2011年 02月 19日
難しい世界だ。『サラエボ,希望の街角』2月19日公開。サラエボで恋人アマルと暮らすCAのルナ。しかしアマルは仕事中の飲酒で職務停止になってしまう。再会した旧友の伝で仕事に就くが、彼はイスラム原理主義に傾倒して帰って来た。アマルは15年前の内戦の後遺症を抱えていたのだ。ルナもまた、紛争により家と両親を失ったトラウマを心の奥にしまいこんで生きていた。 映画『サラエボ,希望の街角』公式サイト ホープフルというよりは、シビアな現実を見せられたな、という感じ。内戦、宗教、不寛容。現代社会のひとつの姿がそこにはありました。スクリーンに映るサラエボは美しい街のように見えます。町並みもそうだし、民族の祭りもそうだし、その一方でクラブとかもあるし、ルナはCAとして比較的裕福な暮らしをしているようにも見える。でも、わずか十数年前に、3年にも渡る恐ろしい戦争があったわけで、その傷跡は街にも人々の記憶や体にまだまだ残っているんだな。そういう背景をきちんと踏まえたうえで見たほうがより深く刺さるのだろうな。今と過去の対比だったり、世代の移り変わりみたいなところは巧みに表現してたと思う。 ボスニアって、こんなにイスラム教が優勢なんだね。内戦以降は半分くらいの人がイスラム教らしく、原理主義の人も増えているのだそうだ。厳格であるがゆえに摩擦も生まれやすいだろうし、劇中でそのキャンプがテロリスト呼ばわりされてたように誤解も多いんだろう。なにを信じるかは人の自由だし、それで救われるのであれば否定はできないけれど、にもかかわらず火種になりかねないというのは本当に難しいぜ。いきすぎればそれは偏狭さともなりのなら寛容でいられないのも当然だし、もちろんただ信心深いだけなのかもしれないものを不寛容でもって当たるわけにもいかないし。 アマルはあまりにも急速に変わってしまったし、ルナの境遇も簡単に理解できるようなものではないから、一線を引いて観てしまうところは否めない。最後の決断もなんだか哀しく、簡単には前に進んだりできないってことだし、邦題にあるような安易な希望を与えない結論も、この国の抱えているだろう問題を表現してると思ったわ。 心して観たい「今」の映画。世界はどこへ向かうんだろう。
by april_cinema
| 2011-02-19 00:00
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