2011年 06月 04日
感想_光のほうへ
b0130850_7264775.jpgそんなつもりでは、なかったのに。『光のほうへ』6月4日公開。兄ニックは臨時宿泊施設で、他人とのかかわりを避けて暮らしていた。ある日、かつての恋人の兄イヴァンと再会する。とりとめもない近況を語り、しかしイヴァンは最悪の事態を引き起こす。ニックは弟に電話を入れ、家を訪ねるが不在だった。その弟は、2年前に妻を亡くし、一人息子のマルティンと貧しい生活を送っていた。クスリをやめることができず、それでもマルティンだけは守ろうとするそのとき、兄弟の母親が死んだ報せが届き、ふたりは再会する。兄弟には、子供の頃の忘れられない記憶があった。
光のほうへ

デンマークといえば福祉が充実して、美しく華やいだ幸福な国、ってイメージだけど、この作品はその間にある物語。コペンハーゲンを舞台に、ある兄弟が底辺でもがきながら希望を探す話。彼らが置かれた現実はかなりシビアで、冒頭からネグレクトでアル中の母親の下、盗みを働き、暴力を受けながら暮らしている。ローティーンにして喫煙、飲酒、そして決定的な事件と、目を背けたくなる酷い現実ばかりだ。

大人になったあとも、その陰はぬぐい去れていない。この数十年なにがあったかの詳細は描かれないが、幸福な時間は多くなかったように写る。似たような境遇と思われるイヴァンがいうように、誰だって「こんなつもりじゃなかった」と思うことばかりなんだろうな、人生って。いつだって、こんなはずじゃなかった、どうしてこんなことになったんだ、って思うことが毎日のようにあるはず。

そんな中でも、だからといって希望がゼロなわけではない。ニックと弟はもがいてもがいて、ギリギリの光を見出す。それは純度100%の希望とはいかず、具体的な痛みと喪失を伴ってはいるものだけど、やっぱり人間は一人で生きているのではないってことだよね。よくも悪くも。負の連鎖も続くけど、正しい連鎖だってあるんだから。

おさえたタッチで、でも兄弟の暮らしを交差させた演出は実にスマート。冒頭とラストを飾る洗礼の意味も踏まえて、じっくり向き合いたい一作でした。
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by april_cinema | 2011-06-04 00:00 | All-Star


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