2010年 12月 04日
感想_白いリボン
b0130850_8283164.jpg考えろ、本当の物語を。『白いリボン』12月4日公開。1913年北ドイツの小さな村。村でひとりのドクターが落馬事故を起こす。それをきっかけに起こり始めたいくつかの不可解な事件。荒らされた畑。男爵家の火事。子供たちのいたずらと失踪。ドクターとナースの不埒な関係。そこでなにが起きていたのか。この村に暮らした教師が静かに語る。
映画「白いリボン」公式サイト

常に「不穏」と形容されるミヒャエル・ハネケらしい究極の一作! 全編モノクロで描かれた第一次大戦前のドイツ。そこには人間の中に芽生える純真性と憎悪という対極の要素が、痛烈に焼き付けられている。物語は、ひとりの教師が過去を振り返る形で語られる。しかし、彼はすべてを知っているわけではなく、噂にすぎないものもあるかもしれないという。つまり、サスペンスでありながら、その筋がすべて明らかになるわけではない。はっきりした結末があるわけでもない。ただ、こういう事件が起きた。その前後にはこういうことがあったらしい。観客に与えられるのはそこまで。

つまりこれは事件そのもではなく、その事件がなぜ引き起こされたのか、これがテーマ。でも、そのテーマに対する監督の答えだって安易に用意されていたりはしない。だから、考えなくてはいけない。なぜこの村にこの事件が起きたのかを。1秒たりとも油断できない、魂に語りかける映画なのです。すごい緊張感だぜ。160分級の長尺なのにそれを感じさせない手腕はさすがのひとこと。

中心にいるのは子供たち。ときに純真、そしてときに残酷。どちらの側面も誰もが持って生まれたもの。その2面性はなにをきっかけに、どっちが発露するものなのか。罰を与えることで、無垢な心は守られるのか。上から押さえつけ閉じ込めることで、悪をも封じ込めることができるのか。教育するとは果たしてどういうことなのか。そしてこれはナチス前のドイツってことまで考えると、またさらに考えることは多くなっていく。宗教観にもつながっているはず。貧富の差や障害者に対する態度なども、おそらくユダヤ人との関係とかそういう社会性を強く帯びている。タイトルになっている白いリボンは、決まりを破った子供に対して、親が罰として腕に巻くもの。それが巻かれている間は、自らの行いを反省し戒めなさいというもの。純粋性を表すこのリボンの効果ははたして。そして罰を受けた子供の目と心にはなにが写っているのか。

一回観ただけでは到底すべてに対して考えが及ばない、脅威の一作。自分の中にあるものすべてを使って考えなくてはならないね。人間の本質とはなんなのか。なにが人間を正すのか、あるいは貶めるのか。ちょっと簡単には語りきれません。

この作品の公開にあわせて、有楽町でハネケ映画祭が開催されるみたい。行きたいなぁ!
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by april_cinema | 2010-12-04 00:00 | MVP


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