2010年 11月 27日
主役は時代。『信さん・炭坑町のセレナーデ』11月27日公開。昭和38年、北九州の小さな島。ひとり息子の守を連れて、美千代は出戻った。商店街の一角に用品店を出し、故郷で暮らし始めた母子。ある日、転校生である守を、地元の少年・信一が助ける。炭坑が生活の中心だった島で、人々は一生懸命に毎日を生きていた。 映画「信さん・炭坑町のセレナーデ」公式サイト 起承転結のはっきりしたストーリーがあるわけではなくて、主役は町と時代って感じかな。あんまり比べられたくないだろうけど『ALWAYS』的と言える(少なくともチラシは丸パクリ)。信一と、守と美千代を中心に、昭和の中頃という時代、そして北九州という地方都市をフィーチャーしております。まあ、いかにも昭和の風景だし、ここにしかない活気とか鬱屈したムードとか、そういうのはよく捉えられていると思います。なおかつ、高度成長期の裏にあった、貧しさもとらえているのが『ALWAYS』との差かな。いいことばかりがあったわけでは、もちろんないという。 ただ、なんとなくタイミングを逸した企画な気もする。昭和を懐かしむ風潮は少し使い古された感じがするし、なんとなく今のムードからは外れて来ている気が。今ほしいのは、こういう懐古的なものよりも、先端を追いかけるでも、オンリーワンに甘んじるでもない、もう少し健全な前向きさだと思うのよね。もちろん、昭和って時代は別に懐かしむためのものじゃないし、タイミングもくそもないんだけれど、気持ちが動くタイミングとは違ったのです。 とはいえ、きちんと作られた誠実な映画だったことは確か。ここにある風景の多くも失われゆくものだし、こうしてフィルムに刻み込んだ意義は深いと思う。地方の文化、歴史というのは大切に遺っていってほしいと思うだけに、矛盾しますがよい企画ではあったと思います。友達の母ちゃんに惹かれる信一の気持ちってのはわからんけれどもネ。
by april_cinema
| 2010-11-27 00:00
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