2010年 10月 30日
原作の雰囲気は、ある。『神の子どもたちはみな踊る』10月30日公開。母より、"神の子"と言われ育ったケンゴ。恋人のサンドラには結婚を望まれるが、自分が神の子であることを理由に承諾しない。ある日、ケンゴは自分の父親と思われる人物を見かける。耳のかけた、その男を。 映画『神の子どもたちはみな踊る』公式サイト まさかこの物語が映画化されて、しかもアメリカで、そしてそれが逆輸入されるとは驚いたなー。一応ハルキ好きとしては観ないわけには参りません。感想としては、原作の雰囲気はある程度持ち合わせている、と思う。テキストも、プロット(と呼んでいいのかわからないけどね、この話の場合)も、基本的には原作を活かしながら語られている。 原作を活かしているということは、すなわち明確なストーリーラインはないということ。すべてはメタファーじみているというか、象徴でしかないわけで、果たしてこれをどう読み解くかというのは原作同様に受け手に委ねられてるわ。でもそれを小説同様に感じていたんじゃ映画にした意味がないよね。「神の子」という言葉や、物語に囚われてはいけないのかも。さてさて。 ケンゴは、父親の影を追いながらなにを考えたのだろう。自分がどうしてここに存在するのか。自身のアイデンティティを問いかけたに違いない。本当にそれが父親であるのかどうか(物理的にも生物学的にも)わからない中で、自分が自分である意味を探すというのは、ケンゴに限らないイニシエーションにも思える。結局のところ答えはないし、すべての人は確固たるもののない中で(つまり地震の起きない大地はないということ)、もがき=踊り続けなくてはならないってことだろうなぁ。 そこに、母子の愛情や、恋人という他人との関わり方、そういうもので味付けされているんだと思う。そのつながりのすべてが、自分を不安定にすると同時に決定づけるというか。 でもこの感想も、原作を読んでいるからこそ出て来るイメージだなぁ。そしてやはりあの小説は連作の中の1つであることがとても重要だったような気がする。ゆえ、映画単体だけでなにをどこまで感じ取れるのかはちょっとギモンかも。いずれにしても観る人をかなり選ぶわ。ハルキが好き、だけでは少し荷が重い気がします。 感想_神の子どもたちはみな踊る(原作)
by april_cinema
| 2010-10-30 00:00
| 6th-man
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