2010年 10月 09日
感想_乱暴と待機
b0130850_1052724.jpg滑稽なる人間愛! いいぞ!! 『乱暴と待機』10月9日公開。市営住宅に引っ越して来た番上とあずさ夫妻。近所の山根家に挨拶に行くと、上下グレーのスウェットに黒ぶちメガネの女・奈々瀬と、その兄を名乗るジャージ姿の怪しい男が。二段ベッドで寝る兄と妹に、屋根裏の覗き部屋。ワケあり兄妹と、ワケありになっちゃいそうな番上夫妻。果たして!?
2010 10月 テアトル新宿ほか全国にて公開 乱暴と待機

興味深いタイトルだけれど、その中身がまったく想像できない。ビジュアルからも話が読めない。が、相当に面白かったのだよ! 冒頭のシーンはかなりヤバイかな、と思ったよ。奈々瀬の登場シーンが酷すぎるんだもの。シーンが酷いというか、奈々瀬というキャラクターが酷い。野暮なスウェットだけならともかく、お経を読み上げ、挙げ句失禁。その理由とは話を中座したくなかったから。そう、この女、自我をとことん消して人に合わせて嫌われないように嫌われないように行動しそれがものすごくウザイという。この文章までうざく感じられてしまうという特異な人物なのだ。

妹が妹なら兄も兄だ。兄と呼ばれている(呼ばせている)けど兄なんかじゃなく、妹こと奈々瀬への復讐を考えるというこれまた理解不能な理由のために監禁しているだけ。しかもひょんなことから屋根裏に覗き穴を発見して以降はマラソンと称してたびたび覗き。奈々瀬と番上があれよあれよになってなお覗き。趣味はカセットテープ。見た目からしてド変態なのである。番上とあずさも、ロクなもんじゃないけれど、この兄妹からしたらマシ。しごくまっとう。なのである。

で、結局のところ、人間愛なのである。今更だが原作は本谷有希子。さすがだ。この目の付けどころと設定。人間、覗かれたくないようなところは誰しも一緒なのかもしれない。とことんエキセントリックな兄妹の生き方は、実は誰もが多少は持っている要素。すなわちあのときああなっていれば!という過去への執着だったり、嫌われないですむように嫌われ続けちゃうだったり。それを最終的には愛され願望として昇華してしまうとは、これは如何に!? さっぱり傑作なのですよ。冗談抜きで。現代的だし。

キャスト4人がすこぶるよろしい! 演出の勝利もあるでしょう。なにせ覗き見する人たちを覗き見できちゃう私たち。この背徳感は『裏窓』の時代から楽しいのです。十二分に笑えます。クスクスかみ殺すのではなく、アッハッハとね。

まあ、はっきりいってなんのことやらわかるまい。そう、説明しづらいのだよ、ひどく。どう魅力を伝えていいかわからないのです、「おもしろいっつーの!」以外に。信じるも信じないも自由ですが、この作品は疑うことなかれ。ぜひ楽しんでいただきたい次第なのです。ところで、冨田監督が、雑誌『SWITCH』で2〜9月売りでこの映画について集中連載しております。その文章もおもしろいことを付け加えておきましょう。
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by april_cinema | 2010-10-09 00:00 | All-Star


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