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2010年 12月 18日
感想_君を想って海をゆく
感想_君を想って海をゆく_b0130850_21254086.jpgああ、悲恋よ! 『君を想って海をゆく』12月18日公開。イラクからやってきたクルド人難民のビラルは、フランスからイギリスへ渡る船に忍び込む。が、失敗。しかし彼はどうしてもイギリスに行く理由があった。それは、離ればなれになった恋人に会いに行くため。シャワーを使うべく忍び込んだプールで、彼は泳いで国境を越えることを思い立つ。
映画『君を想って海をゆく』公式サイト

良質ないい映画でした。ラストこそあまりにも悲しいけれど、登場人物たちの想いと、社会的背景がぴたりとハマって、少し異色で、とても純粋なラブストーリーに。冒頭の不法入国のため船に潜り込む様子はかなりショッキング。見回りは、貨物の二酸化炭素濃度(かなんか)を測って侵入者がいないか調査する。だから、彼らはビニール袋をかぶってなるべく呼吸を外にもらさないよにする。命を賭けたギリギリさが彼らの置かれる立場の難しさ、切実さを物語る。

このリアリティが担保されることで、泳いで国境を渡るという無茶にも説得力が出る。さらに、移民をかくまうことが違法とされる中、フランス人の水泳コーチは人道にもとづいて彼を助ける。それは最初はただの善意だったものが、彼の目的を知ることで、愛のための無謀さに加担するようになる。それは、彼もまた愛を失おうとしていたから。2つのストーリーの絡ませ方は絶妙ですな。

役者たちもみんないい味を出していて、このよくできた物語の中で確かに生きていました。ラストの厳しさも、悲しくはあるけれどそれこそが問題の根深さ、難しさをとらえているということか。いやー地味ですけど、良作でした。

by april_cinema | 2010-12-18 00:00 | Starter


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