剛志の彼女を寝取ったことが原因で乱闘騒ぎに。剛志はあやしげな仲間に報復を依頼しノボルとツトムをぶちのめすが、今度はツトムの兄のつてで自衛隊あがりの勇気により復讐が始まる。エスカレートした諍いは最悪の結果を招き…。 映画「ヒーローショー」公式サイト 現代若者的負のスパイラル多重奏でんな〜。川底よろしく"中の下"をいくユウキたち。でもここで描かれるのは這い上がりじゃなくてその逆の、落伍。どこにでもいそうな冴えない連中の日常が、ささいなきっかけとちょっとした暴力によって、音を立てて、絵に描いたように、神の裁きか悪魔の悪戯のごとく堕ちてってしまう構図。負の連鎖はなにひとつ生み出さないまま最悪の最悪までノンストップですわ。あーコワイ。あー救われない。 ヒーローショーというのがまさにメタファーそのもの。悪い状況から助けてくれるスーパーヒーローなんてどこにもいないし、そもそも善と悪の二元論だって存在しない。剛志とノボルはどっちが悪いかなんてない(強いて言えば多分どっちも悪い)。ユウキは巻き込まれ型ではあるけれど、じゃあユウキに非はないんだろうか。勇気の環境だって十分に同情できるものだし、ヒーロー的な素養だって持ち合わせてた。でも結局暴力に流されたその罪は決して赦されるものじゃなく、案の定彼は罰せられる。おそらく映画の後もさらなる崩落が待ってるんだろうなぁ。 バイオレンスのアクションが激しいとか、スプラッターだとか、そういうんではないけど、あまりの痛々しさに目を背けたくなるわ。やっぱマジメにちゃんと生きてかないとダメなんですかね。暴力は何も生まない。楽しい類いの映画じゃない中、はたしてこの映画から何を得ればいいのか、自分の中では落としどころが見出しづらかったのです。
by april_cinema
| 2010-05-29 00:00
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