2011年 03月 26日
懐かしくて切な。『イリュージョニスト』3月26日公開。1950年代パリ。初老の手品師は古典的な手品を披露するが劇場は閑古鳥で、追われるように劇場を去る。渡った先のロンドンでもやはり同様で、そこからさらにエジンベアへたどりつき、そこで出会ったひとりの少女は、彼の魔法のような手品の虜となる。 映画『イリュージョニスト』公式サイト 静かな静かなアニメーション。セリフは本当に少数の中で流れて行く映像世界は、ちょっぴりジブリっぽさを思わせる(なんとなくね、なんとなく)。なんてんだろ、失われかけている風景、懐かしさのある情景が、時代の波に押しやられてゆくとしても私たちは忘れやしませんよ、という決意というか。それも、まったく押しつけのないレベルでの。感傷的過ぎることはないんだけど、その純粋なさりげなさがどこか切なさを呼び覚ますんだよね。 ただ、あまりにも説明がないから、一見だとわからないことも多いかも。男と少女の関係性は最後のほうまで判然としなかったし(男の娘と少女がどうやら似ているということらしい)。訪れた地は、絵柄から読み取るしかなくて、ロンドンは地下鉄のアイコンとかでわかったし、スコットランドも男性のチェックのスカートとかでわかったけど、予備知識が要求はされるかなー。 手品っていうオールドファッションな出し物だけでなく、ハコとしての劇場も失われ行くことを静かに描いた作品。舞台はもう50年以上前なわけで、だけど今見てもどこか懐かしさと切なさが同居するってことは、現代人の中にもまだその記憶が残っているってことだろうな。人間が、人間の手だけで生み出す夢物語。それはもう幻影でしかないとしても、メジャーに返り咲くことはないとしても、残り続けてほしい世界だと思います。
by april_cinema
| 2011-03-26 00:00
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