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2010年 10月 23日
感想_ソフィアの夜明け
感想_ソフィアの夜明け_b0130850_8401725.jpg世明けはいつだ? 『ソフィアの夜明け』10月23日公開。ゲオルギは、地元のギャングに加わり旅行中のトルコ人を襲撃。その場にたまたま通りかかったゲオルギの兄イツォも巻き込まれる。後日イツォは襲われたトルコ人を見舞い、ウシュルという娘と惹かれ合う。アーティストを目指しながらも自分を持て余すイツォは、ドラッグ依存から抜け出そうとしていたが、恋人とも別れ見えない明日にもがいていた。
映画『ソフィアの夜明け』公式サイト

ブルガリア映画。ブルガリアも行ってみたいなーなんてまた例のごとく軽い気持ちで思ってたりするけれど、そこにある現実だって簡単じゃないわけで。民族間の諍いだったり、社会の格差だったり、政治だったり、いろいろな問題がある。多分東欧諸国にはどこにだってこういう影はあるんだろう。そしてその影響をもろに受ける若者たち。明日の光を探してさまよう登場人物たちがリアルなのだ。こういう苦悩は誤差こそあるけれど、多くの国の同世代の人間たちが共有できるんだろうな。だから、映画祭で賞賛されたというのも頷ける。

イツォの佇まいがひたすらクール。心の奥底に夢と希望を抱えながらも、アーティストとしての未来を信じ切れず、やさぐれている。恋人の純真さが、彼の前向きになれない後ろめたさを突きつけるから、遠ざける。その一方で、ウシュルの別の純粋性には惹かれてしまったりもする。やっぱりそれは希望というものを信じたいというのが根底にあるからなんだろうし、もしかしたら国境を越えたい=殻を破りたい、という深層心理が作用しているのかもしれない。ゲオルギを諭し、家に泊める懐の深さにも、兄らしい気遣いが見て取れるし。ルームシェアの相手との距離感もなんだかよさそうだ。

簡単にハッピーエンドにはならないし、さらにイツォを演じたフリストが撮影後に亡くなるという悲劇も含めて、明日を探す若者たちに捧げたい1本。ビターでまだ夜明け前って感じだけど、ほどよい余韻が残ります。良い映画だな。

by april_cinema | 2010-10-23 00:00 | Starter


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